「予想以上に敵が多い! アマネセルは、援護射撃をしてくれ! 私達は、突っ込むよっ!」
ジュンコは全天周囲モニターで、敵の数を確認しながら声を出した。
「あらあら……確かに、かなりの数が出てるわね……前回より多いかも……」
「だが、やるしかねぇ! あんな大量虐殺ビームをポンポン撃たせてたら、何の為にレジスタンスやってるか分からなくなるぜ」
F96アマネセルの前に出たヘレンのガンイージは、シュラク隊の先頭に踊り出る。
「ヘレン、前に出過ぎるな! 必ず3機で纏まって動けよ! マヘリア、クレナ、ヘレンのフォローを頼む!」
オリファーのガンイージがヘレン機の前に出て、動きを制した。
「私とオリファー、それとケイトでビッグ・キャノンに取り付く! 道を作ってくれ!」
迫って来たラングをビームライフルの射撃の一撃で撃破したジュンコは、コクピットの中で叫ぶ。
「くそっ! なんで私がアタック・チームじゃないんだよ! ムカつくぜっ!」
「すいません……私達では、近距離戦闘に不安があるのでしょう……接近戦と遠距離攻撃のバランスを考えると……」
クレナの申し訳なさそうな声を聞いて、ヘレンは頭を掻いた。
「いや……まぁ、仕方がないのは分かってんだけどさ……」
「ゴチャゴチャ言ってないで、手を動かして! もう敵は来てんだよ! アタック・チームでも、サポート・チームでも、敵を叩く事に変わりはないんだ。どちらにしても、かなりの数を墜とさないと、私達が生き残れない!」
マヘリアはヘレンのガンイージを横目に、ラングにビームを浴びせる。
「しかたねぇ……私が道を作るから、マヘリアとクレナは、しっかり援護を頼むぜ!」
「はいはい……最初から素直に言う事聞いてよね……姉さん達は行って下さい!」
ヘレンとマヘリアとクレナのガンイージが、ラングとゾロアットの混成部隊を引き付けていく。
「陣形が乱れてきた……援護部隊を信じて、我々はビッグ・キャノンまで一気に行くぞ!」
オリファーが号令をかけ、乱れ始めたベスパのモビルスーツ部隊の中へ突っ込む。
その横を高出力のビームが次々と通り過ぎ、進行方向にいるラングとゾロアットに突き刺っていく。
「なんて射撃精度だい……アマネセルがハイコスト機といっても、リースティーアじゃないと、ここまでは出来ないな……」
「姉さん……今のうちに、ビーム・バズーカの射程内まで……ビッグ・キャノンに近付きましょう!」
ケイトのガンイージも、ビームを連射しながらラングを蹴散らしている。
「よし……オリファー、敵のモビルスーツに囲まれないように注意しながら、ビーム・バズーカの射撃に入る!」
「頼む! コッチは、制御艦を墜としに行く!」
墜とす……そうは言ったものの、戦艦を後退させるのが精一杯だろう……
ビッグ・キャノンにしても、ビーム・バズーカでは外装を焼く程度かもしれない。
それでも……
レジスタンスとして活動する者として、そこに殺戮兵器があるのに、何もしないなど有り得ない。
自分達の後に続く者を作らなくてはいけない……ザンスカール帝国のギロチンによる支配を止めるには、レジスタンスだけではなく、もっと大きな組織の協力が必要だ。
そう……地球連邦軍を動かさなくてはいけない。
だからこそ……無謀でも何でも、やるしかなかった。
が……襲いかかって来るモビルスーツを全て撃墜すると、その後に出て来るモビルスーツがいない。
「どうなってる? ジュンコ、状況を確認してくれ」
「ああ……ヘレン達は、まだ戦闘中だな。だが、私達とビッグ・キャノンの間に敵はいない……これは、好機と見るべきか?」
疑問を持ちながらも、ジュンコはガンイージのバーニアを全開にしてビッグ・キャノンに迫る。
効かないにしても、至近距離からビーム・バズーカを撃った方が可能性があるだろう。
危険かもしれないし、罠かもしれない……それでも、だ。
しかし敵が来ない理由が、ケイトの声で判明する。
「姉さん! ビッグ・キャノンとスクイードの間に、戦闘の光が見える! 私達以外に、戦闘を仕掛けている部隊が……いる?」
「連邦のバグレ隊か? だとしたら、統率がとれて無さすぎる!」
ケイトとオリファーは、ビッグ・キャノン周辺で行われている戦闘を確認し、首を傾げた。
「いや……バグレ隊だとしたら、私達より先にビッグ・キャノンに食い付けている事がおかしい……私達の攻撃に合わせて、背後から襲い掛かった少数精鋭の部隊としか考えられない」
「連邦に、それ程の凄腕はいない……か。唯一、可能性がありそうなエルネスティは、まだ地球だしな……だが、好機には違いない!」
ジュンコとオリファーのガンイージはビームライフルを手放すと、背部のジョイントに装備されたビーム・バズーカを手に取り、そして構える。
「とりあえず撃ちまくれっ! 少しでも破壊できれば、次の射撃までの時間が稼げる!」
ビーム・バズーカから放たれたビームがビッグ・キャノンに届き、表面を少し焼く。
「隊長、姉さん! 1機、コッチに迫って来る! 気をつけて!」
「1機で来るって事は、量産機じゃないな……オールレンジ攻撃が出来る奴か……ケイト、オレ達で食い止めるぞっ! ジュンコは、撃ち続けろっ!」
オリファーのガンイージが、ビーム・バズーカを構え……そして、放つ!
そのビームの光は、一瞬闇に消え……そして、光の雨となってオリファー達に降り注いできた……