機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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操られし者25

「今の爆発は何だ? カイラスギリーの各部チェック、急げよ!」

 

 スクイード1のモニターに映った小さな爆発の光……カイラスギリーのサイズからすれば、問題になるサイズの爆発には思えない。

 

 しかし、何故かタシロは気になっていた。

 

「中佐! カイラスギリーのエネルギー供給ユニットで爆発があったようです! エネルギー漏出の心配は無さそうですが……」

 

「エネルギー供給ユニットは、最重要のパーツだ! 整備は万全にしておけと、釘を刺しておいた筈だぞ! 復旧まで、どのぐらいかかる?」

 

「はっ……報告によると、内部の爆発ではなく、外部からの攻撃で破壊されたそうです! 射撃された場所は……エバンス隊が戦闘を行っていた宙域付近からです」

 

 報告を聞きながら、タシロは指を顎に当てて考え込む。

 

 エネルギー供給ユニットにピンポイントで攻撃するだけでも、ほぼ不可能に近い。

 

 モビルスーツより小さいユニットを狙うのは、動きが無いとはいえ、宇宙のように広大なフィールドでは針の穴を通すより困難だ。

 

 そしてエバンスからの報告では、遠距離射撃が出来るモビルスーツは破壊したと……

 

「エバンスめ……しくじったか! だが……損傷の激しいモビルスーツで、あんなに小さいユニットを狙えるモノか? それ以前に、エネルギー供給ユニットの位置情報が漏れない限り、ピンポイントで狙う事すら出来ない筈だ……」

 

 タシロはブツブツと独り言を言いながら、可能性を導き出そうとしていた。

 

 スパイか、エバンスの裏切りか、それ以外の要因か……

 

 何にしても、問題を解決しなければならない。

 

 カイラスギリーの存在は、ギロチンと合わせて、地球に住む人々をザンスカール帝国に屈服させる為に必要な物なのだ。

 

 サイド2で、反対勢力を恫喝した時のように……

 

 その為にも、カイラスギリーの情報を漏らした裏切り者を特定する必要がある。

 

「しかし……だ。傭兵であるエバンスが裏切るか? レジスタンス如きでは払えんぐらいの報酬を用意した。考えられるのは、マデア奴が情報を持ち出していたか……ザンスパインのデータを根こそぎ持って行ったからな……可能性はある……」

 

 マデアがカイラスギリーの情報を持ち出し、レジスタンスに情報を渡していたのなら、かなり厄介だ。

 

「だが、奴が完全にザンスカールを裏切るとは思えん。女王マリアが、ザンスカール帝国に留まっている限りはな……だとすれば……」

 

 ピンポイントのビームを放ったのは、射撃の天才としてザンスカールでも名が知られているリースティーアだろう。

 

 リガ・ミリティアのエースであるレジアがアーシィ達に、ニュータイプのマデアがファラに足止めされている今、リースティーアが損傷したモビルスーツで狙ったとしか考えられない。

 

「エバンスの失態は間違いないが……サイキッカーの脳内の情報で、ユニットの位置を把握されたのか? だとしたら……マズイな」

 

 タシロは立ち上がると、カイラスギリーのデータが送られてきている端末まで移動する。

 

「エネルギーは、何パーセント残っている?」

 

「75パーセント程度です。ユニットを修理する為に、一度放出する必要がありますが……」

 

「75か……」

 

 タシロは腕を組み、再度考え込む。

 

「この状態で撃った場合、地球にビームは届くのか?」

 

「都市が壊滅する程度の破壊力はあると……あくまで、データ上では……ですが」

 

 再び何かを考えたタシロは、指揮官席に戻ると声を張り上げた。

 

「カイラスギリー、射撃準備に入れ!」

 

 と……

 

 

「この状況で、モビルアーマーだと! どこの所属か知らんが、これ以上戦場を混乱させられては……」

 

 高速で迫るモビルアーマーに、ザンスバインはビームを放つが尽く回避される。

 

「ちっ! 気持ちが焦っているのか……掠りもしない!」

 

 ビームに晒されながら……回避行動をとりながらも、モビル・アーマーはスピードを緩める事なくザンスバインに突っ込んで来た。

 

 そして、ザンスバインの目の前でモビル・スーツ形態へ変形する。

 

「な……変形だと! しかも、ガンダム・タイプか!」

 

 ビームサーベルが激突し、ザンスバインが後方に押されていく。

 

「その声、マデアさんか? ザンスカール側で戦ってるなら、やるしかない!」

 

「ニコルか! ちょっと待て! ビッグ・キャノンに火が入ってるらしい……リガ・ミリティアで止めれるか?」

 

「なんだって! でも、カイラスギリーの近くにはリースティーアさんとジュンコさんがいる! ビーム・マグナムで制御艦を撃てれば……」

 

 ニコルが会話を止めた……いや、止めざるを得なかった。

 

「ニコル……これは……」

 

「そんな……リースティーアさんが……やられた……」

 

 リースティーアの命が弾ける感覚……そして、消滅していく魂……

 

「ニコル……仲間が、命懸けでやってくれたんだな……」

 

「でも、残っているエネルギーで地球を狙ってる! リースティーアさんの命を無駄にする訳には……いかない! 泣いてる暇は……ないんだ……」

 

「ニコル、そのモビルスーツがダブルバード・ガンダムで、エボリューション・ファンネルを搭載しているなら、考えがある! 付いて来てくれ!」

 

 マデアはファラが向かった宙域が気になっていたが、地球を狙うビームを止める事を優先し、バーニアを全開にして動き出した……

 

 

 


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