「お前こそ、さっきの威勢はどうしたのさっ!!まだ諦めるんじゃない!!あそこにジェムズガンが1機倒れてる。あれを動かすよ!!」
エステルが見つけたのは、岩に寄り掛かるように座る1機のジェムズガンだった。
機体に損傷は見受けられない…………レジアは涙を拭うと、藁にもすがる思いで、全速力でそのジェムズガンに向けて走り出す。
このまま、何もしないで死にたくない。
そんな気持ちが、レジアの胸に渦巻いていた。
必死の思いで辿り着いたジェムズガンは、コクピットハッチが開き、パイロットがいない。
レジアはジェムズガンに乗り込むと、操縦席がやけに体に馴染む事に気付いた。
「この機体………まさか………」
ジェムズガンのモニターで辺りを確認すると、大地に倒れ血を流している1人の男を発見する。
「やっぱり……………ガスフィーさん………………」
やけに馴染む操縦席……………最悪な予想が外れていてくれと、レジアは願っていた。
しかし、その願いは脆くも崩れる。
よく見ると、ガスフィーの傷はモビルスーツ戦で受けたというより、殴られて出来た傷のように見える。
無理矢理モビルスーツから下ろされ、大人数で袋叩きにあったのかもしれない。
最悪の状態で、その願いを崩された…………戦争を楽しんでるかのように見えるそのやり方に、レジアの心が怒りの炎に包まれた。
「ガスフィーさん…………母さんとオレを守ってくれて……………ありがとう………………そして、ジェムズガンを残しておいてくれて、ありがとう……………」
レジアは瞳から流れる一筋の液体を、徐に拭い取る。
「ガスフィーさん、残してくれたジェムズガン…………借りるぜ……………レジア・アグナール!!大切な人達の心を…………意思を繋げる為に出撃する!!」
レジアは損傷したジェムズガンで、5機のラングの真ん中に向けて飛び込んで行く!!
「あの馬鹿!!なんでラングに突っ込むんだ!!私は、あの機体で逃げるつもりだったのに!!」
5機のラングに飛び込んでいくレジアの操るジェムズガンを見送りながら、エステルは頭を抱えた。
「何か………………考えでもあるのかしら?」
ミューラも唖然として、ジェムズガンに視線を走らせる。
「どんな考えがあっても、無謀過ぎる!!連邦のベテランパイロットですら、ジェムズガンでラング1機でも堕とせれば大殊勲なんだぞ!!それを5機相手に………」
エステルは声を張って言うが、ジェムズガンのコクピットまで届く筈もない。
そんな2人の絶望の気持ちを余所に、レジアはジェムズガンのバーニアを全快にしてラングに突っ込む!!
「まだいたか!!だが、ジェムズガンごとき何機いても怖くないんだよ!!」
サナリィの技術者の乗っていたジェムズガンに突き刺したビームサーベルを抜きながら、レジア機に気付いたラングが臨戦態勢をとる。
「うおおおぉぉぉ!!」
ラングのパイロット達に、油断もあったのだろう。
今までジェムズガンに脅威を感じていなかったイエロージャケットのパイロット達は、レジアの操るジェムズガンに対しラング1機で応戦した。
その結果………………
突き出されたラングのビームサーベルをあっさり躱したレジアの操るジェムズガンは、ラングのコクピットをビームライフルで叩き付ける。
その一撃でラングのコクピットは凹み、土埃を上げながら、そのまま地面に倒れた。
「このジェムズガン………………今までと違うぞ!!」
とっさに距離をとろうとするラングの内の1機に狙いを定め、レジアは素早くビームライフルを放つ!!
ラングのビームシールドのフォローしきれない足下にピンポイントにビームが直撃し、バランスを崩したラングのコクピットに、正確な射撃のビームが貫いた!!