機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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ダブルバード・ガンダム3

「くそっ! まじで始まってんのかよ……皆は無事なのか……」

 

「ニコル、焦っちゃダメだよ。戦いが継続されてるって事は、まだ無事だよ。大丈夫……大丈夫だから……」

 

 感情を失ったマイは、状況を冷静に分析出来る。

 

 そんなマイの言葉は、今だけはニコルにとって心強かった。

 

「よし……行くぞ! ダブルバード、シャトルから切り離します!」

 

 ニコルが操縦するダブルバード・ガンダムは、モビルアーマー形態でシャトルから離れる。

 

 ガコン……

 

 軽い衝撃の後、ダブルバード・ガンダムのコクピットにペギーの声が届く。

 

 ペギーのガンイージが、ダブルバード・ガンダムを触っている。

 

「ニコル、先行してミリティアン・ヴァヴに纏わり付くモビルスーツを排除しろっ! 私も、直ぐに追いつく!」

 

「了解! でも、ツインテール・システムは初装備なんでしょ? 無理しないで下さいね」

 

 ニコルはそう言うと、ダブルバード・ガンダムのバーニアを全開にして飛び立つ。

 

「ツインテール・システムか……リファリアって奴がいれば、もう実用段階になってたって話だな。ミューラさんが頑張っても、今回のは戦闘宙域まで飛んでくのが精一杯か……我々は、とんでもない男を失ったな……」

 

 ペギーは呟くと、閃光と火球が煌めく戦闘宙域に目線を向ける。

 

「ガンイージ・ツインテール。ペギー・リー、行くよ!」

 

 以前の戦闘で、リースティーアのジェムズガンに与えられたブラスター・パッケージと呼ばれるバックパック……ツインテール・システ厶は、ミューラの手によって開発が再開された。

 

 しかし、リファリアによってジェムズガンに装備されたソレに比べ、信頼性が格段に落ちている。

 

 戦闘には対応出来ない……それでも、目的地までの高速移動ぐらいには使えるだろう……

 

 まだ開発段階のツインテール・システムをペギーのガンイージに装備させたのは、そんな理由からだ。

 

「私は、リファリアさんの足元にも及ばない……でも、やるしかない。ミノフスキー・ドライブ搭載型の量産と、ブラスター・パッケージ……必ず完成させてみせる」

 

 離れていくガンイージのバーニアの光をシャトルの中から見送るミューラは、そう心に誓った……

 

 

「ニコル、ミリティアン・ヴァヴが見えてきた! まだ健在だよ」

 

「よし……頼むぞ、ダブルバード。ミノフスキー・ドライブ・ユニット、展開! サイコミュ・システム起動!」

 

 ダブルバード・ガンダムがモビルスーツ形態に変形し、二つ折りに畳まれているパーツが展開し始める。

 

 ダブルバード・ガンダムに搭載されたミノフスキー・ドライブ・ユニットは、上下に開いたパーツの上が長く、バランスが悪い。

 

 その為、ミノフスキー・ドライブを使用しない時は折り畳まれている。

 

 折り畳まれている時のミノフスキー・ドライブ・ユニットは、エボリューション・ファンネルのチャージをする事が可能だ。

 

 エボリューション・ファンネルは、フィン・ファンネルのシステムを元に開発されている。

 

 小型ながら大容量のジェネレーターを搭載し、メガ粒子のビームを放つだけでなく、Iフィールドを作りだせる……そして真ん中から分離し、ファンネルの外装にビームを纏わせ、ビームサーベルのような攻撃も可能。

 

 また擬似大気を作り出し、外装に粒子を走らせプラズマを発生させる事によるプラズマ・ブースターとしてダブルバード・ガンダムに推進力を与え、高速移動させる事も出来る。

 

 1機での局面打開……そしてミノフスキー・ドライブのデータを取る為に、生き残る事を最優先させたいが為の装備だ。

 

 モビルスーツ形態となったダブルバード・ガンダムは、その全てのシステムを稼動させる。

 

 ニコルの声に呼応するかのように、ダブルバード・ガンダムの背部に与えられたミノフスキー・ドライブ・ユニットが動き出した。

 

 二つ折りになったパーツを覆うように装着された部品が分離し、腰の辺りまで下がってくる。

 

 そして、二つ折りになっていたパーツが開いていく。

 

 展開された翼に火が灯ると、ダブルバード・ガンダムの姿は光の翼を残して消えた……いや、そう見間違える程の加速で、ミリティアン・ヴァヴに迫る。

 

「エボリューション・ファンネル! 応えろ!」

 

 ダブルバード・ガンダムのサイコミュ・システムが、ミリティアン・ヴァヴの格納庫に置いてあるエボリューション・ファンネルに働きかけた。

 

 6本のエボリューション・ファンネルが、ダブルバード・ガンダムのシステムに反応する。

 

 格納庫の扉を内側から破壊すると、ミリティアン・ヴァヴに纏わり付くモビルスーツを一瞬で6機破壊した。

 

「とりあえず、ミリティアン・ヴァヴのブリッジを守る! ファンネル!」

 

 3本のエボリューション・ファンネルが、ミリティアン・ヴァヴのブリッジの周囲にIフィールドを作り出す。

 

 ゾロアットの放ったビームは、Iフィールドに触れて消失した。

 

「よし……次! ミリティアン・ヴァヴに近付くモビルスーツを破壊する!」

 

 エボリューション・ファンネルは分離すると、その身にビームを纏わせて回転する。

 

 そのまま高速で動きだし、ゾロアットの頭を……腕を……足を斬り裂いていく。

 

「それで帰れるだろっ! もう、戦場に出て来るなっ!」

 

「ニコル……あれ、敵の新型じゃない? もうミリティアン・ヴァヴに取り付いちゃってる!」

 

 マイが指差す方を確認すると、ゾロアットとは違うモビルスーツがミリティアン・ヴァヴのブリッジに向かって動いているのが見えた。

 

「くそっ! 死角になってたのか……まだ距離があるから、正確にモニター出来てなかった! けど、エボリューション・ファンネルならっ!」

 

 回転するビームサーベルの様に動くエボリューション・ファンネルは、ブリッジを破壊する為に放たれたインコムのワイヤーを切っていく。

 

 後方から、危険な機体が迫っている……そう感じたティーヴァの判断は早い。

 

 ミリティアン・ヴァヴへの攻撃を諦め、リグ・グリフはダブルバード・ガンダムに牽制攻撃をしながら距離を取る。

 

「あっさり諦めた? 攻撃を継続していれば、エボリューション・ファンネルで墜とせていたのに……」

 

 ニコルは呟くと、ヘルメットを外して汗を拭う。

 

「うーん……なんか、汚いなぁ……」

 

 シャボン玉のように漂う汗の玉を見たマイは、自らのヘルメットを外そうとする手を止める。

 

 ダブルバード・ガンダムは、窮地を脱したミリティアン・ヴァヴへと近付いていた……

 


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