「この声、直接頭に流れ込んでくる…………集中出来ない!!」
マグナ・マーレイのビームサーベルは、接近するトライバードの左腕を切り落とすのみに留まる。
「ぐおっ!!駄目だ…………この新型、強すぎる…………ニコル、撤退だっ!!」
頭とコクピット・ブロックだけになったトライバード・ガンダムは、浮いているのが奇跡に近い。
バーニアを吹かし、マグナ・マーレイから必死に離れて行く。
「逃がす訳にはいかない…………このパイロット、強すぎる。ここで叩かなくては!!」
ボロボロのトライバード・ガンダムが、リフレクター・ビットに囲まれる。
「だから、ここでレジアをやらせる訳にはいかないんだ!!もう少しだけ…………持ちこたえてくれー!!」
ニコルは叫びながら、リフレクター・ビットに囲まれるトライバード・ガンダムに向けて、ボトム・ファイターを突っ込ませた。
拡散ビームを撃つ余裕は無い…………アーシィは、直接リフレクター・ビットを当ててトライバード・ガンダムを破壊する方法を選択する。
そこに、ボトム・ファイターが自らを犠牲にする様に…………自らをリフレクター・ビットにぶつけながら、トライバード・ガンダムを救出する為に加速した。
「うおおおおぉぉぉ!!」
リフレクター・ビットに体当たりされた場所から……………ボトム・ファイターの至る所から…………煙が立ち昇っていく。
なんとかリフレクター・ビットの攻撃を凌いだボトム・ファイターの背にトライバード・ガンダムを乗せると、その空域からの脱出を試みる。
「逃すか!!マグナ・マーレイを損傷までさせたんだ。ここで…………ここで墜とさなければっ!!」
もはや防御する事すら出来ない…………そんな2機に向けて、拡散ビームの射出口が光輝く。
その時……………
「なんだと!!」
無意識のうちにリフレクター・ビットが戻り、マルチランチャーからマグナ・マーレイを守る。
「ケイトって言ったっけ??あんた、良い腕だっ!!マヘリアは、損傷機のフォローに回れ!!」
森の中から、3機のガンイージが姿を現す。
その内の1機のガンイージが、マルチランチャーを撃ったのだ。
そして、マヘリアのガンイージが、ヘレンの指示でトライバード・ガンダムを背負ったボトム・ファイターに近付く。
その横を、凄い勢いでガンイージが1体通り過ぎた。
「私達の基地を………あんたは、私が倒す!!」
「ケイト!!あまり突っ込み過ぎるな!!レジア、ニコル、生きてる??」
マヘリアはケイトに呼びかけながら、ボトム・ファイターを地面に下ろす。
「ありがとう、マヘリアさん。おかげで助かったぜ!!」
「だが、ガンイージで奴と戦うのは無謀だっ!!」
ニコルとレジアの声を聞いて、マヘリアは安堵した。
「大丈夫、ヘレンが上手くやるわ!!私達は後退をっ」
マヘリアの言葉通り、先行したケイトのガンイージの目の前にビームの弾幕を張り、その動きを止める。
「ケイト!!落ち着け!!今は部隊の撤退が優先事項だ!!恨みを晴らす機会は必ずある!!」
ヘレンは叫ぶと、2連マルチランチャーをマグナ・マーレイに向けて撃ち出す。
「次から次へと…………いい加減に!!」
近付いてくるマルチランチャーを、マグナ・マーレイはリフレクター・ビットで撃ち落とした。
そのマルチランチャーは爆発せず、代わりに白い煙のような物がマグナ・マーレイを包み込む。
「リファリア特製、ミノフスキー・チャフ!!なんてな。さぁ、とっとと後退するよ!!」
その、後退劇は見事なモノである。
逃げる事に徹したガンイージ隊は損傷した機体を抱えると、チャフが消える前にはマグナ・マーレイの索敵範囲外まで撤退していた。
チャフが消えると、アーシィはヘルメットの上から自分の頭を何回か叩いた。
「変な気分だ…………気持ちが悪い………」
アーシィは、今回の戦闘でサイコミュを使用し、敵のパイロットと感覚を繋げた…………その事で気分が悪くなり、胃液が逆流しそうになるのをグッと堪える。
「マグナ・マーレイのテストにしては、やり過ぎてしまった………私も戻ろう…………」
マグナ・マーレイは、ザンスカールの基地に向けて飛び去っていく。
ボロボロになったトライバード・ガンダムとガンスナイパーを運ぶガンイージに、ニコルは感謝していた。
「マヘリアさん、まぢで助かったよ。ありがとう」
「ケイトが道案内してくれたからね。なんとか間に合って良かった♪」
ニコルからの感謝の言葉に、マヘリアはわざと明るい声を出す。
暗い声を出すと、今の現状に飲み込まれそうで、怖かった。
「2人とも生きててくれたから、最悪は免れたが………F90は2機大破、フォルブリエは…………死んだよ」
逆に、今まで共に戦っていたフォルブリエを失ったヘレンの声は暗い。
「やっぱり…………間に合わなかったか………」
トライバード・ガンダムのコクピットから、ヘレン機のコクピットに乗り換えたレジアが、唇を噛む。
「まぁ………あんたらが無事だったからな………それだけでも、良しとするしかないさ。後は、モビルスーツの問題だな…………」
もはや修理不可能であろう、トライバード・ガンダムとガンスナイパー…………
戦力ダウンは、明らかだった。
ふぅーーー
大きく息を吐くと、レジアは目を閉じる。
(なんだか………疲れたな………今は、何も考えられない。何故だか、無性にマイに会いたい………そんな状況じゃない事も分かるが…………)
レジアは、ボロボロになっても自分を守ってくれたトライバード・ガンダムに感謝しつつも、現実から目を背けたくて、その姿を視界に入れる事が出来なかった。