機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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ラゲーン侵攻12

「リガ・ミリティアの機体だと! どこから来た?」

 

「本艦の後方! ダミーで隠れていた模様です!」

 

 カリスト級巡洋艦のブリッジで、ザンスカールの将校が驚きを隠せずに叫んだ。

 

 全く予期していなかった攻撃……リガ・ミリティアは、ベスパの地球侵攻作戦を阻止する為に動いていると思っていた。

 

 リガ・ミリティアから見たら緊急時の状況で、ブルー3の宙域にいる筈がない。

 

「我々がエンジェル・ハイロゥのパーツを運んでいる事に気付いているのか? どこから情報が漏れた? いや……そんな事より、迎撃だ! モビルスーツ隊、出撃!」

 

「間に合いません!」

 

 管制官の声が終わると同時に、ブリッジが大きな横揺れに襲われる。

 

「推進機関に直撃! 第2波……来ます!」

 

 ビームの束が、ブリッジの前方に雨の様に降り注ぐ。

 

 上下対称に設定されたカタパルトデッキがビームに晒され、激しい音を立てて爆発する。

 

「くそっ……遊んでいるのか! 残っている兵装で一矢報いろ! いや……脱出! 脱出だっ!」

 

 カタパルトが使えない為、モビルスーツ・デッキから直接出撃していくラング……

 

 そのラングの部隊が次々とダブルバード・ガンダムに破壊されていく光景を見て、艦長は反撃を諦めた。

 

「艦長、エンジェル・ハイロゥのパーツはどうします? アレを放棄したら、我々の首が確実に落ちます!」

 

「知るかっ! このまま戦って、あの化け物に勝てるのか? 奴が止めを刺しに来る前に逃げるんだ! 代わりのパーツは、木星の連中に運ばせればいい!」

 

 モニターには、ダブルバード・ガンダムがラングを簡単に撃墜する光景が映し出されている。

 

 それと同時に、ミリティアン・ヴァヴに向けて回頭するカリストの姿が見えた。

 

「馬鹿が! ブルー3の部隊に援護を要請すれば、本国にリガ・ミリティアの動きを伝えられるというのに……こうミノフスキー濃度が濃くては、何も出来ん!」

 

 悪態をついた艦長は、そのまま脱出艇へと急いだ……

 

 

「奇襲で一隻は墜とした! 次は?」

 

 ニコルは爆発しない程度に破壊したカリストと、そのカリストから出て来たラングが動けなくなった事を確認し、次の目標を確認する。

 

 ダブルバード・ガンダムに向かって来るカリストが一隻、もう一隻はミリティアン・ヴァヴに向かっていた。

 

 ダブルバード・ガンダムが正対するカリストは、既にラングを展開中し臨戦態勢をとっている。

 

「あっちは、リファリアさんに任せるしかない! こっちも手早く済ませないと、厄介な事になる!」

 

 ニコルはエボリューション・ファンネルを飛ばし、サイコミュの感覚に身を委ねた。

 

 ラングの動きが、頭の中で感覚的に再生されていく。

 

「そこだ! ファンネル!」

 

 一瞬……その一瞬で、ラング8機は同時に破壊され、戦闘不能に陥った。

 

 残ったラングも、ダブルバード・ガンダムから直接放たれるビームによって、次々と各部を破壊されていく。

 

 その間も抵抗を続けていたカリストだったが、ダブル・バスター・ライフルの高エネルギーのビームによって推進機関を破壊されて動きが止まる。

 

「終わった! 次は、リファリアさんのフォローを……」

 

 ダブルバード・ガンダムを転身させたニコルの脳裏に、何か感じるモノがあった。

 

「そこ……なんだ?」

 

 ダブルバード・ガンダムの手が伸び、直線的に動いている物体を掴んだ。

 

 掴まれた飛行機の様な形をした物体……それは、先に墜とされたカリストの艦長達が乗る脱出艇だった……

 

 

「あれがニコルの戦い方か。戦場では、甘い……と言わざるを得ないが、木星から来た戦艦であれば、捕獲できれば色々と分かるかもしれんな。こちらに、そこまでの余裕はないが……」

 

 リファリアお手製の自動追尾ビームシールドとIフィールドに守られたマグナ・マーレイ・ツヴァイの防御を、ビームライフルが主兵装のラングが抜ける筈もなく、着実に数が減らされていく。

 

 ニコルの戦いとは違い、効率良く敵に止めを刺していくリファリアの戦いは、敵に逃げる隙も与えない。

 

 隙を作ったら、コクピットに無慈悲な一撃が加えられて終わってしまう。

 

 カリストも、また然りだった。

 

 弾幕が薄くなった瞬間、ブリッジにランチャーが直撃する。

 

 結局、ミリティアン・ヴァヴは戦闘に参加する事もなく終わってしまった。

 

 残ったのは、漂うラングの残骸と、カリスト3隻……そして脱出艇……

 

 カリストの運んでいた物と、カリストの艦長への尋問で、ニコル達は驚愕の事実を知る事になるのだった……


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