「なんだこりゃ??当たったら爆発する…………なんて武器じゃなさそうだが…………」
グレネードを打ち落とされた時に、その銀色の球状の物は爆発しなかった………
つまり、触っても大丈夫であろうとフォルブリエは思ったが、得体の知れない武器に囲まれている不気味さはある。
「あらあら…………とりあえず、銀色の球の囲みを突破したら??」
リースティーアに促され、フォルブリエはF90Gタイプのメガ・ビームシールドを機体前面に展開し、バーニアを吹かせて突破を試みた。
しかし、その銀色の球状の物は、F90Gタイプの動きに合わせるように動き、その囲みを突破出来ない。
「あら??フォルブリエの動きが分かってるみたいに動く…………なら、これで!!」
その囲みの外側から、リースティーアのF90Bタイプがビームサーベルを構えて銀色の球状の物に斬りかかる。
が……………その動きも読まれているのか、紙一重のところで避けられてしまう。
「やべぇ!!リースティーア、離れろ!!何かを撃ってくるぞ!!」
マグナ・マーレイの肩部が光輝き………次の瞬間、拡散するビームが放たれる。
そしてそのビームは、銀色の球状の物に当たる度に方向を変えながら、F90Gタイプに向かっていく。
拡散され反射されていくビームは、まるで光の膜を作るかのように、F90Gタイプを囲い込み…………全方位からのビームを浴びせる。
「ぐわぁぁぁぁぁ!!」
光の膜が薄れていくと、地面に横たわるF90Gタイプの無残な姿が現れた。
メガ・ビームシールドを展開していた左腕は無事だが、右腕と両足は何処かに吹き飛んで無くなっている。
「あらあら…………今のは、一体何だったのかしら??それより、フォルブリエ、無事なの??」
リースティーアの呼び掛けに、フォルブリエからの返事は無い。
意識を失っているだけなのか、通信機器が壊れたのか、それとも…………
リースティーアは、モニターに映るマグナ・マーレイを一瞥する。
マグナ・マーレイのコクピットでは、アーシィが深い溜息をついていた。
サイコミュ兵器を使うと、こうも疲れるモノなのか…………
「あと…………1機か…………Fタイプは、我々の仲間だったな…………」
そう言うと、木々の間を動き回るF90Bタイプに狙いを定める。
「アーシィ大尉、そろそろ戻りませんと…………今回は、マグナ・マーレイの実戦テストが目的です。これ以上の戦闘は…………」
「分かっている。しかし、敵に背を向けて引き下がる訳にもいくまい??F90を後1機やったら戻るぞ!!」
隣にいるラングのパイロットにアーシィは言うと、銀色の球状の物…………リフレクター・ビットを展開していく。
「森の中に隠れながら、ゲリラ戦をやろうって…………それが甘いんだよ!!」
リフレクター・ビットの位置を確認すると、アーシィは拡散ビームを放つ!!
拡散されたビームは、リフレクター・ビットに反射し、多角的な動きでF90Bタイプに迫っていく。
「あら…………これは逃げきれないわね……………けどっ!!」
リースティーアは、F90Bタイプの右手に持っているメガ・ビームライフルの照準をマグナ・マーレイに合わせる。
「ビームを反射するボールで、機体を守っていない今なら…………墜ちろ、バタフライ!!」
バーニアを思い切り吹かし、F90Bタイプは全方位から迫るビームの雨の中を、損傷覚悟で抜け出していく。
その場に留まっていたら、F90Gタイプの二の舞になっていただろう………しかし、リースティーアは勇気を持って助かる最善の策を実行した。
右足は吹き飛んだものの、メガ・ビームライフルは手放していない。
そのメガ・ビームライフルが、マグナ・マーレイに向けて火を吹く!!
リフレクター・ビットの脇を抜け、マグナ・マーレイに到達した…………確かに間違いなく、ビームがマグナ・マーレイを貫いたかのように見えた。
だが、そのビームは、マグナ・マーレイの機体に触れるとIフィールドの効果で四散して消える。
「コロニー内で、こんな高出力のビームを撃つなど…………正気とは思えん!!」
アーシィなら難無く避けれたであろうビームを受けたのは、コロニーに穴が開く事を恐れたからだった。
しかし、鈍重そうなマグナ・マーレイのフォルムもあり、リースティーアは勘違いをしてしまう。
「あらあら………ビームは効かないのね…………なら、得意じゃないけど接近戦でいくわ!!」
ビームサーベルを持って片足で跳ぶF90Bタイプ…………その行動は、余りに無謀だった。
ミノフスキー・クラフトを搭載するマグナ・マーレイ相手に、ミノフスキー・フライトすら持たないF90では、重力下ではハンデがありすぎる。
下から迫るF90Bタイプに、アーシィはマグナ・マーレイを軽く浮上させつつ、地面近くに浮くリフレクター・ビットを目掛けて拡散ビームを放った。
「しまった!!」
F90は、空中での姿勢制御はアポジモーターに頼るしかない。
攻撃の届かない場所まてま浮上されたマグナ・マーレイからの攻撃と、下から迫るビーム………
空中で両方防ぐのは不可能だった。
リースティーアは、覚悟を決めて目を閉じる。
「まだ……………まだ諦めるな!!上からの攻撃に集中しろ!!」
リフレクター・ビットと拡散ビームの間に、閃光の如くバーニアを吹かした機体が飛び込んできた!!