機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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タイタニア・リッテンフリッカ

 

「ズガン艦隊が出て来たか……リファリア、レシェフが来るぞ!」

 

「分かってる。2機でレシェフ20機を相手にするの難しいか……しかし、引く訳にもいかんだろ?」

 

 今マデア達が後退すれば、リガ・ミリティアの部隊にカイラスギリー艦隊とズガン艦隊が襲い掛かる事になる。

 

 そうなれば、リガ・ミリティアのエース部隊とはいえ、簡単に殲滅されてしまうだろう。

 

「まだ、リガ・ミリティアに潰れてもらっては困る。20機程度なら、足止めぐらい出来る筈だ!」

 

「マデア、レシェフは高性能機だ。パイロットにサイキッカーを使っているという噂もある。油断は禁物だ」

 

 マデアは頷くと、ザンスバインの腕を曲げてビーム・ストリングスを射出する。

 

 が……その動きを読んでいるかのように、ビーム・ストリングスの網をスレスレで躱したレシェフはスピードを緩めずに突っ込んで来た。

 

「こっちの動きを読めるのか? なら、オールレンジからの攻撃ならどうだ!」

 

 ザンスバインの肩のパーツに収納されるビットが射出され、更に分離し4つのビットになる。

 

 ティンクル・ビットと呼ばれる、ザンスバインのサイコミュ兵器だ。

 

 しかし、その攻撃すらも簡単に躱される。

 

 そして、レシェフから放たれるビームの雨……

 

「ビーム兵器か……リファリア!」

 

「分かっている。ただのビームなら、マグナ・マーレイのIフィールドを抜くのは不可能だ」

 

 ザンスバインの前に出たマグナ・マーレイが、Iフィールドでレシェフから放たれるビームを受ける。

 

「高性能と言っても武装が貧弱ならば、どうという事もない」

 

 レシェフの持つビーム・ライフルではマグナ・マーレイのIフィールドに歯が立たない。

 

「Iフィールド搭載機がいるのね……後方支援のレシェフ隊は、実弾兵器に持ち替えてっ! アタック部隊は、私と突撃よっ!」

 

 20機のレシェフに指示を出す女性のパイロット……アルテミス・シロッコは、純白でスカートを穿いているような装甲を持つモビルスーツに乗っていた。

 

 タイタニア・リッテンフリッカ……かつてのジ・Oを彷彿とさせるフォルムだが、そのサイズは小さい。

 

 小型化が進むモビルスーツ業界の波に逆らわず、木星の技術を凝縮して造られたモビルスーツだ。

 

 レシェフと同等の高機動を実現し、更にファンネルや隠しアームも装備し、近距離、遠距離共に使用出来るバランスの良い機体である。

 

 そのパイロットであるアルテミス・シロッコは、木星育ちのニュータイプであり、更に基本設計が既に存在した大型モビルスーツ、タイタニアの小型化を実現した天才だ。

 

 アルテミスの設計の基、サナリィで造られたタイタニア・リッテンフリッカの基本性能は、本家タイタニアの遥かに上をいく。

 

 タイタニア本来のモノアイから、ザンスカール系の複合複眼式マルチセンサーであるキツネ目センサーに変更されている。

 

 無敵のズガン艦隊を支えているのは、アルテミスのタイタニア・リッテンフリッカの指揮下にあるレシェフ隊といっても過言ではない。

 

「あの白いモビルスーツが指揮官機だな……マデア、行けるか?」

 

「ああ……指揮官機を墜とせば、戦局は大きく変わるな。前に出て来てくれるなら、勝機はある。リファリア、援護を頼む!」

 

 レシェフ隊より前に出て来たタイタニア・リッテンフリッカに、ビームサーベルを持ったザンスバインが迫る。

 

「クスっ! あれが、タシロが奪われたモビルスーツかぁ……タシロって、お堅そうな顔して結構ドジなのね。まぁ、ズガン艦隊の強さを見せつける良いチャンスだわ!」

 

 タイタニア・リッテンフリッカのビーム・ソードとザンスバインのビームサーベルが激突し、スパークが飛び散った。

 

 動きの止まったザンスバインに、レシェフからビームが放たれる。

 

「ちっ……この白い奴、なかなか強い! レシェフの反応も早いな……」

 

 ビームシールドをマントのように覆い、四方から繰り出されるビームをザンスバインは防御した。

 

「ほらっ! 動きを止めたら、タイタニアの餌食になっちゃうよ!」

 

「このパイロット、良いセンスをしている! だが、動きにムラがあり過ぎだ!」

 

 タイタニア・リッテンフリッカの繰り出すビーム・ソードの一撃を、ビームシールドで受け止めたザンスバインは、ティンクル・ビットで牽制し距離をとる。

 

「へぇ……面白いね! けど、距離をとれば何とかなるって思ったの?」

 

 アルテミスは、お団子にした銀髪の横からこぼれ落ちている髪の毛を軽く捩りながら、不適に笑う。

 

「オールレンジ攻撃なら、タイタニアにだって出来るわ!」

 

 タイタニア・リッテンフリッカもファンネルを放出し、ザンスバインに全方位から攻撃を仕掛ける。

 

 その攻撃を、ザンスバインは尽く躱していく。

 

「マデア、遊んでいる場合じゃないぞ。その白い奴は、遊んでいるみたいだがな……どうも、タシロ艦隊の動きが怪しい……リガ・ミリティアの援護に回る必要があるかもしれん」

 

「ズガン艦隊にレシェフ以外のモビルスーツがあったのも驚いたが、タシロも切り札を持ってるって事か! アーシィのクローンも好き放題使っているしな……ここでズガン艦隊の足止めをしているだけではダメかっ!」

 

 タイタニア・リッテンフリッカにビームライフルで牽制しながら、ファンネルをビーム・ストリングスで絡め捕る。

 

「へぇ……その網、そんな使い方も出来るのねっ!」

 

「子供は、家で大人しく寝てろっ! コッチは忙しいんだよっ!」

 

 タイタニア・リッテンフリッカのビーム・ソードと、ザンスバインのビームサーベルが再びぶつかり合う。

 

 そして、タイタニア・リッテンフリッカの肩から、不気味な4本の腕が動き出していた……


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