機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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操られし者28

「流石はリガ・ミリティアのエース、レジア・アグナールと言ったところか。高出力のボレアス・キャノンでは照準が定められない。だが……そっちの二匹の蝿には当たるぞ!」

 

 アネモ・ボレアスが、ジェネレーターに直結した粒子加速器を展開する。

 

 両肩に輝くドーナツ・リング……20メートルはあろうロングバレルに、力が蓄えられていく。

 

 ロングバレル……ボレアス・キャノンの射線の先では、アネモ・ノートスのバックエンジンユニットから放たれるマルチプル・ビームランチャーの雨を回避する3機のモビルスーツがいる。

 

 ある程度の余裕を持って回避するトライバード・アサルトとは違い、2機のガンイージは余裕がない。

 

 とは言え、並のパイロットでは無線誘導式……ファンネルの様に動く砲台から放たれるビームの雨を回避する事すら難しいだろう。

 

 シュラク隊のパイロット達が、並以上の能力を有している事は明白だ。

 

 それでも……対峙するパイロットはニュータイプと、ニュータイプをベースにしたクローン強化人間……

 

 そして、彼女達の為にセッティングされた新型の機体では、さすがに分が悪い。

 

「まずは二匹……頂きだ!」

 

 ボレアス・キャノンの銃口が輝き、トライバード・アサルトを中心にビームが吐き出される。

 

「トライバード・アサルトには、サナリィの技術の全てが詰まっているんだ! そして、ザンスカールに抗った人々の想いが籠もっている! 高出力だろうが、ビームの一撃で墜とされる訳にはいかない!」

 

 可変速型ビーム・ライフルから放たれた高速の閃光は、威力は犠牲になっているが……正に高速でボレアス・キャノンの銃口付近のビームに干渉した。

 

 レジアはヴェズバーのビームの行方を見る事もなく、直ぐに次の動作に移る。

 

 トライバード・アサルトの放熱フィンが展開し、最大出力で発生する熱を逃がし始めた。

 

 最大出力……オールドタイプでありながら……いや、オールドタイプだからこそ、モビルスーツの限界値を感覚ではなく知識で理解し、必要なタイミングで使う事が出来る。

 

 必要な時に必要な力を引き出せる……それが、レジアの力であった。

 

 手動でのリミッター解除……そして、身体への負荷を考えた最低限の解放……

 

 その力が、マヘリアとクレナを救う。

 

 ヴェスバーの一撃でバランスを崩したアネモ・ボレアスの放った高出力のビームは湾曲する。

 

 その湾曲した反対側へ、トライバード・アサルトはガンイージを押し出した。

 

「爆発の規模が小さい……が、一番厄介なトライバードを……レジアを墜とせた。ファラの鈴に頼る事もなく終わったな。私のは、放出が出来ないからな……」

 

 ティーヴァは、自分の耳にピアスの様に付けられた鈴を指で弾く。

 

「ティーヴァ! よく見ろ! 奴は墜ちてない! 接近を許すな!」

 

 アネモ・ボレアスのコクピットに、アーシィの声が響く。

 

「な……確かに、トライバードは爆発した筈だ……何故、生きている? それに……3機……だと……」

 

 確かに、爆発は確認した。

 

 ガンイージ2機は墜とせなかったが、トライバード・アサルトはボレアス・キャノンのビームに巻き込めた筈だ……

 

 しかし、センサーはトライバード・アサルトを3機として認識している。

 

 連なって、アネモ・ボレアスに迫っていると……

 

「ちっ! ビームの干渉波で、モニターがイカれたか! 」

 

「違う! M.E.P.Eだ! サナリィの技術で造られた機体なのだから、搭載されてても不思議じゃないが……オールドタイプが使えるモノなのか?」

 

 アーシィの言葉を聞いても、ティーヴァは分かっていない。

 

 M.E.P.E……金属剥離効果と言われるソレは、装甲表面の塗装や金属が剥離し、それがセンサーにはモビルスーツとして認識してしまう現象である。

 

 剥離した金属がビームによって破壊され、それがアネモ・ボレアスのセンサーはモビルスーツを破壊したと認識した。

 

 質量を持った残像……そう言われる由縁である。

 

 が……金属剥離効果は、高出力機がリミッターを解除し、最大出力で動いた時に発生する現象だ。

 

 本来、ニュータイプでなければ、この現象を起こす事は不可能に近い。

 

 オールドタイプでありながら、高出力機を自分の手足のように扱うレジアは、やはり驚異だ。

 

「ティーヴァ、モニターの情報を信じるな! 接近されてるぞ!」

 

「モニターを信じるな? だが、モニターには3機いる! ならば、全てを墜とす!」

 

 アネモ・ボレアスの両肩に装備された粒子加速器が再び起動し、ビームを連射した。

 

 ビームが当たり、トライバード・アサルトのパーツが破壊されていく。

 

 ……ように見える……

 

 確かに、破壊されている……しかし次の瞬間には、どこも破壊されていないトライバード・アサルトが襲いかかってきた。

 

「くっ……何が……起こっている?」

 

「ティーヴァ、落ち着け! クローンじゃ、知識が無くても仕方ないか……」

 

 トライバード・アサルトの動きに翻弄されるアネモ・ボレアスは、ついにビームサーベルの届く距離に機体を晒していた……

 


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