機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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ラゲーン侵攻7

「久しぶりだな。とは言え、この戦艦のモビルスーツ・デッキが稼動しているのは始めて見るが……」

 

ガランとしたミリティアン・ヴァヴのモビルスーツ・デッキに黒いマグナ・マーレイ・ツヴァイが収容され、コクピットから仮面を被った男が現れた。

 

「手を挙げて、そのまま下りて来なさい! 妙な動きをしたら、撃ちますよ!」

 

モビルスーツ・デッキに、艦長であるスフィアの声が響く。

 

「シークレット1も、随分と戦艦らしくなったモノだな。サナリィに隠していた頃より、寂しくはなってしまったが……」

 

機械音声のような、無機質にも聞こえる声を出したリファリアは、マグナ・マーレイ・ツヴァイの装甲を蹴って無重力の空間に身を投げる。

 

ビルスーツ・デッキに降り立ったリファリアは、銃を構えるミリティアン・ヴァヴのクルーに囲まれた。

 

「ちょっと艦長! マデアさんは、黒いマグナ・マーレイのパイロットは以前の仲間だって言ってた。いきなり、敵対感丸出しにしなくてもいいんじゃない?」

 

「ニコル、この男が昔の仲間だったとして、見覚えでもあるの? 私達は今、戦争をしている。一つの判断のミスが、大切な人達の命を脅かしてしまう可能性だってある。悪いけど、直ぐに信用なんて出来ないわ」

 

スフィアは銃口をリファリアに向けたまま、その距離を詰める。

 

「だろうな。私がリファリア・アースバリだったとして、この見てくれだ。直ぐに信用してもらおうとは思っていない。だが、こんな事をしている時間も無いだろ? 我が盟友のマデアは、マリアと地球を救おうとしている。その点においては、協力出来ると思うが?」

 

「我々は、ザンスカールのマリアを救う必要は無いんだが? 地球を救うというなら、ベスパを止める事が優先だろ?」

 

スフィアの言葉に、リファリアは改めてモビルスーツ・デッキを見渡す。

 

「そうか……それで、モビルスーツ隊を地上に降ろしたか。いい判断だ。量産型のトライバードを失っては、リガ・ミリティアの戦いは苦しくなる。だが、このままでは駄目だ。だから、私がここに来た」

 

リファリアはそう言うと、右腕を挙げた状態で内ポケットから四つ折にされた紙を取り出し、スフィアの方に飛ばした。

 

「ダブルバード・ガンダム……サナリィとアナハイムの技術者が協力しても、まだ完成には至っていない。ダブルバードに搭載されているミノフスキー・ドライブ・ユニットの過剰粒子排出用のパーツが長すぎて、オールド・タイプでは扱えない。その欠点をどう改善するかで、今後の未来が変わるぞ……」

 

リファリアの話を聞きながら、スフィアは飛んできた紙を開いて目を通す。

 

「それで……これは? 私は技術屋じゃないから、よく分からないが……この設計図面を見ると、コア・ファイターにミノフスキー・ドライブ・ユニットを搭載させて、ヴィクトリー・タイプの換装パーツと互換性を持たせようって事か? バカバカしい……ザンスカールと手を組んだあなたに心配されるような事じゃない」

 

「そうか……だが、私はマデアという男と手を組んでいるだけで、ザンスカールに尻尾を振ってるつもりはない。それに、ミノフスキー・ドライブ・ユニットの完成品が出来たとして、それを再びダブルバードに搭載させるとなると、莫大な費用がかかる。そして、ミノフスキー・ドライブ搭載型の新型を造る余裕はリガ・ミリティアには無い筈だ」

 

確かに、ダブルバード・ガンダムを完成させるのに莫大な費用がかかったのは事実だ。

 

ミノフスキー・ドライブにエボリューション・ファンネル……

 

新たな技術の開発には、それなりの金額が必要になる。

 

「そもそも、ダブルバードはニュータイプ専用機だろう? ニコル以外のパイロットが使えないのでは話にならん。量産型のトライバードにミノフスキー・ドライブ・ユニット付きのコア・ファイターをドッキングさそるとなると、機体剛性の見直しは必要になるがな……」

 

そう言うと、リファリアはもう一枚の紙をスフィアに向けて投げる。

 

「それをミューラに転送してくれ。私はミノフスキー・ドライブ・ユニットを3つにする事で過剰粒子の放出時の機体バランスを安定させたが、そのデータがあれば、安定した過剰粒子の排出が出来る機構を造れるだろう。しかし、地球のリガ・ミリティアのファクトリーが破壊されて、量産型トライバードのパーツが破壊されたら意味が無い。ファクトリーを守る為に、ガンイージ隊を行かせたのだろう?」

 

「そう……分かったわ。正直、シュラク隊を地球に降ろしたせいでモビルスーツもパイロットも足りない。このデータが本物なら、あなたを信用しましょう。ニーナ、このメモの画像データを月のミューラさんに送っておいて」

 

リファリアから受けとった二枚の紙をニーナに渡すと、スフィアは銃を下ろした。

 

「それで、あなたは私達に何をして欲しいのかしら? 無償でミノフスキー・ドライブのデータを持ってきた訳じゃないでしょ?」

 

「ああ……我々の今の目的は、ザンスカール帝国が間違った方向に行かないように楔を打つ事にある。その為にも、ミノフスキー・ドライブのデータはザンスカールに渡してはいけない。ザンスカールが……ベスパがミノフスキー・ドライブ搭載機を使い始めたら、拮抗している状況が一気に崩れる。その為にも、我々が今まで使っていた基地を破壊してほしい。ミノフスキー・ドライブに繋がる痕跡は、全て消しておきたいんだ」

 

リファリアは、窓の外に視線を移す。

 

地球から発する温かい青が、道を示しているように感じていた……

 

 


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