機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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操られし者21

 レシェフのパイロットの悲痛な叫びが、サイコミュを介してリースティーアの脳に流れ込む。

 

「くっ……」

 

 脳に直接流れ込むような衝撃に、どうしてもリースティーアの反応が鈍ってしまう。

 

 それでもエバンス機のビームサーベルを間一髪で躱すと、バーニアを全開にして間合いをはかる。

 

「ちっ! 粘りやがる!」

 

 リグ・ラングは腕を伸ばして、右手背に装備されたグレネード弾を放つ。

 

「あら……いい加減、諦めたら? 傭兵のあなた達には、ビッグキャノンを守る義理は無いでしょ?」

 

「ふん……俺達は、これで飯を食ってんだよ! ある意味、命懸けだ!」

 

 再び、近くでレシェフが爆発した。

 

「くっ……この、脳に入り込んでくる感情のようなモノ……気持ち悪いわね。それに、ボヤけて見えるビジョンの様な映像は何なの?」

 

 レシェフのパイロット……サイキッカーの命が散る度に、リースティーアの脳に意識が飛んでくる。

 

 その意識の中に入っているビジョンが、リースティーアの脳内で再生されていた。

 

 しかし朧気にしか感じないビジョンでは、何の映像かはっきりしない。

 

 動きが止まったアマネセル・フェネクスに、エバンスのリグ・ラングが迫る。

 

「あら、しっかりしないと……またヘレンに怒られるわ。色々と気になるケド、隊長機を墜として、制御艦を叩いてから考えればいい……」

 

 アマネセル・フェネクスの背部に装備されたディフェンス・エクステンションからIフィールドを発生し、リグ・ラングのビームサーベルを無効化……そして、距離をとった。

 

「ちぃ……レジスタンスの分際で、ハイコスト機を使いやがって! おい、俺の動きにレシェフを墜とすタイミングを合わせろ!」

 

 なかなか墜とせないアマネセル・フェネクスに苛立ちを隠せないエバンスは、部下に命令するとモニターを睨む。

 

 アマネセル・フェネクスの背後に、破損したガンイージが見える。

 

「なる程な……そいつを守ってやがるから、離れられんのか……」

 

 弱点を見つけた時のエバンスの動きは早い。

 

 バーニアを全開にして、ジュンコのガンイージに迫った。

 

「あら……やっぱり、そうくるわね。でも、お見通しよ!」

 

 ディフェンス・エクステンションは多機能兵器であり、シールドのように腕に装備する事も出来る。

 

 その先端に配されるメガキャノンで、エバンスのリグ・ラングを狙う……が、その直後にレシェフが破壊され、再びリースティーアの動きが鈍ってしまう。

 

 今までボヤけていたビジョンが、リースティーアの脳に一瞬だけ鮮明に映しだす。

 

「あら……なんでニコルが、ビッグキャノンを操作していたの? それに、ザンスカールの艦隊に向けて撃っているようにも見えた……」

 

 そのビジョンから解放されたリースティーアの視線の先では、エバンスのリグ・ラングがジュンコのガンイージを捕らえている瞬間だった。

 

「あらあら……どうしたモノかしらね? 動きが制限されている機体なんて、ただの的よ」

 

「どうかな? 昔の貴様は戦士だったが、どうやら今は違う様だからな。仲間に当たる可能性のある状況で、撃てやしまい!」

 

 メガキャノンの射線上にジュンコのガンイージを押し出し、リグ・ラングはビームライフルを構える。

 

「さて……武器を捨てて、投降してもらおうか。貴様が撃った瞬間に、お仲間の命も無くなるぞ」

 

 エバンスはそう言うと、ビームを放つ。

 

 光の閃光は、ガンイージの右足を貫く。

 

「ぐっ! リースティーア、奴の言葉は聞くな! 私だって、まだ戦える! メイン・カメラが無いってだけだ!」

 

 頭と右足の失ったガンイージが、エバンスのリグ・ラングに挑みかかる。

 

「おいおい……冗談だろ? 目を失っている状態ってのは、戦場じゃあ致命的だ。それで、どうにかなるかよ!」

 

 ガンイージが放ったビームはリグ・ラングに躱され、逆に右腕を斬り落とされた。

 

「リースティーア、私に構うな! 私だって戦士だ! こんな奴に命を握られるぐらいなら死を選ぶ! あんたは、制御艦を撃つんだ!」

 

 叫ぶジュンコだが、ガンイージには余力がある筈もない。

 

 遊ばれる様に左腕も斬り落とされ、ガンイージのコクピットにビームライフルの銃口が突きつけられた。

 

「リースティーア、武器を捨てて投降しろって言ってんだ! その機体は高く売れる。無傷で持って帰りたいんでな」

 

 為す術がなかったリースティーアは、その様子を見ながら力無くシートに身を委ねていた……


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