「ブルー3、聞こえているな? こちら、マデアだ! そのラングのパイロットは、タシロの人形の可能性がある。そして、クローン計画は中止となった。その機体を保護するつもりならば、悪いがアインス・リングは墜とさせてもらうぞ! クローンは、味方すら殺す可能性がある!」
「それを少佐が言いますか? たった今、アインス・リングが1機墜とされたんですがね!」
ブルー3からの通信にマデアは笑うと、モニター越しにビームに貫かれたアインス・リングを見る。
「オレは、敵以外を殺しちゃいないさ。ブルー3防衛隊がタシロの言いなりになっていなければ、手を出す気もない。だが……」
「少佐、ブルー3で行っている計画……天使の輪計画は、マリア・カウンター主導で行っている計画です。我々が少佐と敵対する理由はない。成る程……アインス・リングの推進システムだけを破壊したといったところですか。流石は少佐です……が、手荒な事は止めて頂きたい。しかし、我々としても保護を求めている友軍機を無視する訳にはいきません。ラングのパイロットは、保護した後に少佐に引き渡す……それで、如何ですかな?」
「分かった……ならば、邪魔な機体は潰しておく!」
ラングに向かっていたザンスバインは、赤いYの文字を残して急激に反転した。
「あのスピードで方向を変えた? こっちに向かって来る……ならっ!」
ニコルはミノフスキー・ドライブによって加速するダブルバード・ガンダムの中でも、冷静にザンスバインの動きを読む。
赤と黄色の閃光が交錯する……ビームサーベルが重なり合い、その反動で弾けるが、2つの翼は直ぐに体勢を整えて加速する。
「ニコルっ!」
「マデアさんっ! 邪魔をしないで下さい!」
ビームサーベルが、再びぶつかり合う。
ビームサーベルから火花でも散っているかのような……動から静へ……今度は力比べをしているかのように動きが止まる。
「ニコル、あのラングのパイロットはクローンだな? 何を考えている?」
「ブルー3で、人の感情を……心を奪う兵器の開発をしているんだ! その事実を探る為、コロニーに潜入しなきゃならない。コロニーを破壊する事は簡単だけど、それじゃ駄目なんだ!」
「そうか……リガ・ミリティアも気付いたか……ニコル、ブルー3で建造中の兵器は、本来は女王マリアの考えを地球の人々に浸透させる事が目的だった。だが、その目的はタシロやカガチによって歪められようとしている。いや……最初から、地球進攻の……地球制圧の手段と計画されていたのかもしれない。マイさんを使った実験……あの研究の成果が、天使の輪に組み込まれている可能性は高い……」
ザンスバインはビームサーベルを振り抜いてダブルバード・ガンダムを後方に飛ばすと、直ぐにビームサーベルで追い撃ちをかけた。
その攻撃を、ダブルバード・ガンダムもビームサーベルで受け止める。
「マデアさん……あの時のデータ、調べてくれてたのか! 感情を奪われた人は、本心と……何も感じない心の狭間で葛藤する事になる! マイを見て分かった……その苦しみが。だから、絶対に止めなければいけないんだ!」
「そうだ! ザンスカールの……タシロやカガチの好きにさせてはいけない! 天使の輪は、マリアの考えを広める為だけの物の筈だった。だが、人の心を操るとなったら話は別だ。ニコル……クローンの事とブルー3の事は、オレに任せてくれないか? リガ・ミリティアには、やってもらいたい事もある」
マデアはそう言うと、ザンスバインをダブルバード・ガンダムの懐に潜り込ませた。
「マデアさん、ブルー3に近付いてる艦隊がある事は知ってる! なんとか時間を稼いでみるよ。それとクローンじゃなくて、クレナって名前があるんだ。ブルー3では、名前で呼んであげてよ!」
「ふっ、分かったよ。クレナだな。それから、リガ・ミリティアに保護してもらいたい人がいる。傷を負って仮面を被っているが、以前は君達の仲間だった男だ。黒のマグナ・マーレイに乗っている。頼んだぞ!」
マデアはザンスバインのバランスを乱しながら、ダブルバード・ガンダムから急速に離れていく。
そのザンスバインにニコルは数発ビームを放つと、ダブルバード・ガンダムを反転させてミノフスキー・ドライブを全開に羽ばたかせる。
「少佐、大丈夫ですか? ラングの回収は問題なく終わりました。少佐もコロニーに入って下さい」
「了解。リガ・ミリティアの新型……なかなかのパワーだ。少し油断をしてしまったよ。それと、この機体はミノフスキー・ドライブの完成型を搭載している特機だ。信用してない訳ではないが、コロニーの中に隠させてもらうぞ」
マデアはそう言うと、コロニーの中に入っていく。
ブルー3に近付くズガン艦隊……
そして、地球降下作戦も開始されようとしていた……