機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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操られし者14

「どうでもいいが、メイン・カメラがペイント弾でやられちまってる。これで戦えってのかよ!」

 

「プロシュエール、文句を言うな。リースティーアがペイント弾を使ってくれたから、我々は生きていられる……来たぞ! プロシュエールは変形して上空へ! フォルブリエはサポートを頼む!」

 

 リファリアの言葉が終わる前に、フォルブリエの機体は前衛に出ている。

 

「あらあら……まぁ、私を活かすなら、この戦術しかないわよねぇ……お嬢さん、ちょっとの間ジッとしててね」

 

 リースティーアのF90Lタイプは、ロングレンジ・ライフルを構えて、近付いてくるモビルスーツ部隊に照準を合わせた。

 

「やはり、F89とGキャノンの混成部隊だ! 20機はいるぞ!」

 

「あらあら……Gキャノンがノーマル・タイプなら問題ないけど……換装した機体が数機混じってそうね」

 

 フォルブリエとリースティーアの声が、リファリアのF90のコクピットに響く。

 

「相手は何であれ、2機で戦っているように見せかけてくれ! 奇襲で相手を撹乱する。機動力では、こちが上だ!」

 

 リファリアの通信を聞きながら、フォルブリエはモニターを確認する。

 

「ナイトハルト・エバンスが部隊を仕切ってんのか? それとも、別の野郎が機体を乗っ取ってんのか……」

 

「あら……傭兵出身のエバンスさんねぇ……だとしたら、コロニーに穴を開けられかねないわ。敵を倒すのに、犠牲を厭わない人だからね」

 

 ナイトハルト・エバンス……サナリィに来る前は傭兵として戦場を転々ときていた人物だ。

 

 サナリィではF89のテスト・パイロットとして、リースティーア達とは何度も模擬戦を行っている。

 

 部隊を勝たせる事に長けた人物であり、勝たせる為ならどんな手でも使う。

 

 それが、卑怯でも非人道的であろうとも……だ。

 

「エバンスか……奴の部隊なら、金でザンスカールに付いても不思議じゃない。それに……」

 

 敵、味方の確認なく撃ってくる……リファリアがそう言おうとした矢先、早速仕掛けてきた。

 

「ちっ、野郎……相手が俺達だと分かってて、先制してきやがった! だがなっ!」

 

 フォルブリエの操るF90Sタイプに放たれたビームは、尽くメガ・ビームシールドに弾かれる。

 

「残念だが、コッチのSタイプは特別製だ! 貧弱な火器じゃ、相手にならんぞ!」

 

 ミサイルで牽制しながら、エバンスの部隊に接近しようとするフォルブリエだったが、うまく距離をとりながら攻撃をしてくる。

 

「戦い方を分かってやがるな……リースティーアの射撃が届かない距離を保つか……」

 

「フォルブリエ、大丈夫だ。プロシュエール、ジャミングカット! 仕掛けるぞ!」

 

 リファリアの指示で上空からリゼル改がGキャノンにビームを放ち、エバンスの部隊が一瞬混乱する。

 

 その隙に乗じてリファリアのF90も、ジャミングをカットしてエバンスの部隊の横っ腹へビームを撃ち込む。

 

「このチマチマした作戦、敵の指揮をとってるのはリファリアだな。このコロニーは、我々にはもはや用は無い。貴様ら、遠慮なくぶっ放せ!」

 

 エバンスの野太い声に呼応して、Gキャノンが1機……射撃の姿勢をとる。

 

「ヴェスバーだ! コロニーの中で、そんな高火力のビームをっ!」

 

「あらあら、でも相手が悪いわ……止まって撃ってくるビームに合わせるなんて、造作も無いわ。フォルブリエ、避けてよ」

 

 リファリアの焦りも何のその……ヴェスバーのスピードに合わせてF90Lタイプのロングレンジ・ライフルからビームが放たれる。

 

 高出力のビームとビームが重なり合い、光の飛沫を舞ながら消滅した。

 

「リースティーアか……厄介な奴も混じってるな」

 

「隊長! 同僚を倒して、ザンスカールから金貰えんのか? 無駄に命を懸けたくないんだが?」

 

 敵にリースティーアとフォルブリエがいる……サナリィ所属のテスト・パイロットなら、戦いたくない相手である。

 

「あん? てめぇら、怖気づいたのか? リースティーアだろうが、フォルブリエだろうが、戦場で敵として会ったら倒すだけだろうが! コイツらをリガ・ミリティアの部隊と合流させなけりゃ、金なんて欲しいだけ貰えんだろ! なぁ?」

 

 エバンスの言葉に無表情で頷いた女性は、搭乗しているF89のビームライフルをリゼル改に合わせた。

 

「けっ! メインカメラと左腕を失っていても、貴様らに倒される程弱っちゃいねーんだよ!」

 

 F89から放たれるビームをモビルスーツ形態に変形しながら躱すと、不用意にマシンキャノンを撃ってきたGキャノンのコクピットにビーム・トンファーを突き刺す。

 

 その間にもF90Lタイプから放たれるビームが、足の止まったエバンス隊のGキャノンのコクピットに面白いように突き刺っていく。

 

「リースティーアさん……気を付けて下さい。何か、嫌な予感がする……」

 

「あら……意外とアッサリ片付きそうよ。全滅させちゃえば、嫌な予感とやらも当たりようが無いでしょ?」

 

 クレナと話ながらも、リースティーアの射撃は止まらない。

 

 エバンス隊に吸収されながら戦うプロシュエールとリファリアの機体に当てないようにしながら、更にGキャノンのコクピットだけを貫いていく。

 

「リースティーア、躊躇いねぇな。一応、テスト・パイロット時代は同僚だったんだろうに……ま、戦士なら情けをかけるとしっぺ返しが来る事は当然知っているか……」

 

 エバンスは部隊を後退させながら、時を待っていた。

 

「プロシュエール、このまま押し込め! エバンスの部隊を崩壊させて、そのままリガ・ミリティアの部隊と合流する!」

 

 気付かれないようにリファリアの機体にワイヤーを伸ばしていたエバンスは、コクピットでほくそ笑む。

 

「頃合いだ……やってくれ!」

 

 相変わらず無表情で頷いた女性は、F89で近くにいたGキャノンに発砲する。

 

「何だ? うわぁぁぁぁ!」

 

 突然の味方機の裏切りに、為す術なく墜とされるGキャノン。

 

 その牙は、エバンスのF89にも及ぶ。

 

 ビームサーベルがF89の頭を焼き、更にコクピットを蹴り飛ばす。

 

「ぐおっ! クローンがっ……やり過ぎだ! だが、これでいい」

 

 エバンスと僅かに残ったGキャノンは、女性の乗ったF89を残して後退していく。

 

 残されたリファリア達も、混乱していた……


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