機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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4機のF90

 

「で……………あんたら、女の子を襲ったうえに、模擬戦の約束までしてきたのかい?」

 

 冷ややかな視線をフォルブリエに向けたヘレンは、明らかに呆れた顔をしている。

 

「仕方ねぇだろ!!成り行きだよ。成り行き。だが、新型のガンダムを素直に差し出すとはな!!話の分かる馬鹿で助かるぜ。なぁ」

 

 フォルブリエは、横にいたリースティーアに同意を求めた。

 

「あらあら…………私にふらないでくれる。同類に見られるじゃない」

 

 明らかに不満そうな顔をしてフォルブリエの言葉に反応したリースティーアに、プロシュエールが豪快に笑う。

 

「いやぁ、お前だってガンスナイパーに乗れるって、はしゃいでただろ?結構、同類なんじゃないのか?」

 

「あら、私はパイロットとしてモビルスーツに興味があるだけで、女の子の身体にしか興味のない変態さん達とは違いますわよー」

 

 プロシュエールの言葉に、更に不満そうな顔をしたリースティーアが、挑発するような目で2人を睨む。

 

「3人とも、それまでだ」

 

 ヘレンと同じく呆れた顔をして話を聞いていたリファリアが、溜め息をつきながら3人に割って入った。

 

「今回は、新型のガンダム…………トライバードと、ニュータイプ専用機のガンスナイパーをうちで使わせてもらえる。プロシュエールはトライバード。リースティーアはガンスナイパーを使ってくれ」

 

 「じゃあ、オレだけ、いつものF90だな。使い慣れてる機体だから、まぁいいが……………ミッションパックは、いつものでいいよな?」

 

 フォルブリエはそう言うと、自らの愛機F90Gタイプを見上げる。

 

 F90……………サナリィのフォーミュラ計画で産み出された、新規格の小型モビルスーツである。

 

 性能を検証する為のワンメーク・モデルであり、当初は2機しか組み立てられず、のちに3機目が組み立てられるが、量産されていない機体だ。

 

 運用目的ごとに装備を変えられるミッションパックと呼ばれる兵装を、ハードポイントに換装出来るようになっている。

 

 ザンスカール帝国との戦いに備え、サナリィのファクトリーにあったパーツを組み合わせ、リファリアと天才モビルスーツ・マイスターだったレジアの父が密かに組み上げた機体……………それが、現在リガ・ミリティアのゲリラ組織が使っている4機のF90の正体であった。

 

 ミッションパックは、フォルブリエのG(ガード)タイプの他に、リースティーアのB(ボンバード)タイプ、プロシュエールのF(ファイト)タイプ、リファリアのO(オフィサー)タイプのみがあり、他のミッションパックは見つかっていない。

 

 「フォルブリエがGタイプに乗るなら、戦術はいつもと変えなくて大丈夫だろ?新型ガンダムは近接、スナイパーは支援の特性のある機体だから、やり方を変える必要もない」

 

 「そうだな……………ただ、リースティーアは気をつけろよ。サイコフレーム搭載の機体だ…………オールドタイプでも使えるだろうが、性能の全ては出せない筈だ」

 

 プロシュエールの言葉に頷いたリファリアは、リースティーアに視線を向ける。

 

 「あらあら、心配してくれてるのかしら?でも、安心して。射撃タイプのモビルスーツとは相性いいのよねー」

 

 リースティーアは軽口を叩くと、そのままガンスナイパーのコクピットに消えていく。

 

 「この模擬戦に勝てば、新型ガンダムはウチらのモンだ。終わったら新型ガンダムに乗っけてもらうぜ!!」

 

 フォルブリエはプロシュエールの肩を叩くと、乗り慣れたF90のコクピットに滑り込む。

 

「さてと、新型ガンダムで一捻りしてきてやるか!!」

 

 プロシュエールは、腕を回しながらトライバード・ガンダムに近づく。

 

「結局、相手はジェムズガン2機で戦うんだろ?リファリア、あいつら勝てるんじゃないか?」

 

「ん?多分駄目だろ。ジェムズガンとはいえ、相手はエースとニュータイプだぞ。それに、あのガンダムタイプは、かなりの機動性だ。プロシュエールに乗りこなせるとは思えないな…………」

 

 ヘレンの心配をあっさりと否定したリファリアは、トライバード・ガンダムに目を移す。

 

「V計画、雛形の機体か…………そういえば、あのマヘリアってパイロット、本当にシュラク隊に推薦していいのか?条件的に無利なんじゃないか?」

 

「リガ・ミリティアが認めて、正式にガンイージを託されたパイロットにしか入隊許可が出ないってヤツかい?」

 

 ヘレンもガンイージに似たフォルムを持つトライバードに目を移し、V計画が着実に進行している事を実感する。

 

「マヘリアなら大丈夫さ。私と肩を並べて戦えるんだぞ。確かに、ファクトリーのテストパイロットだったみたいだが、誰よりもイージを使いこなしてると思う」

 

「戦闘記録は少ないが、月面基地付近の戦闘で生き残ったパイロットだ。評価はされてるか…………分かった、推薦状は書いておくさ」

 

 そう言うと、リファリアは立ち上がる。

 

「模擬戦、見ていかないのか?」

 

「勝負にならない戦い程、つまらないモノは無いさ。奴等には、いい御灸になるだろうが…………ジェムズガンに負けて、プライドがズタズタにされた後のフォローが面倒臭そうだな…………」

 

 リファリアがモニターに視線を移すと、トライバードとガンスナイパーが出撃していく映像が写し出されている。

 

「忙しくなるのは、これからだ。ヘレン、シュラク隊の事も重要かもしれないが、まずは戦艦を無事に飛び出させる事が最優先だ。よろしく頼む」

 

 リファリアの言葉に、ヘレンは頷く。

 

(この基地の地下で建造中の戦艦……………技術者を総動員させて、サナリィの技術の全てをつぎ込んでいると聞く。それが完成したら、この基地はどうなるんだろう?)

 

 ヘレンはそんな考えを抱いたまま、モニターを見つめた…………


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