モニターの先では、いよいよ模擬戦が始まろうとしている。
「マイ、早くしな!!模擬戦、始まっちゃうよ!!」
マヘリアの声に背中を押されるように、マイはモニターの前に小走りで辿り着く。
「ガンダムと戦うなんて…………レジア、大丈夫かな?」
マイは胸の前で手を組み、祈るような姿勢を作る。
「F90とトライバードじゃレースカーと普通のスポーツカーぐらい性能が違うから、ガンダムの性能を発揮出来ずにレジアの圧勝よ」
「それにマイさん、模擬戦は通常兵器を使うんじゃないんですよ。モニターがビームを認識して、機体に当たったら、やられました~って、モニター上に表示されるだけで、命をかける訳じゃないですから」
マヘリアとクレナがマイの横に座り、マイの不安を取り除こうと声をかけた。
「それは…………分かってるんですけど、レジアが負けたらガンダムはあいつ等の手に…………そうなっちゃったら、わたし……………」
不安な表情を崩さないマイに、ミューラが後ろから肩を抱く。
「大丈夫よ!!レジアはエースを超えた、超エース級のパイロットよ。ジェムズガンでガンダムを相手にしても、そんな簡単にやられないわ。ニコルもフォローするだろうし…………それに、マイちゃんが見守ってるんだから、普段より数倍は強くなってるはずよ!!」
肩を優しく摩ってくれるミューラは、まるで母のような表情を浮かべる。
そんなミューラの手の温もりを感じながら、マイは自分の体温が上がり、顔に血が集まってくるのを感じた。
「えっ!!な…………何言ってるんですか?わた…………私達は別に………そんな…………」
吃るマイの背後に、巨大な女性の影が現れる。
「大丈夫!!まだ一方通行でも、私達がついてる!!」
その影の正体…………エステルが、豪快に笑いながらマイの背中を叩いてくるが、その発言に女性陣の視線が集まった。
「エステルさんっ!!一方通行とか言わないの!!」
エステルの腕を抓りながら、ミューラは歪むその顔を睨む。
「いでででで!!分かったよ!!まぁ、可愛い娘に好かれてるんだ。レジアだって悪い気はしてない筈さ」
「えっ?……………エステルさん、本当ですか?」
あまりに真面目なマイの反応に、会場全体が笑いに包まれる。
「ただ…………私がレジアさんに好意を持ってるって、皆さんは何で知ってるんですか?」
マイは恥ずかしながら、しかし聞かずにはいられなかった。
先程の会話は[お肌の触れ合い回線]を使った筈だし、自分の気持ちが感づかれている事が気になってしまう。
「レジアとの通信、オンラインだったから全部聞こえてたし、そうでなくても、あんたの態度見てれば一目瞭然でしょ?」
「えっ………………えーーー!!」
マヘリアは呆れるように両腕を広げ、それを見たマイは頬を朱に染め、顔を覆った。