機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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カリーン基地

「うーん………ようやく決まった就職先が、こんな田舎の工場かよ!!」

 

連邦、リガ・ミリティアによるアメリアへの攻撃の3ヶ月後、ニコルはリガ・ミリティアのモビルスーツ工場であるカリーンへの就職を決めていた。

 

ザンスカール帝国は建国したものの、その暴虐なやり口や宇宙移民独立の気運の中、従属するコロニーも少なく、地球でも反ザンスカールが叫ばれるようになる。

 

そんな中、時代遅れの連邦のモビルスーツで、ザンスカールの新型モビルスーツ、ラングを5機破壊したレジア・アグナールの名は、地球でも知られるようになっていた。

 

強大な敵と戦う反撃のエースの名に、地球の人々は酔いしれた。

 

いつの世も、恐怖に立ち向かい、それに打ち勝つ者に人々は称賛を惜しまない。 

 

レジア・アグナールとリガ・ミリティアの存在は、戦争の嵐に巻き込まれていない地球では、英雄のような噂が流れていた。

 

ニコルは、そんな噂とレジア人気を感じて、リガ・ミリティアに参加する事を決めたのである。

 

「てか、あんた本当に考えが浅はかっていうか、何ていうか………」

 

その動機を聞いた瞬間にマイは頭を抱えたが、まぁ家でブラブラしてるよりマシかとも思い「戦争の道具など作っちゃいかん!!」と反対するロブを、なんとか宥めた。

 

マイ自身は、地球に戦争がくる前に宇宙で決着をつけてもらいたいという願いから、以前よりリガ・ミリティアのモビルスーツ工場で働いており、そのつてでニコルはリガ・ミリティアに参加する事となった。

 

「しかし、ヴィクトリー計画ねぇ……」

 

量産体制に入りつつあるガンイージの緑色のパーツを眺めながら、ニコルはふと疑問を口にした。

 

「勝利の為の計画でしょ?ガンイージって、戦局を変えれるようなモビルスーツかな??」

 

「はっはっは!!まぁ、その通りだわな!!」

 

突然、ニコルの背後から豪快な笑い声が聞こえてくる。

 

「ボイズンさん、突然後ろで笑わないで下さいよ!!」

 

「工場長と呼べと言ってるだろ!!レジスタンスがモビルスーツを開発、量産出来る事自体が奇跡に近いんだよ!!!このガンイージだって、連邦のジェムズガンよりはるかに高性能機種なんだぜ!!」

 

そう言いながらボイズンは、新型の開発の雑用とはいえ、アルバイトのような連中を使う事に不安を感じていた。

 

ボイズン………この男は、カリーン工場の工場長であり、リガ・ミリティアのモビルスーツ開発に携わっている人物だ。

 

もともとモビルスーツの知識のあまりないニコルだったが、ボイズンの指導の下、仕事の腕を向上させていた。

 

「ニコル、今回完成するガンイージは、一度地上で重力下の運用試験の後、月の秘密工場[ホラズム]に搬入する。お前も来い」

 

「いっ!オレが宇宙に上がるの?」

 

「色々運ばなきゃいかん!!男手が必要なんだよ!!」

 

ボイズンは嫌がるニコルの頭を、油の染み込んだ分厚い手で、軽く叩く。

 

「男が宇宙に上がるのに、お前の年じゃ遅いぐらいだぞ。何もずっと宇宙にいろって言ってんじゃない。物を届けるだけの………子供でも出来るお使いだ」

 

「へいへい、分かりやしたよ。大将」

 

面倒臭そうに答えたニコルは、テーブルに置いてあったジュースに手を伸ばす。

 

「あーっ!!それ私の!!」

 

突然の大声に、ニコルは伸ばした手を引っ込めた。

 

「地球の子って、人の物を勝手に取るのが習慣なのかしら?」

 

大声を出した女性は、綺麗な栗色の長い髪で風を切りながら、ジュースの置いてあるテーブルに一直線に歩いて来る。

 

「なんだよ!!ジュースぐらいで、そんな目くじらたてるなよ!!」

 

ニコルの怒った声を聞いて、ジュースを飲み始めた女性は思わず笑ってしまい、ジュースを吹き出した。

 

「何まぢで怒ってんの?仕方ないなぁ、ほら一口飲む?」

 

口をつけ口紅がついたグラスを、ニコルの方に差し出す。

 

その瞬間、髪で隠されていた女性の顔がニコルの瞳に飛び込んでくる。

 

その綺麗な顔に、ニコルは一瞬言葉を失い、差し出されたグラスを凝視して頬を赤らめた。

 

「あはは、カワイイ!!なんでこんな男の子が働いてるの?」

 

吹き出して笑い続ける女性に、今度はボイズンが面倒臭い表情を浮かべる。

 

「マヘリア!!あまり男をからかうんじゃない。ニコル、こちらの方は、ガンイージのテストパイロットのマヘリア・メリルだ。月のホラズムまで同行する」

 

「あら、少年も一緒に来るんだ♪よろしくネ!!」

 

マヘリアのウインクに、ニコルは顔を赤らめたままの状態が続いていた……

 

「はぁ………ホントに男って、美人に弱いよね!!嫌になっちゃう!!」

 

マイはニコルの態度に、少し嫌悪感を感じていた。


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