「さーて、いよいよね。腕が鳴るわ!!」
全天周囲モニターに映し出される宇宙空間を、マヘリアはガンイージのコクピットから見る。
ガンイージは、マヘリア機の他にヘレン、クレナ、ケイトの4機。
その後方には、ジェムズカン・ツインテールに乗るリースティーアの機体と、数機のヘビーガン部隊が並ぶ。
今回の出撃に伴い、リガ・ミリティアは部隊を2つに割っていた。
ヘレンが指揮する部隊は宇宙、リファリアが指揮する部隊がコロニー内を固める。
レーダーに表示された、ザンスカールの地上部隊は1機…………マグナ・マーレイだ。
宇宙から来るベスパの部隊は、ラングを中心とした部隊の中に、ライブラリ照合不可の機体が数機混じっている。
マグナ・マーレイの機体性能では、単機で基地を攻めて来る可能性が高いと、リファリアは予測していた。
リフレクタービットを使うなら、周りに味方機がいない方がよい。
基地を叩くにしても、マグナ・マーレイの拡散ビームなら単機でも充分だろう…………そしてスパイにより戦艦の情報を得ていたのであれば、処女航海の戦艦を叩く為に、それなりの数のモビルスーツを宇宙に配置して来るとリファリアは読んでいた。
そして、その予測は見事に的中する。
「来ました!!ラング30!!それに…………情報は間違いなさそうです。ライブラリ照合無しが2機混じってます!!まさか、ニュータイプ専用機??」
「反射野郎のフォルムデータは入ってる筈だ!!ザンスカールの奴等、また新型を開発したってのかよ!!」
クレナが動揺し声を震わせるが、ヘレンは冷静だった。
「おそらく、ニュータイプの機体では無いでしょ。ベスパが宇宙用の量産モビルスーツを開発してるって話は、聞いた事あるし」
ケイトは、前線基地が全滅する直前に知った情報を思い出しながら言う。
「新型だろうが何だろうが、戦艦を守れなければ私達の負けなんだ!!やる事は一緒だよ!!」
マヘリアは操縦管を握り締めると、漆黒の闇に輝く敵モビルスーツから発するバーニアの光を睨みつける。
「来るよ!!散開!!」
その光に向かって、マヘリア機がビームライフルで牽制射撃を放った…………その瞬間、リガ・ミリティアの部隊はベスパの部隊を外側から取り囲むように広がっていく。
そして、真ん中に集まっていくベスパのモビルスーツに、ビームの雨を降らせる。
「数で分が悪い上に、新型もいる!!先制攻撃で、少しでも数を減らすよ!!」
ヘレンは叫びながら、ビームを躱して集団から飛び出た瞬間のラングをビームサーベルで斬りつけた。
真っ二つになって爆発するラングの影から、新型の機体が姿を現す。
「なんだ??てんとう虫??」
赤く、肩が膨れ上がったその機体は、てんとう虫に似ているといえば似ている。
「リガ・ミリティアのモビルスーツごとき、このゾロアットが蹴散らしてくれる!!ニュータイプだけに、いい格好させるかよ!!」
その、てんとう虫のような機体…………ゾロアットは加速し、ビームサーベルでヘレン機と交錯し、鍔ぜり合いのような状態となった。
「新型!!流石にラングよりは力強い!!けどなぁ!!」
ヘレンが交錯するビームサーベルでゾロアットを押し返すと、頭部バルカンを撃ちながら距離をとる。
「ちっ、連邦のモビルスーツよりは性能がいいか。まぁ、数はこちらが上だっ!!一気に押し切るぞ!!」
ゾロアットのパイロットは叫んだ…………その頭上から、馬鹿にしていた連邦のモビルスーツに追加装備のブラスター・パッケージを与えられたツインテールがビームを放つ!!
「なんだ??ジェムズカンだと……………だが、このスピードはなんだ??」
ジェムズカンらしからぬスピードで攻撃されたゾロアットは…………しかし、辛うじてビームシールドで、その攻撃を受ける。
「少々、厄介な敵もいそうだが……………予定通り、艦の出入口を固めるぞ!!」
ゾロアットを中心としたベスパのモビルスーツ隊は、数に物を言わせ基地に近づいていく………