サナリィは、アメリアより戦火が拡大しているように見える。
戦場に出ているラングの数も、アメリアより多く感じ。
レジア達はミノフスキー・ドライブや、ガチ党に奪われたくないサナリィの機密を守る為、コロニーに降り立つ!!
「なんて事だ!!連邦は完全にガチ党に踊らせれてる!!アメリアに連邦軍を進行させておいて、その裏でサナリィ進攻…………本命はコッチかっ!!」
ガスフィーは舌打ちしながら、戦場と化したサナリィを悔しそうな表情で睨みつける。
「ガスフィーさん。連邦の本部にでも連絡して、サナリィに援軍を送ってもらう訳にはいかないのか?」
「そもそも、連邦がサナリィを護る義務がない。独立国家を気取るガチ党の制圧目的でリガ・ミリティアと共闘してるだけだ。サナリィ進攻を信じて貰えたとしても、アメリアが戦場になっている以上、兵を分散する言事はないだろう…………」
ガスフィーの顔には、悔しさと呆れた表情が混在し、険しく…………眉間には皺が深くなる。
「レジア、ガスフィーさんの言う通り、連邦が民間の軍事会社…………モビルスーツの開発している会社をメリットもなく助ける筈が無いわ…………そもそも、今の連邦軍に、事態を把握している人が何人いるか…………」
その言葉に、面目ない…………そんな感じで頭を掻くガスフィーにレイナが気付き、手を合わせながら頭を下げる。
「レイナさん……………連邦の腐敗は事実ですので…………しかし、こうもガチ党に好きにやらせるとは…………」
若いレジアには、人が傷ついていく戦場で、助けに来ないという選択をする地球連邦が理解出来なかった。
「連邦は人の命をなんだと思ってんだ!!でも、連邦がそんななら、なんでカモフラージュまで使ってサナリィを襲う必要がある?ガチ党にとって、サナリィはそんなに邪魔なのか?」
「いいえ………………サナリィが最新のモビルスーツを造る技術を持ってるからだわ。平和に慣れた連邦軍といっても、物量では圧倒的に連邦が有利でしょ?ガチ党は、量を質でカバーするつもりなんだわ」
首を傾げるレジアに、レイナは厳しい顔で……………緊迫した声で答えた。
母からはあまり聞かない、その緊迫した声に、レジアはもちろんガスフィーも、事態は急を要すると感じる。
「つまりガチ党は、連邦相手に……………地球を相手に戦争を仕掛けるつもりなのか?ただのコロニー内の一国家が……………そんな馬鹿な話…………」
ガスフィーをジェムズガンの傍で待機させ、2人は飛び回るラングに見付からないように体を低くして歩きながら、レジアは信じられない思いと、現状のギャップに危機感を強く持った。
(けど、モビルスーツを作らせるだけなら、ここまでモビルスーツを投入して制圧をかけるか?何か…………まだ何かある気がする)
そう思うと、胸のモヤモヤは更に大きくなっていき、レジアは不安に掻き立てられる。
サナリィの研究所・技術者達を強制的に接収して、造らせるのはモビルスーツだけではない気がしたからだ。
ドオオオォォン!!
突然、近くに見える空高く聳えた研究所の5階部分が爆発し、レジアの思考は爆発音と共に中断される。
「あそこは、ミューラやゲルダのラボがあるフロアだわ!!やっぱり…………目的はミノフスキー・ドライブ!!皆、無事でいて……………」
レイナはその爆発で動転したのか、それまでの慎重な行動が嘘のように、爆発のあった建物に走り出してしまった。
「母さん!!まぢかよ…………ガスフィーさん!!援護頼む!!」
レジアは母の後を追いながら、ガスフィーに目と声で合図を出す。
レジアのサインを見たガスフィーは、頷くと隠れて宇宙船から降ろしたジェムズガンに乗り込む。
「奴ら、連邦はサナリィ進攻に気付いてないと思ってるだろう。ジェムズガンの姿を見せるだけで、引き付けられる筈だ!!」
ジェムズガンに乗り込んだガスフィーは、爆発のあった建物の逆側からラングの視界に入るように機体を動かす。
「ん?ジェムズガンがコロニー内に入って来てるぞ!!連邦軍に、我々の作戦がバレたか確認してくれ!!オレはゴミを掃除する!!」
ラングのパイロットはそう言うと、ガスフィーの搭乗するジェムズガンに迫る!!
「このまま引き付けられるか……………ラング1体ならどうにかなる!!レイナさん、早くしてくれ!!」
ガスフィーはビームシールドを巧に操り、攻撃より防御を優先させながら、少しずつレジア達から離れていく。
「ガスフィーさん、すまない!!母さんはっ?」
母を見失なったレジアは、レイナが入っていったであろう爆発した建物の中に急いだ。
建物の中は電気が切れ、破れたガラスの窓から薄光が差し込む程度であり、火薬の臭いが鼻についた。
つまり、ガチ党の軍隊に押し入られた…………建物が爆発した時点で分かっていたが、現実を突きつけられると鼓動が高鳴る。
ダダダダッ!!
上の方からは銃声も聞こえ、緊迫した空気かレジアの周りを流れている。
(くそっ!!何か嫌な感じがするぜ!!母さん、無事でいてくれ!!)
レジアは祈りながら、しかし慎重に上の階に歩みを進める。
銃撃の振動が……………その音が近づくにつれ、レジアの鼓動は否応なく高鳴りを増していく。
悲劇に足を踏み入れていく………………そんな嫌な感じが、レジアに纏わり付いていた…………