ジェムズガンが建物を破壊した時に、その欠片がレイナの頭に当たったのだろう……………大小様々な瓦礫が、そこら中に落ちている。
「母さん!!まぢぃ、頭に何か当たったな!!何とか応急処置だけはしないと!!まったく、今日は何て日なんだ!!」
気は焦りながらもレジアは冷静であり、気を失っている母を抱え上げると、倒れているジェムズガンに向かって走り出す。
(確か、モビルスーツのパイロットは止血剤か何か持ってる筈だ。応急措置ぐらいなら何とか……………)
ジェムズガンの側まで来たレジアは母を地面に横たえると、ジェムズガンのパイロットに訴えもせずにコクピット付近までよじ登り、手動でハッチを開く。
相変わらずの異音は続いているにも関わらず、ジェムズガンはピクリとも動かず、また機体からパイロットが逃げ出す事もなかったので、恐らく気を失っているんだろうと思ったからだ。
案の定パイロットは意識がなく、顔を横に向けてシートにもたれ掛かっている。
「おい、あんた大丈夫か?ってダメか、反応がねぇ」
身体を揺すってみたり、頬をペチペチ叩いてみるが、全く反応がない。
脈はしっかりしていた為死んでは無さそうだが、すぐに意識が回復しなそうだと感じたレジアは、ノーマルスーツのポケットから救急治療セットを見つけると、パイロットをジェムズガンから下ろしレイナの横に寝かせた。
レイナの頭の傷に止血剤を降り掛け、血液の流出が無くなった事を確認してからレジアはコクピットに他の医療器具が無いか探しに戻る。
止血剤を掛けただけでは不安なので、傷口にガーゼか包帯を巻きたかったからだ。
「ねぇなぁ……………連邦、こんなとこケチんなよ………………」
ブツブツ言いながら探すレジアは、自ら落としたジェムズガンを確認する為にラングが近付いている事に気付いていなかった……………
「ガスフィー!!聞こえるか!!無事なら応答しろ!!」
ジェムズガンのコクピットから、突然声が発せられる。
「うをっ!!なんだ、通信かよ……………ビックリさせやがって…………」
コクピット内で作業していたレジアは一瞬身体を硬直させたが、すぐに元に戻り包帯を探そうとした。
が…………その一瞬が、レジアに周囲を確認する時間を与える。
「おいおい、なんでコッチに近付いてくるかな!!あのジェムズガン、ラングを引き付けて来てんじゃねーか!!」
レジアの目でも認識出来るぐらいの距離で、ジェムズガンがラングにビームサーベルで近接戦闘を仕掛け始めていた。
そのジェムズガンは、落ちた僚機を助けようと思ったに違いない…………しかし性能の差は歴然で、足止めにすらならず、遊ばれるように翻弄されている。
そして、その戦闘は確実にレジア達に近付いてくる…………
「ガスフィー、無事なら援護してくれ!!このままじゃ!!」
恐らく、ラングと戦闘しているジェムズガンからの声であろう。
切羽詰まった声が、レジアの乗っているジェムズガンのコクピットに響き渡る。
「だから、オレはガスフィーじゃないっての!!お前がコッチに寄って来たら、そのガスフィーさんも、母さんも死んじまうんだよ!!」
地面に横たわるレイナと、ガスフィーと呼ばれている連邦の兵士をレジアは一度確認し、意を決してコクピットのハッチを閉めた。
(とりあえずジェムズガンを動かさないと、2人とも戦闘の巻き添えになる。親父、母さんを守る為だ。オレの事もついでに護ってくれよ…………)
モニターが活きてる事を確認し、損傷箇所を手早くチェックしたレジアは、操縦管を握り締める。
(サナリィの研究所で、ガキの頃何回か操縦させてもらってる。やれるって信じるんだ)
レジアの意志に応え、異音を放ちながらもジェムズガンは再起動する。