「敵は、サイキッカーの操るモビルスーツだっ! 全機、フォローしながら戦うんだ!」
ジュンコの言葉に、全員が頷いた。
カイラスギリーの側面に壁のように展開するレシェフ部隊に、シュラク隊は飛び込んでいく。
「後方のビッグ・キャノンを、奴らは守りたい筈だ。接近戦より遠距離から攻撃するんだ!」
オリファーのガンイージは、ビーム・バズーカを構え……そして撃った。
狙われたレシェフは、いとも簡単にビームを躱すが、そのビームはカイラスギリーに直撃する……が、とてもダメージを与えられているように見えない。
「おい……オリファーさんよ。本当に遠距離攻撃でいいんだろうな? キンピカ野郎は、普通に回避してるぞ。それに、ビーム・バズーカの火力でダメージを与えられないんじゃ、遠距離からビームを当てたってビッグ・キャノンの破壊は無理だろ!」
「あら、ヘレンの言う通りね。近距離からビームを当てまくるか、持ってきた高性能爆弾で内側から破壊しない限り、ビッグ・キャノンは墜とせそうにないわ」
ヘレンとリースティーアに指摘されたオリファーは、頭を掻きながら黙ってしまう。
「オリファー! しっかりしなっ! 全機、レシェフの壁を抜けて、ビッグ・キャノンを背にして戦うんだ。私とリースティーアで、ビッグ・キャノンを墜とす。フォロー、頼むよ!」
「くそっ! ジュンコ機とリースティーア機を守りながら、レシェフ部隊を抜けるぞ! ミノフスキー・トライブ搭載機とバタフライが追いつけば、挟み撃ちにも出来る!」
ジュンコの言葉で持ち直したオリファーの指示で、ジュンコとリースティーアの機体を守るような陣形でレシェフ部隊の中央に向けてバーニアを全開にする。
4機のガンイージとF96アマネセルは、しかし直ぐに足止めされてしまう。
サイキッカーの能力である行動予測と空間把握で、シュラク隊を完全に囲い込む。
リースティーアの射撃すら、動きを読まれて当たらない。
逆に、レシェフの攻撃は装甲を掠めていく。
才能溢れるシュラク隊のメンバーですら直撃を避ける事で精一杯で、前に進む事が出来ない。
「このままじゃ、2射目を撃たれる! 地球がザンスカールの恐怖に屈してしまう! なんとしても、止める!」
ケイトのガンイージが強引に前に出て、マルチランチャーを放つ。
が……ランチャーに対してもピンポイントでビームが放たれ、何も無い宙域で爆発していく。
そして、ケイト機にもピンポイント射撃が放たれる。
「間に合わない!」
ビームシールドで守ろうとするが、間に合わない……確実にコクピットを貫かれるタイミングだったが、そのビームにビームが交錯した。
ビーム同士が弾かれ、そのビームがレシェフの右足に直撃する。
F96アマネセルが、レシェフの放ったビームに合わせてビームを放ったのだ。
リースティーアの射撃スピードは、行動予測して撃ってくるサイキッカーより遅い……しかし、その遅さも計算に入れてしまえば、射撃の腕はサイキッカー達を遥かに上回る。
「すまない、リースティーア。助かったよ」
「あら、本当よ。前に出たくなる気持ちも分かるけど、慌てたら敵の思う壷だわ。大丈夫……急がなくても、そろそろ来るわ。戦場に舞う鳥が……」
F96アマネセルのサイコフレームが告げる……新たなる翼の到来を……
「あら……来たわね。ツインテール……ニコル、ありがとう」
Iフィールドに守られながら飛んでくる2枚の羽……サイコフレームが張り込まれた羽は、F96アマネセルに向けて加速する。
レシェフから放たれるビームを弾き返しながら、羽はアマネセルの上腕部に吸い込まれるように取り付く。
そして羽を守っていたIフィールドは、長細い板の様な形に姿を戻し、来た道を戻る。
羽を追うように飛んでくる白いモビルスーツの背中から生える長細い羽のようなパーツに、その板は突き刺さっていく。
「サイコミュの力でガンダムの後ろから付いて来てくれたけど、気にしながら来たから遅くなっちゃったよ! まだビッグ・キャノンも墜とせてないし……やっぱ、オレがいないとダメだね!」
タブルバード・ガンダムは、一瞬で2機のレシェフをビームサーベルで戦闘不能にすると、F96アマネセルの隣に来る。
「あらあら……随分と言うようになったわね。でも、助かったわ。これで、何とかなりそうね!」
「正にダブルバードだね! このまま、あの大量虐殺兵器を破壊する! もう二度ど、あの惨劇を繰り返させちゃいけないんだ!」
タブルバード・ガンダムとアマネセル・ツインテール・コード不死鳥。
2機の視線は、カイラスギリーを捉えていた……