機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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F90の戦い

「なんで、基地の場所がバレてんだ?スパイでもいるんじゃねーのか!!」

 

 フォルブリエが愚痴りながら、F90Gタイプで先行する。

 

「そう愚痴りなさんな。オレらの基地がバレた訳じゃないし、模擬戦で欲求不満なんだ。ザンスカールの奴等に八つ当たりしてやろうぜ!!」

 

 プロシュエールがF90Fタイプのコクピットで、豪快に笑う。

 

「あら、でも基地の場所がバレたのは深刻じゃない?今まで、基地を攻撃された事はないのに………」

 

 リースティーアが言うように、サナリィ内にあるリガ・ミリティアの基地は攻撃を受けた事がない。

 

 物量が圧倒的に少ないリガ・ミリティアが、ザンスカールの正規軍と戦うには、ゲリラ戦しか方法が無かった。

 

 その為、基地の場所は常に極秘であり、基地間の連携は指揮官しか行っておらず、その基地の場所がザンスカールに攻撃を受けたという事は、味方の中にスパイがいると疑わざるを得ない。

 

 そのぐらい、事は重要だった。

 

「確かに、うちらの基地までバレてたらマズイな。例の戦艦が奪われちまったら、俺たちは完全に足を失う」

 

 フォルブリエは周囲を警戒し、敵に見つからないように低空で移動する。

 

 レジアの率いる後続のヘビーガン隊より先行していた3機は、サナリィ内にある、もう1つの基地にいち早く辿り着いた。

 

 しかしそこは、基地と言うには無理がある…………そんな惨状であり、焼け野原と化している。

 

 ヘビーガンやジェムズガンの残骸と化した物も、そこら中に転がっていた。

 

「こんな………コロニーの中で、地表だけを綺麗に焼くなんて…………」

 

 リースティーアが驚くのも、無理はない。

 

 コロニー内で高出力のビームを放てば、コロニー本体を破壊し、穴を開けてしまう。

 

 つまり基地を襲ったモビルスーツは、コロニーを破壊しない程度にビームの力をコントロールし、その上で援軍がくる前に基地を全滅に追い込んだ…………という事だ。

 

「こりゃ……………本気でヤバイかもな…………プロシュエールは、オレ達の後ろに隠れてろよ!!装甲の薄いその機体じゃ、弱いビームでも致命傷になっちまう!!」

 

 「わーってるよ!!けど、基地を短時間で焼き尽くすなんて、一体何機のモビルスーツを出してやがんだよ」

 

 プロシュエールの乗機であるF90Fタイプは、そのミッションパックの特製を活かす為に、機体の装甲を薄い物に変更するカスタマイズを施してある。

 

 その為に、弱いビームでも装甲を貫通してしまう恐れがあった。

 

 フォルブリエは、F90Fタイプの位置に注意しつつ索敵範囲を広げる。

 

「リースティーア!!2時の方向!!3機だっ!!」

 

 機影を発見したフォルブリエは叫ぶと、F90Bタイプの前に出てメガ・ビームシールドを構えた。

 

「あらあら、居残って偵察していた部隊かしら………固まっちゃってると、3機纏めて墜としちゃうよー」

 

 リースティーアが、固まって動いているザンスカール機に狙いを定める。

 

「ビームの出力を落として………照準………入った!!墜ちろー♪」

 

 3機の真ん中にいる機体を目掛けて、F90Bタイプの構える出力を絞ったメガ・ビームライフルが火を噴く!!

 

「当たって…………ない!!てか、コッチにビームが戻ってきてんぞ!!」

 

 メガ・ビームライフルから放たれた閃光は、ザンスカール軍のモビルスーツに当たる前に方向を変え、何度かの方向転換の後、そのビームはF90の編隊に襲い掛かった。

 

 それを見たフォルブリエが、咄嗟に3機のF90が守れるように、メガ・ビームシールドを最大出力で展開する。

 

 ビームシールドに弾かれたビームは、四散して消えていく。

 

 「あらあら………明らかに、敵機に当たる前に跳ね返されたわ…………どうなってるの??」

 

 「そんな事より…………1機アンノウンが混じってるぞ!!ベスパの新型か??」

 

 見ただけで分かる…………純白のモビルスーツは、戦場では目立ち過ぎる。

 

 「あの白いの………狙って下さいって言わんばかりだな!!どうする??」

 

 プロシュエールの言葉が終わる前に、メガ・ビームライフルをフォルブリエ機に投げつけたF90Bタイプが、ロング・ビームバレルを構え始める。

 

 「おいおい………リースティーア、本気か??コロニー内で、そんなモンぶっ放つな!!それと、プロシュエールは後ろに下がってろ!!あの新型の能力を見極めるまでは、慎重に…………だ!!」

 

 ビーム兵器は何故だか反射されて、自分達に跳ね返されてしまう。

 

 であれば…………勝機があるとすれば、近接戦闘しかないが、フォルブリエの乗るF90Fタイプは装甲が薄い分、少しの被弾でも戦闘不能に陥る危険が高い。

 

 格闘戦に持ち込めるまでF90Fタイプを守れるかが、勝敗のポイントになるとフォルブリエは考えた。

 

 「リースティーア!!Fタイプを護衛しつつ、バタフライ野郎に近付くぞ!!オレの後ろから付いて来い!!」

 

 フォルブリエはF90Bタイプにメガ・ビームライフルを返すと、メガ・ビームシールドを構えたまま、近くに見えていた森に入って行く。

 

 「あらあら、お得意のゲリラ戦をやろうって事ね。ビーム兵器が効かないなら、実弾兵装に切替だなー。ボンバードの本領発揮ね!!」

 

 リースティーアは、モニターに映るロング・ビームバレルの表示をロング・バレルキャノンに変更すると、精密照準スコープに目を通す。

 

 「おい、リースティーア!!バレルキャノンもダメだ!!コロニーに大穴を開けるつもか??ミサイルランチャーとグレネードで対応するぞ!!」

 

 「あらあら………つまらないのね。ランチャーだろうがグレネードだろうが、コロニーに当たったら穴開くし、一緒じゃないの??」

 

 そう言いながらも、スコープから目を離したリースティーアは、素早くミサイルランチャーの照準をつける。

 

 そして森の中から、狙いをつけたラングにミサイルランチャーを放つ!!

 

 ガァァァァァン!!

 

 金属音の後に、爆発音がコロニーに響き渡る。

 

 「あらあら…………ラングはラングねぇ…………やっぱり強いのは、バタフライ野郎1機ってトコかしら」

 

 あっさりと実弾兵装でラングを撃破したリースティーアは、白のモビルスーツ…………マグナ・マーレイに照準を合わせた。

 

 「リースティーア!!動き回って撹乱するぞ!!的を絞らせるな!!」

 

 森の中を絶妙なスピードで、迷路のように生える木々を縫うように…………ゲリラ戦が得意なパイロットでなければ出来ない芸当で、3機のF90が動き回る。

 

 「背後をとった!!当てれる!!」

 

 マグナ・マーレイの死角…………モビルスーツの真下から背後に抜けたフォルブリエのF90Gタイプが、グレネードを放つ!!

 

 「一丁上がりだ!!」

 

 撃破したと思い込んだ視線の先で、銀色の球状の何かがグレネードを撃ち落とし…………そして、その銀色の球状の何かにF90Gタイプが囲まれている事に、その時始めてフォルブリエは気付いた…………


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