機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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操られし者20

「あらあら、今のガンイージでは回避は不可能だわ。それに、躊躇わずに味方機を撃つラングの後継機……以前、戦った相手に似てるわね」

 

 アマネセル・フェネクスは損傷しているガンイージの盾になるべく、ビームの雨に機体を晒す。

 

「リースティーア、何をやっている! スクイードを……制御艦を撃て!」

 

「あら、ジュンコさん。フェネクスのパーツには、対ビームコーティングが施されているのよ。ビーム・ライフルの攻撃ぐらい……」

 

 アマネセルに与えられた羽を盾のようにして、リグ・ラングから放たれるビームを防いでいく。

 

「そういう事じゃない! アマネセルのデストロイ・モードには、時間制限があるんだぞ! それに、あんたの身体が持たない!」

 

「あら、心配ありがとう。でも、そんなヤワに育てられてはいないわ」

 

 そう言いつつも、リースティーアに焦りもあった。

 

 サイキッカーが乗ったレシェフを、味方機であるリグ・ラングが墜とした……偶然、である筈がない。

 

 敵のパイロットの感応波を受信し、コントロールの一部を脳波に頼るデストロイ・モードでは、サイキッカー達の強い脳波の衝撃を受け続ける事になる。

 

 そして訳も分からずに墜とされた時の衝撃も、強く頭に流れ込む。

 

「あらあら……先に、あのラングの改良型を墜とすしかなさそうね……ジュンコさんの言う通り、間に合うかどうか……」

 

 狙いをリグ・ラングに定めたアマネセル・フェネクスだが、レシェフを盾にしながら飛び回る為に照準を合わせる事が出来ない。

 

 更に、そのレシェフを背後から撃ち、脳波による衝撃で動きが鈍ったアマネセル・フェネクスに攻撃を仕掛けて来る。

 

 インテンション・オートマチックによって回避し反撃する為、致命傷を受ける訳ではないが、リースティーアの身体へのダメージは蓄積していく。

 

 脳波によるダメージを受けている間に、自分の意図しない動きの反動に身を委ねなければならない。

 

 ジュンコのガンイージを守りながら今まで味わった事のないダメージを受け続け、リースティーアの身体も疲弊し始めていた。

 

「ジュンコ機がやられている? 全機、ジュンコ機を守りつつ、アマネセルの援護を行う! 2人をやらせるなよ!」

 

 レシェフ隊がエバンスの部隊によって後退した事で、オリファー達シュラク隊もリースティーア達と合流出来た。

 

「ちっ、先行してやられてたら世話ねぇぜ! ケイト、超能力野郎はオリファーとリースティーアに任せて、私達はラングもどきをやるよ!」

 

「了解! 姉さんも、リースティーアもやらせない! そして、ビッグ・キャノンも破壊してやる!」

 

 ヘレンとケイトは合流するや否や、リグ・ラングの部隊に攻撃を仕掛ける。

 

 レシェフの影に隠れようとするリグ・ラングに対し、ビームサーベルで接近戦を挑む。

 

 サイキッカーの相手や物量によって圧されていたガンイージだったが、機体性能は高い為、一騎打ちになればラングの改良型とはいえ相手にならない。

 

 あっさりと、リグ・ラングにビームサーベルを突き立てる。

 

「あらあら……流石ね。追加装備まで頂いて助けられてちゃ、ヘレンに言い返せないわ。制御艦ぐらいは、墜とさないとね」

 

 ビームマグナムを構えるアマネセル・フェネクスだが、再び強い脳波の衝撃をリースティーアは受けた。

 

 背中を向けて突っ込んで来るレシェフ……胸部から背部にかけてビームサーベルに貫かれ、糸の切れた人形の如く、無抵抗のままアマネセル・フェネクスに迫る。

 

 その機体からビームサーベルが引き抜かれた瞬間、力を失ったレシェフはアマネセル・フェネクスを目掛けて更に加速した。

 

 ビームサーベルを引き抜いた機体が、レシェフを蹴ったのだろう……予想外の動きだったが、インテンション・オートマチックによってアマネセル・フェネクスは容易に回避する。

 

 しかし、レシェフの影から突然現れたグレーの機体……リグ・ラングのビームサーベルによって、ビームマグナムを持つアマネセル・フェネクスの右腕が斬り落とされた。

 

「あら……やるわね。でも、まだやられてない!」

 

「ふん、流石はリースティーアって事か。接近戦も、そこそこ出来る!」

 

 素早く左手にビームサーベルを持たせると、コクピットを狙ってきたリグ・ラングを牽制する。

 

「あらあら……聞き覚えのある声だと思ったら、あなたエバンスね。通りで、随分と非道な手を使うわ」

 

「ここは戦場だ! 非道だろうが、卑怯だろうが、勝ちゃいいんだよ! リースティーア、貴様はテスト・パイロットとしてはエースだったが、実際の戦闘ではオレの方が強いって事を証明してやるぞ!」

 

 バルカンで牽制しながら、ビームサーベルでアマネセル・フェネクスに攻撃を仕掛けるリグ・ラング。

 

「あら……その程度の力で、本気で私に勝つつもりかしら?」

 

「普通にやってたら、勝てんだろうがな……ここは戦場だと言っただろうが!」

 

 ガンイージに追い詰められていたリグ・ラングの1機が、ビームに晒されながらもレシェフにビームサーベルを突き立てた。

 

 その直後、ビームに貫かれたリグ・ラングとレシェフが爆発する。

 

「あら……自分を犠牲にして、同志撃ちをした?」

 

「これが戦争だ! そして、これが戦場での……傭兵としての戦い方だ! 勝利の為には手段は選ばん! レシェフを墜とせば、貴様の動きが一瞬鈍る。それで、充分だ!」

 

 リグ・ラングのビームサーベルが、アマネセル・フェネクスに迫った……


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