その頃、コロニー内のリガ・ミリティアの基地にリファリアの読み通り、マグナ・マーレイが単機で攻め込んで来ていた。
先の戦闘で、トライバード・ガンダムやF90を墜としていたため、アーシィは精神的に少し余裕を感じている。
ガンダム・タイプを除けば、ジェムズカンやヘビーガンなど、リガ・ミリティアにマグナ・マーレイを倒すようなモビルスーツは見当たらない。
最新鋭機のガンイージも、宇宙に出ているとの連絡も入っている。
「この基地を破壊すれば、サナリィに拠点の置くリガ・ミリティアは排除出来る。後は、この基地にあると言われてる戦艦を墜とせば……………」
操縦管を握るアーシィの手は、自然と力が入ってしまう。
「やはり新型、コロニー内から来たか。サナリィ・コロニーはザンスカールのモビルスーツ開発の拠点になる場所…………出来るだけ傷付けたくないだろうからな。ニュータイプの乗る専用機ならば、コロニーに穴を開けないで戦えるだろう……………だが、こちらも抵抗させてもらうぞ!!」
リファリアは技術者としても、指揮官としても優秀な男だ。
宇宙にジェムズカン、ヘビーガン、そしてガンイージのみを配置した理由…………それは、マグナ・マーレイに対して実弾で対抗する為…………
そう、基地にあった全てのGキャノンは、コロニー内に配置されていた。
その全ての機体に与えられた200mmキャノン砲に、電磁レールガン。
マグナ・マーレイのリフレクター・ビットとIフィールドに対する対策だ。
そして、リファリアの機体…………F90・Oタイプの頭部はヘキサ・システムと呼ばれるブレードアンテナを装備し、通信や索敵に特化している。
マグナ・マーレイの機影を最初に発見したのもリファリアだ。
「Gキヤノン隊!!戦艦が出航するまで、この場所を死守するぞ!!ここが正念場だ。今までの我々の戦いを………意味のあるものにするんだ!!」
ヘキサ・システムにより、コロニー内…………そして、宇宙にいるモビルスーツ隊にもリファリアの声が届く。
「F90、まだ残っていたのか!!パイロットがレジアかニコルじゃなきゃ…………私の勝ちだ!!」
レジアの名は、ベスパの中でもエース・パイロットとして知れ渡っている。
そのエースか、ニュータイプであるニコルがガンダム・タイプに乗っていなければ、アーシィには圧倒出来る自信があった。
しかし、その考えは一瞬で修正する事になる。
12機いるGキャノンに装備された200mmキャノン砲が火を吹いたのが、戦闘開始の合図となった。
「ビームが効かないなら実弾で………か。だが、リフレクター・ビットは盾にもなる」
キャノン砲が砲弾が、リフレクター・ビットに当たり破壊されていく。
砲弾が爆発し、マグナ・マーレイの周りは爆煙に包まれる。
「そこだっ!!」
爆煙の中から少し見えた装甲を目掛け、F90はビームを放つ。
「ニュータイプの力を…………ナメるなよ!!」
そのビームはリフレクター・ビットに絡み取られ、煙の中に光の線を描く。
「ビームの線状に、レールガンの砲撃を集中しろ!!ビームが変化しない場所にビットは無い!!」
その声に呼応して、Gキャノンが一斉に電磁レールの砲撃を始める。
先程の分散した砲撃とは違い、一点集中の砲撃…………更に、視界の遮られている所での砲撃。
アーシィの反応は、確かに遅れた。
レールガンが、マグナ・マーレイを捉えた…………そう見えた矢先、浮いていたマグナ・マーレイが勢いよく下に降りて来た。
アーシィは煙の立ち昇る上空に逃げるより、敵に囲まれてでも降下する選択を、危険を感じて一瞬で決断する。
反応は遅れたが、その決断の早さでレールガンの直撃を避けた。
その上で、避けた砲弾をビームで全て撃ち落とすオマケ付きだ。
「やっぱり、簡単には墜ちてくれないか………分散と集中、視界を遮った状態で砲撃パターンを変えられると、嫌な筈だが…………流石はニュータイプか………」
リファリアはアーシィの動きに舌を巻いたが、驚いたのはアーシィも同じだった。
「旧型機の寄せ集めだと思ったら、痛い目を見そうね………まずは、あの角の生えたガンダム………指揮をとる奴から墜とす!!」
マグナ・マーレイが、F90オフィサー・タイプに迫る!!
「いよいよ本気か…………とにかく、時間を稼ぐんだ…………」
再び、F90とGキャノンが戦列を整えた。