マグナ・マーレイと、トライバード・アサルトのビームサーベルが交錯し、ぶつかり合う粒子が2機の周りに舞うように散る。
「レジア・アグナール! レジスタンスでは、地球を統治し平和な世界を作る事など出来やしない! 上に立つ人間が、私利私欲を肥やすだけの世界が繰り返されるだけだ! 世界には、マリア様のような存在が必要だって事……なんで分からない!」
「ギロチンで恐怖を与え、安全な場所から人々を大量虐殺するような国の統治が、今の連邦より良くなるようには思えない! もしマリアの影響力が強ければ、こんな事はさせない筈だろっ!」
叫び合う2人に呼応するように、2機は弾け飛ぶ。
マグナ・マーレイがトライバード・アサルトから離れた瞬間、周囲を取り囲んでいるカネーシャ・タイプの乗るゾロアットからビームが降り注ぐ。
そのビームの雨をかい潜り、トライバード・アサルトはビームライフルを構える。
「マリア様の影響力が弱いのは分かってる! だから、私達が支えているんだ! 天使の輪から降り注ぐマリア様の祝福で、人々から争う心を取り除けば、戦争は起きなくなるんだ!」
アーシィは自分に言い聞かせるように……操縦管を強く握って、叫んだ。
そして、再びビームサーベルを構えながらトライバード・アサルトに飛び込んでいく。
「自分の考えに迷いがあれば、動きが鈍くなるっ! そんな動きで、オレは……トライバード・アサルトは墜とせはしない!」
マグナ・マーレイのビームサーベルは尽く空を斬り、距離をとりながら放たれるトライバード・アサルトのビームは次々とゾロアットを貫いた。
そのビームと同時に放たれたヴェズバーの一撃が、マグナ・マーレイのフレキシブル・バインダーに直撃する。
「きゃあああああ!」
「ゲルダさんの娘だとしても……ザンスカールの重要人物ならば墜とすしかない!」
動きの止まったマグナ・マーレイに、トライバード・アサルトはビームサーベルで斬りかかった。
だが、トライバード・アサルトとマグナ・マーレイの間に、次々とゾロアットが割って入ってくる。
「アーシィ大尉、マリア・カウンターのマグナ・マーレイでは限界がある。アネモ・ノートスを準備した……一度スクイードに戻って来い。カネーシャ・タイプに大尉の護衛をさせる」
タシロの言葉通り、ゾロアットが特攻でも仕掛けているようにトライバード・アサルトに挑みかかっていた。
「人の命を軽視している奴らに、正しく人を導ける訳がない! そんな国に身を寄せているマリアの言葉が、どこまで人々に届くのか……」
アーシィを逃がす為だけにトライバード・アサルトに迫るゾロアットは、次々と墜とされていく。
ゾロアットが次々と墜とされていく光景をモニター越しに見るアーシィの瞳からは、自然と涙が零れた。
「すまない……カネーシャ・タイプ。強いモビルスーツさえあれば、こんな思いをする必要ないんだ……黄色のジャケットを着る勇気さえあれば、母も私も苦しみから解放されるのか……」
マグナ・マーレイはバーニアを全開にして、トライバード・アサルトから離れて行く。
アーシィは迷いながらも、頭の中では覚悟を決めていた……
「敵は1機だ! 接近戦で、敵の全方位攻撃を無効化するぞ!」
オリファーは、ビーム・バズーカから放たれるビームをリグ・グリフに向けて撃ちながら叫んだ。
「近付けったって……ビーム・バズーカの火力だって、敵に吸収・反射されちまうんだよ。どうやって近付くんだい……」
オリファーの放ったビームが拡散されて自分達に襲い掛ってくる状況に、ジュンコは呆れて溜息をつく。
拡散されたビームによって後退を余儀なくされたオリファーは、リグ・グリフに接近する事も叶わずジュンコ機の横に戻って来た。
「くそっ! 固まって動かずにいたら、インコムの的になってしまう!」
「そう思ってんなら、さっさと離れてもらえるかしら? ケイト、インコムは有線で繋がっている。多角的に攻撃出来る訳じゃない! こっちがビームを撃たなければ、敵モビルスーツ本体のビームを拡散させるだけだ!」
ジュンコのガンイージは、ビームサーベルを握ってリグ・グリフに向かってバーニアを吹かす。
「了解、姉さん! グレネードで援護するっ!」
ケイト機の右肩に装備された2連装マルチランチャーから放たれたグレネード弾が、ジュンコ機の横を通り過ぎリグ・グリフに迫る。
ドオオォォォォン!
インコムから放たれたビームにより、グレネード弾はリグ・グリフの手前で爆発した。
「ナイスだ、ケイト! 爆発の光で、ワイヤーが丸見えだよっ!」
ジュンコの乗るガンイージは、爆発の光で反射したワイヤーをビームサーベルで斬り落とし、更に迫ってくるインコムに向けてバルカンを突き刺す。
「丸見えだって、言っているんだよっ! 動きが分かれば、予測する事は簡単さ」
光を反射するワイヤーを見ながら、ジュンコは的確に攻撃していく。
しかし、まだインコムは残っている。
残ったインコムは、ジュンコ機に狙いを定めてビームを撃とうとした。
が……グレネードに直撃されて、ジュンコを狙っていたインコムは粉々になる。
「オレも少しは役に立つだろ。ビームが効かないってんなら、実弾でやってやるだけだ!」
オリファーも直ぐに対応し、グレネード弾でジュンコのフォローに回った。
「まったく……腕はいいんだが、オツムがちょっとね……ケイト、奴に止めを刺すよ!」
「姉さん! そこから離れて! 高出力のビームが来る!」
ケイトの声に咄嗟にバーニアを全開にして離脱したジュンコ機のスレスレをビームが通過する。
その隙に、リグ・グリフはバーニアを全開にしてスクイード1へ戻っていく。
「くっ……今のビームは……一体……」
「また新型……ザンスカールは、どれだけの機体を開発しているんだ……」
三角頭に、両肩に光のリングを輝かせたモビルスーツが、ジュンコ達の前に立ち塞がっていた……