機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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ラゲーン侵攻18

 

「木星の方角から戦艦! 本艦を取り囲む様に動いています! 数……8隻……」

 

 絶望感を孕んだニーナの声が、ブリッジに響く。

 

「8隻? 随分と数を準備したモノね。あの宇宙細菌には、それだけの秘匿性があるという事……ニコルとリファリアに出撃準備を急がせて! 囲まれる前に対応しないと面倒よ!」

 

 スフィアは艦長席に滑り込むと、モニターを見ながら指示を出す。

 

 モニターに映し出される見た事の無い戦艦……ザンスカールでもベスパののでも無い様に見える。

 

「艦長、敵は木星帝国の残党で間違いなさそうだな。木星帝国の残党は、宇宙海賊や独立部隊として活動している奴達もいる。帝国が地球進攻で忙しい今、木星の連中を使っているのかもしれん」

 

「ええ……木星帝国の人達が、全員ズガン艦隊に入隊している訳じゃない……でも、残党と言われる人達が8隻も戦艦を用意出来るのかしら?」

 

 スフィアの疑問に、リファリアも同意し頷く。

 

「帝国直属の部隊で無いにしろ、帝国から資金や物資の援助を受けているのは間違い無いのだろうな。だとすれば、侮れない相手だ」

 

 リファリアはスフィアの座る艦長席を軽く叩くと、モビルスーツ・デッキに向かって動き出した。

 

 モビルスーツ・デッキでは、ニコルが既にダブルバード・ガンダムのコクピットに収まっている。

 

「リファリアさん、遅いよ! 先に出ちゃいますよ!」

 

 モビルスーツ・デッキに響き渡るニコルの声を聞き、リファリアはダブルバード・ガンダムに視線を向けた。

 

「ニコル、用心しろよ。敵は木星の連中の可能性が高い。サイキッカーがパイロットの可能性もある」

 

「大丈夫、オレとダブルバードなら……やれるさ! リファリアさんも、急いで下さい!」

 

 ニコルはハッチを閉めると、出撃の準備を開始する。

 

 その様子を見ながら、リファリアはマグナ・マーレイ・ツヴァイのコクピットに向けて飛んで行く。

 

「リファリアさん、マグナ・マーレイでいいんですか? F90Wのモデファイは終わっているんじゃ……」

 

「アレは切り札さ。それに、今の私では扱いきれるか分からんよ。ハッチ、閉めるぞ」

 

 メカニックがハッチモビルスーツから離れた事を確認すると、リファリアはマグナ・マーレイのハッチを閉じる。

 

「ウォーバードか……未完成のミノフスキー・ドライブのシステムだが、アレも破壊しなきゃならんな……」

 

 ダブルバード・ガンダムのバーニアが噴射する姿を後ろから見たリファリアは、射出口にマグナ・マーレイ・ツヴァイを乗せた。

 

「リファリアさん……2機だけで大丈夫なんでしょうか? ニコルは心配ないって飛び出してしまいましたけど……」

 

「なんとかするさ。それに……この程度の敵は圧倒してやらないと、話にならん……」

 

 リファリアの言葉の真意が分からず、ニーナは首を横にする。

 

「気にするな。リファリア・アースバリ、出るぞ」

 

 ミリティアン・ヴァヴを飛び出したマグナ・マーレイ・ツヴァイは、迫って来たアラナ・バタラにビームを浴びせた。

 

 爆発するモビルスーツには目もくれず、次の機体に照準を付ける。

 

「バタラ・タイプとクァバーゼ・タイプのモビルスーツ……やはり、木星の息のかかった連中で間違いないな。旧式のモビルスーツを運用しているという事は……新型の開発に資金を裂いているのか、本当に金が無いか……いや、帝国の金が流れているなら、金が無いという事はないか」

 

 冷静にスネークハンドの攻撃を躱したマグナ・マーレイ・ツヴァイは、インコムを射出した。

 

「悪いが、オレにはニコル程の余裕が無いんでな。やらせてもらうぞ」

 

 インコムによるオールレンジ攻撃が、クァバーゼと周囲にいたアラナ・バタラを巻き込んでいく。

 

 的確にコクピットを撃ち抜くビームは、木星のモビルスーツを短時間で無効可していった。

 

 それでも、戦艦8隻から次々に出撃してくるモビルスーツは数が減っている事を感じさせない。

 

「ニコル、せめてバーニアを狙え。機体を損傷させるだけでは、艦に戻ってしまう。おそらく敵は、かなりの数のモビルスーツを保有している。パイロットがモビルスーツを乗り換えて、直ぐに出てくるぞ」

 

「ダメだ! バーニアを破壊すれば、爆発する危険性が高くなる! それじゃ、ダメなんだ!」

 

 タブルバード・ガンダムから放たれるビームは、確実に木星のモビルスーツ達の手足や頭を刈り取っていく。

 

 しかしリファリアの言う通り、そのまま戦艦に生還出来るモビルスーツが殆どであり、次が出てくる。

 

「お前が倒しきれなかった敵は、私が殺すだけだ。何の意味も無いぞ」

 

「意味はある筈だ! いずれ、モビルスーツは無くなる! 出撃できるモビルスーツが無くなれば、引くしかなくなる! そこまで追い詰められれば……一人でも多くの人が助かれば、その行動に意味はあるんだ!」

 

 叫ぶニコルの駆るダブルバード・ガンダムは、Vの光を残し加速していく。

 

 閃光と化したダブルバード・ガンダムは、一瞬で3機の首を斬り裂いた。

 

「ミノフスキー・ドライブは無限のエネルギーを供給する。だが、身体の方が持たんぞ」

 

 ダブルバード・ガンダムと、マグナ・マーレイ・ツヴァイは、無傷のまま戦場を駆け抜ける。

 

 善戦するニコルとリファリアだったが、確実に追い詰められていく。

 

 何故か……

 

 この戦いは、ミリティアン・ヴァヴを護る為の防衛戦である。

 

 モビルスーツだけの戦いであれば、圧倒していたかもしれない。

 

 しかし、その包囲網は確実に狭められていた。

 

 クァバーゼのスネークハンドがミリティアン・ヴァヴの船体を焼いてしまう程度にまで……

 


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