機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

148 / 237
少数精鋭

「予想以上に敵が多い! アマネセルは、援護射撃をしてくれ! 私達は、突っ込むよっ!」

 

 ジュンコは全天周囲モニターで、敵の数を確認しながら声を出した。

 

「あらあら……確かに、かなりの数が出てるわね……前回より多いかも……」

 

「だが、やるしかねぇ! あんな大量虐殺ビームをポンポン撃たせてたら、何の為にレジスタンスやってるか分からなくなるぜ」

 

 F96アマネセルの前に出たヘレンのガンイージは、シュラク隊の先頭に踊り出る。

 

「ヘレン、前に出過ぎるな! 必ず3機で纏まって動けよ! マヘリア、クレナ、ヘレンのフォローを頼む!」

 

 オリファーのガンイージがヘレン機の前に出て、動きを制した。

 

「私とオリファー、それとケイトでビッグ・キャノンに取り付く! 道を作ってくれ!」

 

 迫って来たラングをビームライフルの射撃の一撃で撃破したジュンコは、コクピットの中で叫ぶ。

 

「くそっ! なんで私がアタック・チームじゃないんだよ! ムカつくぜっ!」

 

「すいません……私達では、近距離戦闘に不安があるのでしょう……接近戦と遠距離攻撃のバランスを考えると……」

 

 クレナの申し訳なさそうな声を聞いて、ヘレンは頭を掻いた。

 

「いや……まぁ、仕方がないのは分かってんだけどさ……」

 

「ゴチャゴチャ言ってないで、手を動かして! もう敵は来てんだよ! アタック・チームでも、サポート・チームでも、敵を叩く事に変わりはないんだ。どちらにしても、かなりの数を墜とさないと、私達が生き残れない!」

 

 マヘリアはヘレンのガンイージを横目に、ラングにビームを浴びせる。

 

「しかたねぇ……私が道を作るから、マヘリアとクレナは、しっかり援護を頼むぜ!」

 

「はいはい……最初から素直に言う事聞いてよね……姉さん達は行って下さい!」

 

 ヘレンとマヘリアとクレナのガンイージが、ラングとゾロアットの混成部隊を引き付けていく。

 

「陣形が乱れてきた……援護部隊を信じて、我々はビッグ・キャノンまで一気に行くぞ!」

 

 オリファーが号令をかけ、乱れ始めたベスパのモビルスーツ部隊の中へ突っ込む。

 

 その横を高出力のビームが次々と通り過ぎ、進行方向にいるラングとゾロアットに突き刺っていく。

 

「なんて射撃精度だい……アマネセルがハイコスト機といっても、リースティーアじゃないと、ここまでは出来ないな……」

 

「姉さん……今のうちに、ビーム・バズーカの射程内まで……ビッグ・キャノンに近付きましょう!」

 

 ケイトのガンイージも、ビームを連射しながらラングを蹴散らしている。

 

「よし……オリファー、敵のモビルスーツに囲まれないように注意しながら、ビーム・バズーカの射撃に入る!」

 

「頼む! コッチは、制御艦を墜としに行く!」

 

 墜とす……そうは言ったものの、戦艦を後退させるのが精一杯だろう……

 

 ビッグ・キャノンにしても、ビーム・バズーカでは外装を焼く程度かもしれない。

 

 それでも……

 

 レジスタンスとして活動する者として、そこに殺戮兵器があるのに、何もしないなど有り得ない。

 

 自分達の後に続く者を作らなくてはいけない……ザンスカール帝国のギロチンによる支配を止めるには、レジスタンスだけではなく、もっと大きな組織の協力が必要だ。

 

 そう……地球連邦軍を動かさなくてはいけない。

 

 だからこそ……無謀でも何でも、やるしかなかった。

 

 が……襲いかかって来るモビルスーツを全て撃墜すると、その後に出て来るモビルスーツがいない。

 

「どうなってる? ジュンコ、状況を確認してくれ」

 

「ああ……ヘレン達は、まだ戦闘中だな。だが、私達とビッグ・キャノンの間に敵はいない……これは、好機と見るべきか?」

 

 疑問を持ちながらも、ジュンコはガンイージのバーニアを全開にしてビッグ・キャノンに迫る。

 

 効かないにしても、至近距離からビーム・バズーカを撃った方が可能性があるだろう。

 

 危険かもしれないし、罠かもしれない……それでも、だ。

 

 しかし敵が来ない理由が、ケイトの声で判明する。

 

「姉さん! ビッグ・キャノンとスクイードの間に、戦闘の光が見える! 私達以外に、戦闘を仕掛けている部隊が……いる?」

 

「連邦のバグレ隊か? だとしたら、統率がとれて無さすぎる!」

 

 ケイトとオリファーは、ビッグ・キャノン周辺で行われている戦闘を確認し、首を傾げた。

 

「いや……バグレ隊だとしたら、私達より先にビッグ・キャノンに食い付けている事がおかしい……私達の攻撃に合わせて、背後から襲い掛かった少数精鋭の部隊としか考えられない」

 

「連邦に、それ程の凄腕はいない……か。唯一、可能性がありそうなエルネスティは、まだ地球だしな……だが、好機には違いない!」

 

 ジュンコとオリファーのガンイージはビームライフルを手放すと、背部のジョイントに装備されたビーム・バズーカを手に取り、そして構える。

 

「とりあえず撃ちまくれっ! 少しでも破壊できれば、次の射撃までの時間が稼げる!」

 

 ビーム・バズーカから放たれたビームがビッグ・キャノンに届き、表面を少し焼く。

 

「隊長、姉さん! 1機、コッチに迫って来る! 気をつけて!」

 

「1機で来るって事は、量産機じゃないな……オールレンジ攻撃が出来る奴か……ケイト、オレ達で食い止めるぞっ! ジュンコは、撃ち続けろっ!」

 

 オリファーのガンイージが、ビーム・バズーカを構え……そして、放つ!

 

 そのビームの光は、一瞬闇に消え……そして、光の雨となってオリファー達に降り注いできた……

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。