「ヘレン、ザンスカールの雑魚共を蹴散らすぞ!!」
「オッケー、リファリア!!全機、脱出艇を援護しつつ、敵を各個撃破!!」
ガンイージを先頭に、ヘビーガンの部隊が姿を現す。
「サナリィのゲリラ部隊かっ!!助かった……………しかし、ヘビーガンでは!!」
コロンブスⅢに近付きつつあるトライバード・ガンダムのコクピットで、レジアは叫んだ。
そんなレジアの焦りを無視するかのように、ヘビーガン部隊はラングとの戦闘宙域に突入していく。
「脱出艇を、1機もやらせるな!!いくよ!!」
サナリィ・コロニーより出撃したガンイージが、ビームバズーカでラングを撃破する。
「ガンイージ、もう実戦配備されてる機体があるの?コッチのは、データ収集の為に優先的に回してもらってるってのに!!」
援軍が来た心強さと、何より自分と同じ女性のパイロットに活を入れられ、再び闘志を漲らしたマヘリアは、ビームライフルでGキャノンを1機墜した後、迫ってくるガンイージに視線を向けた。
「リガ・ミリティアの新型を托されてんだろ!!そんな奴が弱腰じゃ、他のパイロットに示しがつかねーぞ!!」
赤いショートカットの女性…………ヘレン・ジャクソンの乗るガンイージは、ヘビーガン部隊を置き去りにするように、マヘリアのガンイージに向かって一直線にバーニアを吹かせる。
「突出した機体を狙え!!アレを放置すると、厄介そうだ!!」
先行していくヘレンのガンイージは、Gキャノンの照準の中に自ら入っていく。
「ビームキャノンの射程の長さを舐めるなよ!!」
Gキャノン・パイロットの言葉は聞こえないが、まるで聞こえたかのように、ヘレンの口元が緩む。
「わりぃが、コッチにも長距離射撃用の機体はあるんだよ!!」
ヘビーガンの部隊の中から、青と白の機体が現れる。
その機体の持つ獲物……………腰に装備した2つの砲身を合わせ、凄まじい長さになったキャノン砲を構える機体…………
「何?あの機体!!ガンダム??」
マヘリアが驚きの声を上げると同時に、その長いキャノン砲から、極太のビームが粒子を撒き散らしながら放たれる。
そして、そのビームはGキャノンを薙ぎ払う!!
その隙にヘレン機はマヘリア機に接近すると、ビームバズーカでGキャノンを撃ち墜とす。
「コッチは、私とコイツで充分だ!!リファリアは、ラング隊を頼む!!」
「了解した。こっちは任せろ」
リファリアが指示を出すと、ヘビーガンの部隊の中から、先程Gキャノンを薙ぎ払ったガンダム・タイプの他に、装備の違う2機が飛び出した。
「フォルブリエは前に出ろ!!リースティーアは後方より狙撃!!プロシュエールは隙を付いて近接戦だ!!」
リファリアの指示に、メガ・ビームシールドを持つガンダム・タイプが前に出て、ラングの攻撃を尽く無効化した。
その後方からは、先にGキャノンに放った長いキャノン砲……………ロング・ビームバレルを装備したガンダム・タイプが、牽制攻撃を仕掛ける。
その牽制攻撃をかい潜った敵機に、装甲を薄くして機動力を高めたガンダム・タイプが、その懐に入り、ビームサーベルで切り裂く!!
「あれは………………F90か!!それも3機!!旧式だが……………それでも、欠点を補いながら上手く戦っている!!優秀な指揮官がいるのか?これならイケる!!」
ようやく戦線に追い付いたトライバード・ガンダムが、ラングの攻撃を簡単に躱し、脱出艇を狙うラングを次々と墜としていく。
「ようやく新型ガンダムのお出ましか。前線で戦ってないエリートは、いいトコだけ持ってってエース気取りかい」
「あら、フォルブリエよりはイイ腕してるじゃない。ただの温室育ちのお坊ちゃんじゃ無さそうよ」
「新型のガンダム・タイプに乗ってんだ。あの機動力でラングを簡単にやれなきゃ、ただの雑魚だ。あれに乗れば、リースティーアだってエースになれるぜ」
ラングを絶妙な連係で倒したガンダム・タイプの3機は、少し落ち着いた戦場で暫くトライバードの戦いぶりを観察していた。
圧倒的なスピードで宇宙空間を疾走する新型ガンダムの姿は、いかにガンダム・タイプ……………F90に乗っているとは言え、モビルスーツ・パイロットにとっては嫉妬の対象にしかならない。
「あらあら、私はサナリィ駐屯のリガ・ミリティア部隊の中では、エースのつもりなんですけど!!プロシュエールこそ、新型のガンダム・タイプに乗らないとスコア上がらないんじゃないの?」
「お前達、無駄口を叩いているんじゃない。敵はまだいるぞ。ヘレンを見習って、もう少し仕事しろ」
リファリアの言葉に、F90を改修しモデファイした機体に乗る3人は戦線に復帰した。
ヘレンはマヘリアのガンイージと背中合わせにして、Gキャノンを次々と墜としていた。
「あんた、なかなかヤルね!!気に入ったよ!!」
「ありがとぉ♪正直ヤバイって思ったけど、助かったよ!!」
2機のガンイージは、今日初めて出会ったとはとても思えない連係で、お互いをフォローして戦う。
マヘリアは先程までの焦りや絶望感は消え、心の落ち着きを感じていた。
「あんたとは気が合いそうだ!!このまま敵を一掃して、基地に戻るよ!!」
ヘレンの言葉にマヘリアは頷き、操縦菅を握りしめる。
被害が増えていくザンスカール軍は、脱出艇の破壊が困難と判断するやいなや、後退を始めた。
輸送艦は破壊出来たのと、サナリィ駐屯のリガ・ミリティアのほぼ全勢力と戦える程の戦力を投入していなかった事。
そして、アーシィ専用モビルスーツの試験の為、リガ・ミリティアの戦力を残しておく必要があったからだ。
リガ・ミリティアも、後退するザンスカール軍を深追いする程の余裕もなく、そのままサナリィの基地に戻っていく。
「被害は最小限ですんだか……………しかし、ベスパの後退が早すぎる気がする。嫌な感じだな……………」
レジアは不安を感じながらもヘビーガンの部隊に合流し、母を失ったサナリィ・コロニーの中に再び入っていった…………