話を少し戻そう。
ガンスナイパーでシャイターンを3機撃破したニコル機に、ラング3機が迫って来ていた。
「ラングが3機も!!この機体、接近戦ってできるの?」
ニコルは必死に接近戦に対応出来る武器を探す為、コンソールをいじり回す。
「ビームサーベル………バルカン…………後はビームライフル…………?足にくっついてた、あれか?」
ニコルは機体に搭乗する時に、ガンスナイパーの足のハードポイントにビームライフルが取り付けられてたのを見ていた。
「それと、これは…………簡易式コア・ブロックシステム…………?」
ビーッ!!ビーッ!!
そこまで調べた所で、敵の接近を知らせる警報音がコクピット内に鳴り響いた。
「もう来た!!ビームライフルは?」
足に取り付けられたビームライフルで、感覚だけを頼りに射撃するニコルだが、ラングには掠りもしない。
「さっきのはマグレか?動きも素人同然、射撃の腕も悪い。アーシィの読みは外れたな!!こんな雑魚は、とっとと片付けてガンダムを堕としに行こうぜ!!」
ラングが突然ガンスナイパーの目の前に現れ、ビームサーベルでコクピットのある腹部を切り払う!!
「うわああぁぁ!!」
目を固く瞑りながら、ニコルは近くにあったレバーを思いきり引いてしまった。
その瞬間ガンスナイパーの上半身と下半身が分かれ、ラングのビームサーベルは何も無くなった宇宙空間を切り裂く。
「なんだと!!」
ラングのパイロットは、困惑した声をあげる。
しかし、困惑したのはニコルも同じだった。
「分離したぞ!!これ、どうやって操縦するんだ?」
ガンスナイパーの下半身の腹部にコクピットがつき、戦闘機のようになっている。
そして、上半身はパイロットがいなくなって宇宙空間を漂い始めた。
「メガ・ビームライフルがっ!!命は助かったけど、ただの戦力ダウンだぞ!!」
ガンスナイパーの右手はしっかりとメガ・ビームライフルを握っており、ピクリとも動かない。
「戦闘中に意味のない分離をしやがって!!死ぬのが数分伸びただけだっ!!」
ニコルの乗る下半身の戦闘機[ボトム・ファイター]が、ラングからのビームの洗礼を受ける。
「うわあぁ!!このままじゃ、本気でやられるぞ!!」
ビームの雨を必死でくぐり抜けながら、ニコルは死を覚悟した。
その時、分離した上半身が赤く光り、メガ・ビームライフルを砲頭にした戦闘機[トップ・ファイター]に変形する。
ドクン…………
再びニコルの鼓動が強く、早く高鳴り始めた。
「この感じ………さっきもあったけど…………何なんだ………?」
動きの止まったボトム・ファイターに、ラングがビームライフルを構えて近づいてくる。
「戦場で動きを止めるとは………命知らずだなぁ!!死ねっ!!」
3機のラングから、一斉にビームが放たれる。
ガシュゥゥ!!
直撃を確信していたラングのパイロット達は、次の瞬間驚きの表情を浮かべる事となる。
動かない筈の………パイロットのいない筈のトップ・ファイターが動き、ビームシールドでボトム・ファイターへの直撃を防いだのだ!!
「そっ…………そんな馬鹿な…………」
今度はラングのパイロット達が、動きを止めてしまう。
「そこだっ!!」
ニコルは動きの止まったラングに、ビームライフルを的確に直撃させる。
「よし!!何だか分からないけど、ガンスナイパーの上半身はオレの意思通りに動くぞ!!これなら!!」
ドクン……………
ニコルは、頭の中に赤い輝きを見る。
その瞬間、シャイターンに囲まれるトライバードとガンイージの映像が鮮明に感じられた。
「なんだ今の?なんかヤバイ気がする!!」
ニコルはラングに対してメガ・ビームライフルで牽制し、隙をついてトップ・ファイターをレジア達の救援に向かわせる。
(どこまで遠隔操作出来るか分からないけど、やれるだけやってやる!!)
ニコルのボトム・ファイターは、ラングと戦闘しながらトップ・ファイターを追う。
ドクン
(また、頭に…………)
ニコルは頭に色々な情報が流れ込む感覚に戸惑いながら、その中からガンイージの無惨な映像を抽出する。
「マヘリアさん!!」
それが過去の映像か、現在の映像かは分からない。
ただ、ニコルはマヘリアを守りたいと強く念じた。
その時、目の前が光ったように感じる。
神経が研ぎ澄まされていく感覚…………
「あたれええぇぇ!!」
トップ・ファイターのメガ・ビームライフルに、ニコルの意識が乗り移った。