機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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新造戦艦発艦!!

 新造戦艦のモビルスーツ・デッキでは、ミューラ達と、マイを人質に取ったプロシュエールの睨み合いが続いていた。

 

 作業する整備班の面々は、事の顛末が気になったが、作業の手は止められない。

 

 その時、外の様子をモニターしていたクルーが、声を上げた。

 

「リファリア機が撃墜!!ニコルのウォーバードが出撃したが…………間に合わず!!」

 

 そのクルーは、悔して壁を叩く。

 

「リファリアが墜ちたか…………ニュータイプ専用機ってのは、化け物だな。あのリファリアも簡単に墜としちまうんだから…………俺らが戦ったって、無駄死にするだけだ。それより、俺のファイトタイプを勝手にウォーバードなんてのに換装しやがって…………ふざけんな!!」

 

 プロシュエールは怒鳴りながらも、マイの頭には銃口を…………そして、周囲の警戒も怠らない。

 

 つまりは隙がなく、ミューラもレジアも身動きがとれなかった。

 

 異様の空気のまま、トライバードの換装作業が続く。

 

「このままだと、バタフライ野郎に基地が攻撃されて、死んじまうな…………とっととモビルスーツをよこすんだ!!こいつを死なせたくないだろぅ??」

 

 プロシュエールの言葉に少し怯むが、しかしミューラは無言で距離を図っていた。

 

 額からは、大粒の汗が流れ落ちる。

 

(焦っちゃ駄目。マイの命も大切だけど、外で戦ってる皆の命も大切なんだ。トライバードの換装作業だけは止められない。それに、モビルスーツなんて渡して、艦内で暴れられたら全てお仕舞いだわ)

 

 考えを巡らすミューラだったが、その間にプロシュエールは脱出艇のあるハッチに辿り着いていた。

 

 そのハッチを開けた瞬間、プロシュエールはマイの頭からミューラに銃口の向きを変える。

 

「逃げた瞬間、トライバードで撃墜なんてのは御免だからな。開発者のお前が死んでれば、換装作業に遅れが出んだろ!!あばよっ!!」

 

 ダァァァァン!!

 

 1発の銃声が、モビルスーツ・デッキの中を反響した………

 

 

「艦長!!ヘレン達が苦戦しています!!早く艦を出しましょう!!」

 

 ニーナが宇宙の戦闘をモニターしながら、焦りを含ませる口調で声を出す。

 

「けど、スパイ問題が片付いてないんだろ??モビルスーツ・デッキに侵入されたって言ってたじゃん。スパイを乗せたままの宇宙旅行なんて、嫌だぜ」

 

 マッシュは我感せずといった口調で、今にも欠伸でもしようかという感じだ。

 

 そんな対照的な………しかし感性の異なる2人のクルーに、艦長のスフィアは大きな不安と少しの頼もしさを感じる。

 

(2人とも正論だな………スパイを無視して艦を動かせば、モビルスーツ・デッキのクルーを危険に晒す事になる。だが、援護しなくてはヘレン達が墜とされるのは時間の問題か…………)

 

 スフィアは少しの時間、無言で考えている様子だったが、意を決して口を開く。

 

「我々は、すぐに出航して宇宙に出る。発進シークエンスに移行しろ!!モビルスーツ・デッキに、スパイには脱出艇をくれてやると通信しておけ!!スパイを乗せたまま飛ぶより、いくらかマシだ」

 

 プロシュエールの握っていた情報は、基地情報とモビルスーツの情報程度だ。

 

 このタイミングで取り逃して情報漏洩しても、比較的被害は少ないと考えたスフィアの口調に迷いは無い。

 

 それよりも、新造戦艦の情報やミノフスキー・ドライブの技術も持ち出される方が問題だ…………

 

 ちなみにシークレット・ワンとは、この戦艦の開発時の呼称であり、正式名称ではない。

 

 本来、戦艦の名前を決めてから進水式を行い、始めて出航となる。

 

 つまりシークレット・ワンは名無しの戦艦であり、名前をつける余裕もないぐらい事態は切迫していた。

 

「全クルーに通達!!これより、本艦は出航する!!ショックに備えよ!!」

 

 決断した後のスフィアの行動は早い。

 

 発進シークエンスが進んでいき、核融合炉に火が入る。

 

「シークレット・ワン、出航する!!宇宙側のハッチ開け!!」

 

 シークレット・ワンの装甲が、宇宙空間を切り裂いて基地内に流れ込む太陽の光に照らされて光輝く。

 

 式典様に作り込まれた金色の縁取りが、その輝きを増しているように見える。

 

「発艦!!」

 

「了解!!シークレット・ワン、緊急発艦!!」

 

 スパイが気になっていたマッシュだが、上官の命令には忠実であった。

 

 集団で何かを成そうとする時、1人で我を通す事の危険をマッシュは理解している。

 

 シークレット・ワンの側面には金色の縁取りがされた純白の装甲板が張り付けられており、そこに太陽の光が反射し淡い翠の本体を神々しいものにしていた…………

 


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