機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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覚醒のアーシィ

 放たれた閃光は、マヘリアとレジアの危機を救う光となる。

 

 そして、ニコルの操るトップ・ファイターは、無惨な姿になったガンイージを抱えるトライバードとすれ違った。

 

「レジアさんっ!!マヘリアさんはっ?」

 

 トップ・ファイターがトライバードを通過した後、ボトム・ファイターのモニターが、ようやくレジア機とマヘリア機を捉えた。

 

 ニコルは、ようやく出会えた仲間の姿に安堵したからか、先程自分の感じたマヘリア機の無惨な姿を鮮明に思い出す。

 

「分からないが、コクピットは無事だっ!!応答がねぇから、おそらく気を失ってるんだろう。畜生!!オレを庇ったばっかりに………」

 

 レジアの心から悔しそうな声に、ニコルはなんとか力になりたいと思った。

 

「レジアさん!!戦闘機からメガ・ビームライフルを切り離します!!それでシャイターンを…………皆を守って下さい!!」

 

 そう言うと、単機でシャイターンの間を駆け抜けていたトップ・ファイターが、トライバードに近付いてくる。

 

「お前………サイコミュでここまで出来るか…………くそっ!!今はその力、少し借りるぞ!!」

 

 トップ・ファイターからパージされたメガ・ビームライフル受け取り、そのまますぐにトライバードは射撃体勢をとった。

 

「くらえ!!ザンスカールの蛮族ども!!これがガンダムの…………レジスタンスの反撃の一撃だ!!」

 

 トライバードとレジアのコンビは、今まで時代を築いてきたガンダムとエースパイロットのコンビの如く、火力とスピードでシャイターンを圧倒し始めた。

 

 メガ・ビームライフルを装備する事を想定されていないトライバードは、著しく機体バランスを低下させていたが、レジアの操縦はそれを感じさせない。

 

 シャイターンの分厚い装甲を、いとも簡単にメガ・ビームライフルから放たれるビームが突き破っていく。

 

「くっ………ガンダム………私達がこんなに簡単に………でも、私には負けられない理由がある!!」

 

 シャイターンが、最後の1機…………

 

 アーシィ機だけになった時、アーシィは自分の感覚が研ぎ澄まされていく感じがした。

 

「見え………る…………?あの速いガンダムの動きが…………」

 

 アーシィの乗るシャイターンの動きが急に機敏になり、紙一重でメガ・ビームライフルから繰り出されるビームを躱し始める。

 

「なんだ?このシャイターン!!オレの動きを読んでるのか?」

 

 重厚なシャイターンで、トライバードから放たれるビームを躱す姿は圧巻だ。

 

「レジアさんっ!!合わせて!!」

 

 ニュータイプの直感なのだろうか………ニコルは、レジアの能力ならばビームライフルの牽制をうまく使ってくれると感じた。

 

 ニコルの操るボトム・ファイターの足に付くビームライフルから、ビームが放たれる。

 

「なっ!!こいつっ!!ガンダムより動きが読めない!!」

 

 シャイターンにビームライフルのビームは致命傷にならないが、アーシィの動揺を誘うには充分だった。

 

「遠距離ビームが当たらないなら、これで!!」

 

 ボトム・ファイターがビームライフルで牽制射撃を行う中、トライバードはメガ・ビームライフルを宇宙空間に放り出し、ビームサーベルを持ってシャイターンに飛び込む!!

 

「くっ…………動け!!シャイターン!!」

 

 覚醒したアーシィの操縦に、シャイターンの反応は遅れ始めていた。

 

 ボトム・ファイターから繰り出されるビームを避けながら剣撃を見舞うトライバードの攻撃に、ビームサーベルで応戦していたシャイターンだったが、ついに左腕を斬り落とされる。

 

「くわっ!!もうダメか…………ラング隊、撤退するぞ!!」

 

 トライバードと距離をとりながら、シャイターンは身体中に取り付けられたビームを乱射し、退路を確保していく。

 

「逃がすものかっ!!」

 

 ニコルはマヘリア機をラングから守っていたトップ・ファイターで、さ迷っていたメガ・ビームライフルを確保し、逃げていくラングとシャイターンに撃ち続ける。

 

 ラング1機にはビームが直撃したが、機体が損傷していても覚醒したアーシィにはメガ・ビームライフルのような長距離ビームは当たらない。

 

 マヘリア機から離れられないニコル達と、ザンスカールのモビルスーツとは距離が離れていく。

 

「ニコル!!もういい!!こっちもマヘリア機を回収して、基地に戻るぞ」

 

 そう言いながら、レジアは唇を噛み締める。

 

「レジアさんっ!!あいつら、マヘリアさんをボロボロにしてったんだぞ!!簡単に逃がすなんて!!」

 

 興奮気味に叫ぶニコルにレジアは少し怒りを覚えたが、その感情を必死で押さえた。

 

「ニコル。お前が来てくれなければ、やられていた………助かったよ。だが、今は敵の殲滅より、マヘリアを早く基地に連れてって治療させるのが先決だろ」

 

 そう言われて、ニコルはようやく戦争の興奮から少し冷めていく。

 

 それと同時に、マヘリアの状態が気になり始めた。

 

「分かりました。すいません………そうですね………」

 

 トライバード、そしてニコルは初陣をなんとか飾り、ホラズム基地へ戻っていく。

 

 その機体の中でレジアは、ニュータイプとして覚醒しつつあるニコルが、戦争を簡単に考えてしまうのではないか………そんな危機感を募らせていた……………

 


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