機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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宇宙の十字架

「人形! もっとプレッシャーかけなよ! そんなんじゃ、的になるよ!」

 

「人形、人形、煩いんだよ! 蝿みたいに飛びやがって……お前が邪魔なんだよ! 後ろから撃たれたくなかったら、とっとと消えな!」

 

 近接でタイタニア・リッテンフリッカ、遠距離からアネモ・ボレアス。

 

 6本のビームサーベルと、高出力のボレアス・キャノンがダブルバード・ガンダムを襲う。

 

 が……ビームサーベルはビームを纏ったファンネルに押し返され、ボレアス・キャノンは尽く躱される。

 

 回避しながらのバスターライフルの連射は、正確無比にアネモ・ボレアスの装甲を焼いていく。

 

「なんだ、このモビルスーツ! レジスタンス如きが開発できる代物じゃない! ファンネルだけで、私が抑え込まれてる! タシロ自慢のザンスパインより強いんじゃないの!」

 

 回転しながらタイタニア・リッテンフリッカのビームサーベルを弾くエボリューション・ファンネル……ダブルバード・ガンダム本体に相手にもされないアルテミスは、苛立ちを募らせる。

 

 タブルバード・ガンダムは……ニコルは、クレナを使ってレジアをボロボロにしたアネモ・ボレアスを狙っていた。

 

「こいつだけは……ここで墜とす! 人の命の灯を消す事に何も感じないのなら……もはや人じゃない!」

 

 叫んだニコルの意思を乗せたバスターライフルの一撃が、ついにボレアス・ベースを捉える。

 

「ちっ! このプレッシャー……増幅された私のサイコミュを超えている!」

 

 爆発するボレアス・ベースをパージしたアネモ・ボレアスは、バランスを失いながらもボレアス・キャノンを構えた。

 

「この一撃で……終わらせる!」

 

 ダブル・バスターライフルの照準を合わせ、トリガーを引こうとした時、ニコルの脳裏に言葉が響く。

 

「アーシィさん? この戦場にいるのか? けど……このパイロットだけは、ここで墜とさなきゃ!」

 

 ふたたび照準を合わせようとするニコルだったが、上空……ダブルバード・ガンダムの頭側から滝のように落ちてくる15本のビームの回避を余儀なくされた。

 

 そして、飛び込んできたアネモ・ノートスのビームサーベルを、ダブルバード・ガンダムはビームサーベルで受ける。

 

「アーシィさん! こいつだけは……討たせてくれ!」

 

「ニコル……クレナさんは戻ったわ。でも、レジアが……行ってあげて! 一刻を争うかもしれないの……この2人に追撃はさせない。私が責任をもって……必ず。私を信じて……きっと、レジアもニコルと話をしたい筈だから……」

 

 アーシィの言葉で、ニコルはトライバード・アサルトの状態を思い出す。

 

「あの損傷だ……レジアは重症なのか?」

 

「いえ……モビルスーツから出れないの。いつ爆発してもおかしくないモビルスーツの中にいる。だから……急いで、ニコル!」

 

 アーシィの切羽詰まった言葉に、ニコルの額から冷や汗が流れる。

 

 生かしておいても、良い事はない……それは分かっているが、こんな事をしている場合でもない……

 

「くそ……アーシィさん、ここは任せる! けど……あのパイロットだけは許せないんだ!」

 

「ニコル……分かっているわ。マリア様にも、今回の戦いの事は伝える。早く行ってあげて……」

 

 ニコルは頷くと、ミノフスキー・ドライブ・ユニットを展開して飛び去っていく。

 

「アンタ、マリア・カウンターのアーシィ・リレーンだよね? 逃がしてどーすんのよ? 3機でやれば、倒せたかもしれないのに」

 

「そうかしら? とても連携して戦っているとは思えなかったわ。そんな状態で、あのモビルスーツには勝てない。リガ・ミリティアのモビルスーツを爆発寸前で止めておいた。その機体の位置を教えてやったら、まんまと後退してくれた。こちらも態勢を整えるべきだろう」

 

 アーシィの声を聞きながら、アルテミスはシートに身体を沈ませて、大きく息を吐いた。

 

「ま……今からミノフスキー・ドライブ搭載型を追っても、追いつかない。それに、あの人形の行いを罰するチャンスでもあるしね。貴重な同型のクローンを殺すなんて……馬鹿なマネをしたもんだわ。ついでに、貴重な研究中のパーツまで破壊されたし……タシロの泣く姿でも拝めるかな?」

 

 ダブルバード・ガンダムに相手にされなかった怒りの矛先をファラにぶつけたアルテミスは、少し溜飲が下がり表情が柔らかくなる。

 

「では、一度戻りましょう。ファラ・グリフォン……クローンは、ズガン将軍にお預けします」

 

 アーシィはそう言うと、ダブルバード・ガンダムが飛び去った方角を見た。

 

「ニコル、レジアの思い……引き継いであげて。私も戦ってみせるわ。マリア・カウンターのアーシィ・リレーンとして……」

 

 そう呟くアーシィの瞳からは、涙が零れていた。

 


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