機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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Wのミッションパック

「F90が4機も……………かなりのカスタマイズが施されているように見えるが…………」

 

「まぁ、ここは技術屋が集まっているからな…………資金も限られているから、ベースのある機体を使うしかないんだ。それでも、サナリィの今の技術を踏まえて造られたラングとやり合うのは厳しいんだが…………さっきの模擬戦で、モビルスーツの性能以上に、パイロットの腕が重要なのがよく分かったよ」

 

 レジアとリファリアは、モビルスーツ・デッキでカスタマイズされたF90を見上げていた。

 

「オレの機体はオフィサー・タイプで、索敵・通信能力を強化させた…………まぁ、指揮をとるのに適している。他の機体には、長距離射撃に特化させたり、接近戦用だったり…………ベスパの機体に基本性能で劣る分、それぞれの長所を最大限に活かせるミッションパックを装備させている」

 

「流石は、サナリィの技術者達が集まった基地だな。旧式の機体でも、充分にザンスカール軍に対抗出来ている」

 

 模擬戦で圧倒したにも関わらず、レジアは本気で凄いと思う。

 

 その言葉に偽りが無い事を感じたリファリアは、自慢気に自分達がカスタマイズしたF90を見つめる。

 

「リファリアさん、戦艦の建造状態はどうですか?私も手伝えるなら、手伝いたいんですが………」

 

 レジアの隣にいたミューラが、少し心配そうな顔でリファリアに聞く。

 

「ああ、完成まであと一歩なんだが…………元々造られていたモビルスーツ・デッキの扉が開かないのと、新型の核融合炉の調整が出来てないんだ……………優秀な技術者のミューラさんに手作って貰えるなら、助かる」

 

 ミューラの提案に、リファリアは新造戦艦の図面を持ってきて、問題となっている箇所を指差す。

 

「モビルスーツ・デッキの扉が開かない??なんでだ??」

 

 図面を見ながら、レジアが首を捻る。

 

「この戦艦の開発責任者は、貴方の父親だったのよ。サナリィが襲われた時、ラングの開発と共に強要されたのが、ザンスカール建国時に自分達の力を見せつける為に飛ばす予定だった戦艦の開発だった。その計画を逆手にとって、ダブルバード・ガンダムの母艦としての戦艦を作ってたのよ」

 

 そこでミューラは言葉を止めると、目を閉じた。

 

 サナリィでの戦いを思い出したのか……………ミューラの閉じた瞳から、一筋の涙が頬を伝う。

 

「モビルスーツ・デッキには、何か隠したかった技術があるのかもしれない。扉を開けるには、なんらかの暗号が必要なのかも………?」

 

 ミューラは涙を拭うと、力の戻った瞳で設計図を見直す。

 

「分かった………オレも手伝うよ。親父が考えたんなら、何か気付ける事があるかもしれない。でも、なんでサナリィの一部分だけが狙われたのか分かったよ。ベスパの連中は、戦艦を奪いに来てたんだ………」

 

 レジアは、まだ見ぬ戦艦に思いを馳せる。

 

「今、開発の指揮をとっているゲルダ・リレーンは休暇で休んでいるから、明日から手伝ってくれ」

 

 リファリアはそう言うと、再びF90に視線を移す。

 

 「実は、もう1つ…………ミッションパックはあるんだ………Wの文字を与えられたミッションパックが…………」

 

 リファリアは、ボソッと………思い出したかのように呟いた。

 

 「W………ですって!!WarbirdTypeが……………完成しているんですか?」

 

 ミューラの大声に…………その驚きの大きさに、レジアは呆気にとられる。

 

 「いや、まだ完成には至っていない。ウォーバード・タイプ…………戦場を駆け抜ける翼…………ミノフスキー・ドライブを搭載したレコードブレーカーが1機でも残ってくれていたら、あるいは…………」

 

 首を横に振るリファリアの姿を見て、ミューラは肩を落とす。

 

 「おいおい、サナリィの中でもトップレベルの頭脳を持つ2人がいて、お手上げは無いだろ?ミューラさんは、ミノフスキー・ドライブを搭載する予定のダブルバードを完成させるんだろ?なら、ほぼ完成しているミッションパックの1つぐらい、余裕で実践レベルに仕上げられるさ!!オレやニコルの戦闘データも使ってくれていい!!」

 

 レジアは明るい声で、2人の不安を掻き消すかのように声を発した。

 

 「そうね…………タブルバード・ガンダムを完成させる為の近道になるかも…………リファリアさん、早速で悪いですけど、ウォーバードの図面と実物……………見せて貰えますか?」

 

 ミューラの言葉に、レジアとリファリアの顔が笑顔になる。

 

 「なぜだか、オレもウォーバードを装備したF90が飛び立つ姿が想像出来たよ。ミューラさん、やりましょう!!」

 

 強力なタッグが完成した事に、レジアは嬉しくなった。

 


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