機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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マヘリアの回復

 

「おー、少年。無事で何より」

 

 病院を退院したマヘリアは、その足でホラズムの基地に顔を出していた。

 

「マヘリアさん……………そりゃオレのセリフだよ………………でも、元気そうで良かった」

 

 ニコルの安堵した表情を見て、マヘリアが頬を膨らませる。

 

「良かない!!ずっとベッドに寝かされてたんだよ!!体が鈍って仕方ない!!汗臭いのに、なかなかお風呂にも入れないし…………」

 

(そりゃ傷もあるんだから、風呂に入れる訳ないだろ……………)

 

 思わず口から出そうになったツッコミの言葉を、ニコルは呑み込んだ。

 

「おっ、マヘリアさん。ようやく退院か。おめでとう」

 

 歩いてきたレジアが、マヘリアとニコルに気付き声をかける。

 

「あっ、その……………ご迷惑をおかけしました。前の戦闘では、足を引っ張ってしまって……………」

 

「いや、よく頑張ってくれたよ。オレの方こそ、うまく戦えなかった。せっかくガンダムで出撃したのに……………けど今、生きてるって事が大事なんだ。生きていれば反省もできるし、それを次に活かす事が出来る」

 

 マヘリアも頷き、少し堅かった表情が和らぐ。

 

「ニコルも、初陣でメガ・ビームライフルで敵を倒してたよね!!凄かったよ!!」

 

 マヘリアに頭を撫でられて、ニコルは嫌そうな顔を作りながら、悪い気はしなかった。

 

「マヘリアさん、その後も驚きの連続だったんだ。ニコルは、サイコミュを使いこなした」

 

「えっ!!てーと、ニコルってニュータイプ!!何も考えてないし、そんな才能あるように見えないけど…………」

 

 マヘリアは目を丸くして、驚きを隠しきれないのが表情から伝わってくる。

 

「凄い事なんだが、あまりチヤホヤしないでくれよ。こいつは、付け上がる性格みたいだからな」

 

 レジアとマヘリアは不貞腐れるニコルを見て、思わず笑いそうになる。

 

「だいじょーぶですよ!!私がニコルに優しくする訳ないです。」

 

「……………キミたち、大人が子供で遊ぶんじゃない」

 

 ニコルの意外な冷静の返答に、2人は堪え切れずに爆笑した。

 

「それで今度の作戦の内容、小耳に挟んだんですが……………」

 

 ひとしきり笑い終えるとマヘリアは真顔に戻り、レジアに聞いた。

 

「ああ。オレ達、リガ・ミリティアの旗艦になる艦を取りに行く。戦力充分とはいかないが、新型のイージに調整中のスナイパー。それにオレのトライバード。敵に情報をそれほど取られてない機体ばかりだ。それに、サナリィで踏ん張ってくれてる人達もいる」

 

 「私のイージも届いたって聞きました。次はもっと上手くやれます!!」

 

 レジアの言葉に、マヘリアは力強く頷く。

 

「戦力が少ないのは分かるけど、またマヘリアさんを出撃させるのか?怪我したばかりだし、あんな恐い思いした後なのに…………」

 

 ニコルはマヘリアの体調も心配だったが、それ以上に精神的な部分が気になっていた。

 

「あら、心配してくれるんだ♪でも平気よ。頭数の少ないリガ・ミリティアに入った時から、連戦は覚悟してるから♪」

 

「それに、素人が正規パイロットの心配なんてするんじゃない。失礼だぞ!!」

 

「ヘイヘイ」とレジアの言葉を軽く受け流したニコルは、正面から歩いてくるマイとクレナに気付くと、話の矛先を変える為に2人に近付く。

 

「もーっ!!頭にきちゃう!!なんで出撃して5秒で墜とされるかなぁ!!せっかくレジアさんに操縦教わったのに!!」

 

 近付いた瞬間にマイの機嫌が悪い事に気付き、ニコルは少し後悔をした。

 

「はっはっは!!そんな急には上達しないさ。オレとは違って、キミはニュータイプじゃないしね。簡単に成長されたんじゃ、可愛げないよ」

 

 そう言い終わった瞬間にレジアからの冷たい視線を感じ、ニコルは冷や汗をかきながら、わざとらしく咳をする。

 

「まぁ、ニコルの言っている事は置いといて…………だ。シュミレーターでも、墜とされる時は恐怖を感じるだろ?その恐怖が、人を人のままでいさせてくれる。自分の命も、敵の命も、無闇に奪ってはいけないと思い出させてくれる…………」

 

 最後の言葉は、レジアが自分自身に言ったようにも聞こえたが、マイも共感し頷いた。

 

「戦争だからって、敵だからって、命を軽く考えちゃダメですよねっ!!」

 

 マイはグッと握りこぶしを作り、自分の言葉に力を込める。

 

 その様子を見ていたマヘリアは、マイと一緒にいたクレナに気付き、本日2回目の驚きの表情を見せた。

 

「クレナ!!久しぶり!!私のイージ持って来てくれたの、クレナだったんだね!!」

 

 その声で、クレナもマヘリアの存在に気が付く。

 

「マヘリアさん。お久し振りです。お怪我は大丈夫ですか?」

 

「って、相変わらず真面目だね。もう少し、表情柔らかくした方がイイわよー」

 

 マヘリアはクレナの頬の肉をつまみ、クニクニと動かし始めた。

 

 「けど、クレナと一緒に戦場に出るのは、あの時以来になるんだね………」

 

 マヘリアは遠い目をして、以前クレナと共に連邦のモビルスーツ、ジャベリンの部隊で戦っていた時の事を思い出す。

 

 「アメリアでのガチ党との戦い……………ですね」

 

 クレナは静かにそう言うと、悲しい事を思い出したのか、少し俯いた。

 

 「部隊で生き残ったの、私とクレナだけ……………だったもんね」

 

 マヘリアからも、いつもの明るさが消えている。

 

 「その戦闘で、何かあったのか?」

 

 レジアの問いに、クレナが頷いてから口を開いた。

 

「あの時…………部隊の背後から、急に敵に襲われたんです。最初に射たれたビームが、私の機体のコクピットのすぐ横を通過して…………そのビームが隊長のモビルスーツに当たって爆発して…………その衝撃で、私は気を失ってしまったんです。マヘリアさんに助けてもらって、戦闘が終わった後にリガ・ミリティアの部隊に保護されたんです」

 

「助けたって言うか…………あの奇襲を受けて生き残ったのは、私とクレナだけ。あんな簡単に奇襲を許しちゃうなんて…………今でも腑に落ちない!!」

 

 マヘリアは納得がいかないといった表情で、唇を噛み締める。

 

 「奇襲か……………しかし、ジャベリンの部隊相手に、奇襲をしかける意味があったのか…………」

 

 レジアは考え込んだが、結局は何故に奇襲を受けたのか…………その答えは出なかった…………


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