「さて、ボチボチ始めようか!!」
トライバード・ガンダムを駆るプロシュエールが叫びながら、2機のジェムズガンの間を駆け抜けていく。
「ニコル、連携は相手が上だっ!!敵を個々に分断し、各個撃破していくぞ!!」
猛スピードで駆け抜けるトライバード・ガンダムを見ながら、しかしレジアの声は落ち着いている。
「アイアイサー!!隊長!!」
ニコルもまた、圧倒的なスピードのトライバード・ガンダムを見ている筈だが、その声には余裕すら感じられた。
ジェムズガンが臨戦態勢を整えると、飛び回っていたトライバード・ガンダムも、F90・Gタイプの背後に戻る。
「あらあら、遊びはもうオシマイなのかしら?」
ガンスナイパーのコクピットから、リースティーアが話しかけた。
「ああ、この機体なら単機でもいける。ガキは2人にまかせるぜ!!」
そう言うと、プロシュエールはトライバード・ガンダムをレジア機に向かって飛ばして行く。
「なんて自分勝手な野郎だ!!」
フォルブリエは悪態をつきながらも、ニコル機に標準を定める。
「リースティーア!!ジェムズガンに遠距離攻撃能力は無い。なぶり殺しにしちまえ!!」
「あらあら、汚いお言葉。でも、元よりそのつもりよ!!」
ガンスナイパーが、メガ・ビームライフルを構えた。
そして、その視界にニコル機のジェムズガンを捉える。
が、その瞬間…………………
「あら……………この機体……………オート・ロックオンが出来ない……………」
「は??んな訳ねーだろ!!マニュアルのロックオンで、動いてるモビルスーツに長距離砲が当たるかよ!!調整ミスじゃねーのか?」
フォルブリエが怒鳴るのも無理はない。
戦闘中は機体同士が接近すると言っても、ビームサーベルを使うような超接近戦をしない限り、視認レベルではモビルスーツは米粒のようにしか見えないのだ。
超接近戦をしても、米粒のように見える距離に離れるまで数秒とかからない。
つまり、オートでロックオンをして、更に正確に射撃するならば手動で微調整をするのが普通である。
「あらあら…………………本当に整備不良かしら??いえ…………やっぱり、この機体にはオートロック機能がついてない!!」
それでも射撃に自信のあるリースティーアは、マニュアル・ロックオンでニコル機に向けてメガ・ビームライフルを放つ。
その模擬戦用の殺傷能力の無いビームは、確かにニコル機のいた場所を通過した。
しかしジェムズガンとは言え、その動きは手動だけで当てるには、あまりにも速い。
とりあえず射ってみたメガ・ビームライフルは、ジェムズガンには擦りもしないで、機体の遥か横を通過する。
それでも、マニュアル操作のみでジェムズガンの元いた場所を正確に射てるリースティーアの腕は、かなり高いモノと言う事が出来るだろう。
ただ、感覚だけで機体を操作するニコルは、警戒もせずにガンスナイパーとの距離を詰めていく。
「ちっ!!リースティーア、距離をとれ!!」
ニコルの行方に、メガ・ビームシールドを展開したF90・Gタイプが立ち塞がる。
「メガ・ビームシールドか………………厄介だな………………なーんて、言うとでも思ったかい??」
ニコルもジェムズガンのビームシールドを展開し、F90・Gタイプに突っ込んでいく。
「なっ!!お前、ライフルを何処に置いてきた!!」
模擬戦が開始した時は、確かにニコル機の手にビームライフルは握られていた……………しかし、今その手にビームライフルは無い。
「気付くの早いのは流石だね!!でも……………遅い!!」
ニコルが叫んだ瞬間、フォルブリエ機の撃破を伝える情報がモニターに表示される。
「一体、何が……………」
呆然とするフォルブリエの視界の先で、ニコルはワイヤーに付けて飛ばしたライフルを回収していた。
「まさか、ワイヤーを使って…………」
そう……………モビルスーツの手首に内臓されているワイヤーを使って、F90・Gタイプの背後から有線でビームを発射したのだ。
高い空間認識能力が無ければ、出来ない芸当である。
フォルブリエは、実力差を痛感していた。
そんなフォルブリエ機には目もくれず、ニコル機はバーニアを全開にして加速し、ガンスナイパーに接近していく。
「あらあら…………フォルブリエが一瞬で…………これが、ニュータイプの力とでも言うの!!」
ガンスナイパーはメガ・ビームライフルから、通常のビームライフルに持ち替えてニコル機を狙うが、全く当たらない。
逆に、ニコルの正確無比の射撃で、ガンスナイパーは行動が制限され……………そして、追い詰められていく。
ロックオンがマニュアルでしか出来ない事を除けば、ガンスナイパーの性能はジェムズガンを凌駕している。
それでも……………である。
「オートの射撃ってスゲー楽!!で、これで!!」
ニコルはオートとマニュアルのロックを繰り返し、リースティーアに的を絞らせない。
ほぼ身動きがとれなくなったガンスナイパーのコクピットに、直撃の表示がモニターに表れた。
「あらあら……………強すぎるわ…………こんなに凄いの………………」
リースティーアはニコルの力に脱帽し、肩を竦めた。