機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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性能差のある模擬戦

 その頃、プロシュエールの操縦するトライバード・ガンダムと、レジアの駆るジェムズガンが刃を交えていた!!

 

「エースだか何だか知らねぇが、くたばりやがれ!!」

 

 加速しながら飛び込んでくるトライバード・ガンダムに対し、レジアは最小限の動きでそれを躱す。

 

「闇雲に飛び込んでくるだけでは、オレには通用しないぞ!!」

 

 加速力がある分、動作が大きくなるトライバード・ガンダムの動きに付いていく、レジアのジェムズガン。

 

 トライバード・ガンダムの描く大きな円の中で、小さな丸を作り出すように、最小限の動きで圧倒的な機動力の差を埋めていく。

 

「ちっ!!!ジェムズガンで、新型ガンダムの動きに付いてきやがる!!流石はエースと呼ばれるだけはあるな。だがっ!!」

 

 トライバード・ガンダムは加速し、ジェムズガンに的を絞らせないようなスピードで、ライフルからビームを連射する。

 

 ジェムズガンのビームの射程に入っても、次の瞬間には射程外に飛び出していく。

 

 それでも、レジアは慌てていない。

 

 ジェムズガンにビームシールドを展開させ、機体にビームを当てないように小さく動く。

 

 レジアに反撃の意思が無いのか……………ビームライフルを持つジェムズガンの右腕は下がったままだ。

 

「反撃する余裕も無いみてぇだな!!リガ・ミリティアのエースとか煽てられてても、大した事ないぜ!!」

 

 プロシュエールは得意満面な笑みを浮かべながら、ヒット・アンド・アウェイの戦法を継続する。

 

 その言葉を聞いて、レジアの表情も緩む。

 

「新型のガンダムで戦ってるんだ……………普通のパイロットなら、ジェムズガン如き瞬殺だろうに……………そっちこそ、腕を磨き直した方がいいんじゃないのか?」

 

 レジアの挑発的な物言いに、プロシュエールは自らの頭に血が昇るのを感じる。

 

「ざけんな!!ちょっと手を抜いてやりゃあ、いい気になりやがって!!そんなに瞬殺されたきゃ、やってやんぜ!!」

 

 トライバード・ガンダムのバーニアが火を噴き、そのスピードが更に増す。

 

 その姿を見て、ようやくジェムズガンがビームライフルを構えた。

 

「はっ!!ようやく反撃する気になったか!!だが、ジェムズガンの機動性で当たるかよ!!」

 

 プロシュエールの言葉に、再び口元を緩ませるレジア。

 

 当てる気があるのか……………プロシュエールの言う通り、ジェムズガンのライフルから連射されるビームは、トライバード・ガンダムを捉えるには遅すぎる。

 

 その遅いビームの束を、アポジモーターとバーニアを駆使して尽く躱すトライバード・ガンダム!!

 

 しかし、コクピットの中は少し事情が違っていた。

 

 プロシュエールが、トライバードの加速・回避性能に操縦が追い付かなくなっていく。

 

 遅い攻撃かもしれない…………ジェムズガンとトライバード・ガンダムでは、機体性能に差がありすぎる……………それでも、レジアは考えながらビームを放っていた。

 

 トライバード・ガンダムの性能と、プロシュエールというパイロットの癖を考慮しながら、絶妙の位置にビームを置いていく。

 

 余裕で躱せるようでいて……………しかし、躱した先にビームが飛んで来るように仕組んでいる。

 

 頭に血が上って冷静に対処出来ないプロシュエールは、トライバード・ガンダムの性能の限界を引き出そうと必死になっていた。

 

 ダッシュ力もあればストップする力も桁違いのトライバード・ガンダムは、その性能故にパイロットにかかる負担も大きい。

 

 トライバード・ガンダムに振り回されるプロシュエールは、加速・停止・回避に伴う衝撃や横揺れに意識が飛びそうになっていた。

 

(何なんだ?こんな状態で、戦闘なんか継続出来ねぇぞ!!)

 

 プロシュエールは、もはや限界だった。

 

 だが、その動きを緩めたら、レジアのジェムズガンにやられる……………動きが遅い筈の機体から、凄まじい程のプレッシャーをプロシュエールは感じる。

 

 その迷いを感じとったのか………………ジェムズガンの動きが素早さを増していく。

 

 ジェムズガンでトライバード・ガンダムの動きを捉える……………厳しいのは、レジアも同じだった。

 

 コクピットに鳴り響く警告音を無視して、レジアもジェムズガンの能力を限界まで引き出し始める。

 

 そこまでしなければ、トライバード・ガンダムの通常の動きにすら付いていけないのだ。

 

 トライバード・ガンダムとジェムズガン………………

 

 それぞれの放つビームが交差する中、当然辛いのはレジアの方だった。

 

 眼が霞む程のスピードを持つトライバード・ガンダム相手に、集中を切らさずにプレッシャーを与え続ける。

 

 「くそっ!!相手はジェムズガンだぞ!!こんな馬鹿な事があるかっ!!」

 

 ピンポイントで嫌な場所に放たれるビームに、回避のスピードを緩められないプロシュエールは、普段の戦闘ではあり得ない加速の中、ついに操作ミスを犯す。

 

 それでも、ジェムズガンのビームはトライバード・ガンダムを捉えられない。

 

 だが、何度も繰り返される状況に、根負けしたのはプロシュエールだった。

 

 愚直に放たれるビームに、プロシュエールの腕が悲鳴を上げる。

 

 動きが単調になったトライバード・ガンダムが、ジェムズガンから放たれるビームに直撃するまで、数分とかからなかった。

 

 プロシュエールはなす統べなくコクピットに直撃を受け、撃破を告げるアラームがコクピットを包む。

 

「冗談じゃねぇ……………これで俺達と同じオールド・タイプだって??」

 

 プロシュエールは、トライバード・ガンダムのコクピットで大きく息を吐きながら、レジアというパイロットの強さと恐怖を感じていた。

 


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