機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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操られし者30

 

「ティーヴァ、止まるな! 動け!」

 

 叫んだアーシィは、バックエンジンユニットに装備されるマルチプル・ビームランチャーをトライバード・アサルトに向けて放った。

 

 上空……宇宙に上下の概念はないが、トライバード・アサルトの頭側から降ってくるビームに、レジアは後退を余儀なくされる。

 

 それでも、振り抜いたビームサーベルはアネモ・ボレアスの右肩を焼く。

 

「当たらない……新型で戦っても、レジア・アグナールは墜とせないのか……それでも、母の為……マリア様の為に、倒さなければいけないんだ!」

 

 高速で動くトライバード・アサルトを追うバックエンジンユニットは、アーチ状から水平に近いフォルムに変形している。

 

 大推力スラスターによる機動力に加え、15門あるビームランチャーは時間差で偏向射撃をする事で的を絞らせない。

 

 疑似オールレンジ攻撃と言うべきか……

 

 モニター上では、トライバード・アサルトのパーツは飛び散っている様に見える。

 

 それでも……

 

 次の瞬間には、五体満足なトライバード・アサルトが復活してくるのだ。

 

 右肩を焼かれたアネモ・ボレアスも援護射撃をしているが、当たる気がしない。

 

「くそっ! 本当にオールドタイプなのか! このままじゃ……」

 

 焦るアーシィ……

 

 しかし、トライバード・アサルトのコクピットで操縦するレジアも、余裕な表情ではなかった。

 

 飛び散る汗を拭う事も出来ず、変則的に襲ってくる加速Gに意識を持っていかれそうになりながら、必死にトライバード・アサルトを操る。

 

 止まらないビームの嵐……Iフィールドでは防ぐ事が出来ないであろう高出力ビームが、変則的にトライバード・アサルトに降り注ぐ。

 

 ファンネルなら、とっくにエネルギー切れを起こしているだろう……

 

 だが、止まらない……

 

 放熱フィンでは逃がしきれない程の熱が、トライバード・アサルトの機体内部には溜まり始めていた。

 

「このままでは、トライバードもオレも持たない……」

 

「レジア、こっち!」

 

 コクピットに響くマヘリアの声に、レジアは無意識にガンイージの方へ機体を寄せる。

 

「量産機が射程に入った! 仲間ごと墜ちろ! レジア・アグナール!」

 

 ビームシールドを全開にしてトライバード・アサルトを守るように前に出たガンイージに狙いを定めて、放たれるビームランチャー……

 

 が、そうはならなかった。

 

 突然の爆発音の後に、バックエンジンユニットがバランスを崩す。

 

 確実にビームを当てようとして動きを固定したバックエンジンユニットに、ビームが直撃したのだ。

 

「ナイス、クレナ! レジア、一旦距離をとって体制を立て直すよ!」

 

 マヘリアのガンイージは無理矢理にトライバード・アサルトを押して、アネモ・シリーズから距離をとる。

 

 マヘリアのガンイージを囮役にして、バックエンジンユニットの動きを予測したクレナのガンイージがビームを放ったのだ。

 

「すまない、助かった!」

 

「レジア、私達はチームで戦っているのよ! 一人で突っ込み過ぎないで!」

 

「分かっている……だが……」

 

 マヘリアの言葉に頷いたレジアだったが、それ程の猶予もなかった。

 

 出来れば短期決戦で終わらせたい……

 

 アサルト・パーツで補った装甲は限界を向かえているのだろう……トライバード・アサルトのコクピットは、異常を知らせる警告音が鳴り響いている。

 

「レジアさん、私達は無理せずにいきましょう。新型の足止めでいいんですから……そして、皆を信じましょ。信頼出来る仲間達を……必ず、ビッグ・キャノンを破壊してくれる……だから私達は、この新型を足止めする。それだけです」

 

 クレナの静かな口調に、レジアの気持ちも落ち着いていく。

 

「そうだな……足止めだけだ……だが、それだけでも……」

 

 大きく溜息をついたレジアは、気持ちを入れ替える。

 

 攻撃を捨て、防御に徹する覚悟……

 

 しかし、その覚悟は尽く潰される事になる。

 

 ファラ・グリフォンの乗るリグ・グリフから放たれた高出力ビームが、レジア達に迫っていた……


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