機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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裏切りのプロシュエール2

 ファンファンファンファンファン…………

 

 警戒音が鳴り響き、警備兵が居住区に入っていく。

 

「くそっ!!バレるのが早すぎるだろっ!!これじゃあ、格納庫に行って脱出どころじゃねーな!!噂の新造戦艦に身を隠すか…………」

 

 既に居住区の端に移動していたプロシュエールは、基地内の格納庫に行くより距離の近い新造戦艦へのルートを携帯端末で確認すると、警備兵の動きを確認しながらマイを抱えたまま走り出す。

 

 見つかる可能性が高まった今、プロシュエールは、より人質がいた方が有利だと考えていた。

 

 細い通路を抜け新造戦艦に到達したプロシュエールは、近くにあった扉を開く。

 

 スパイは居住区にいる…………そう伝えられていた戦艦のクルー達は、自分達の作業に追われていて、プロシュエールが目に入らなかった。

 

 ザンスカールに基地を制圧されるより早く、新造戦艦を動かさなければならない。

 

 時間の限られた中での作業は、他の者の動きを見る余裕が無かった…………その状況が、プロシュエールにとっては都合よく働いた。

 

「よし、意外と呆気なく入れたな…………このまま、モビルスーツ・デッキに行ければ、モビルスーツを奪って逃げれるんだが……………」

 

 プロシュエールは慎重に、かつ急ぎながらモビルスーツ・デッキに向かう。

 

 女性クルーが倒れていたので、医務室に連れて行く…………プロシュエールはそう言いながら、戦艦のクルー達の目を上手くすり抜けて、モビルスーツ・デッキの扉の前に到着した。

 

 その扉の窓から中を覗くと、中にミューラとレジアの姿がある。

 

(あの2人がいるなら、こいつがいると刺激しちまうか??さっきの警報…………オレのスパイ容疑を知ってると見るべきだ。ここまでは上手く顔を伏せて誤魔化して来れたが、ここからは更に慎重に行かねーとな………)

 

 プロシュエールはマイを連れて中に入るか迷った結果、通路に放置し救出されるより、人質として利用出来るように身近に置いておく方を選んだ。

 

 モビルスーツ・デッキに入った瞬間に、確実にバレる…………なら、始めから人質として使った方が有効だろう。

 

 窓越しにモビルスーツの場所を確認し、意を決してプロシュエールは扉を開けてモビルスーツ・デッキに侵入する。

 

 やはり…………モビルスーツ・デッキの中にいる限られた人間しかいない中で、突然侵入して来た人間は異質だった。

 

「おい、プロシュエールがいるぞ!!マイさんも一緒だっ!!」

 

 整備士の1人が、プロシュエールの侵入に直ぐに気付く。

 

 その声に、レジアの身体が反応した。

 

「プロシュエール!!貴様、何故マイを連れている!!」

 

 床を思い切り蹴ったレジアは、軽い重力の中で一瞬でプロシュエールとの距離を詰める。

 

「おっと!!お前さんと、まともにやり合う気はねぇよ!!」

 

 プロシュエールは、まるで予定通りと言うようにマイの頭に銃口を突き付けた。

 

 レジアは飛びかかろうとする動作を無理矢理に止めて、逆にプロシュエールとの距離をとる。

 

「プロシュエール!!抵抗の出来ない女性の頭に銃口を…………プライドはないのかっ!!」

 

 動かないマイの体を見ながらレジアは叫ぶが、プロシュエールは動じない。

 

「オレがそんな人間だって、分かってるだろ??今更、プライドがどうこう言うつもりもねぇ!!それより、使えるモビルスーツを1機もらおうかっ!!とっとと準備しろっ!!」

 

 プロシュエールの言葉に、モビルスーツ・デッキのスタッフ達は作業の手を止めザワつき始める。

 

「皆、状況が状況だけど、作業を続けて!!トライバードの換装を急がないと、外で戦ってる皆を助けに行けなくなる!!レジアも、一度下がって!!パイロットの貴方が怪我でもしたら、基地の外で…………貴方を待って戦っている仲間達に、なんて言うつもりっ!!」

 

 ミューラが声を荒げながら、レジアを制してプロシュエールの前に立った。

 

「ミューラ!!モビルスーツを用意しろ!!コイツの頭が吹き飛んでもいいのか??レジアが使い物にならなくなるぜ!!」

 

 プロシュエールは大声で周囲を威嚇しながら、少しづつ歩を進める。

 

 その方向に、緊急時の脱出艇がある事をプロシュエールは知っていた。

 

 プロシュエールがジリジリと脱出艇に近付いて行った時、艦内放送が突然響き渡る。

 

「全クルーに通達!!これより、基地内に残っている全ての人の収容に入る!!スムーズに誘導出来るよう、各員持ち場につけ!!」

 

 艦長スフィアの声で、戦艦内のクルーが慌ただしく動き始めた。

 

 しかし、モビルスーツ・デッキだけは、緊張感のある空気が流れ続ける。

 

「ちっ!!艦が動くのか!!こりゃ、時間をかける訳にはいかねぇな…………とっとと、モビルスーツを用意するんだ!!」

 

 唇を噛むレジアを自分の体で隠しながら、ミューラは叫ぶプロシュエールの前に立った。

 


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