ビッグキャノンへ……
「回避! 直撃は避けてっ!」
「やってます!」
ミリティアン・ヴァヴは、戦場の真っ只中にいた。
艦長席で立ち上がったスフィアは、必死で舵をとるマッシュに指示を送る。
「モビルスーツ隊は戻せないんですか? ビッグキャノンを破壊出来ても、私達が墜とされたら……」
敵の集中砲火を浴びせられる光景が映し出される艦橋のモニターを見て、たまらずにニーナが声を上げた。
「まだレジア達はビッグキャノンに取り付いてないっ! 私達が墜ちるのが先か、ビッグキャノンを墜とすのが先か……とにかく、今は耐えるしかない!」
モビルスーツの護衛の無いミリティアン・ヴァヴの装甲は、確実に焼かれていく。
「とにかく、牽制射撃を撃ち続けろ! 面舵っ!」
「やってますって! くそっ!」
操舵手のマッシュの額からは、大量の汗が滴り落ちる。
それでも、手を休める訳にはいかない。
モビルスーツ隊が帰って来る場所を守らなくてはいけない。
その一心で、マッシュはミリティアン・ヴァヴを操っていた……
「おいおい……ウチらの帰る場所、無くなるって事はないよな?」
「ヘレンさん、よそ見をするな! 大丈夫……とは言えない状況だが、気にしていても仕方ない! 俺達は、俺達のやれる事をやるしかないんだ!」
集中砲火を受けるミリティアン・ヴァヴを見て不安を募らせるヘレンに、レジアは集中する事を促す。
「あらあら……レジアの言う通りね。ウジャウジャ出て来たわ!」
タシロの率いるカイラスギリー艦隊から、次々とゾロアットが出撃してくる。
そして、その先頭に陣取るのは純白のモビルスーツ……マグナ・マーレイであった。
「今回こそ、あの砲台を破壊するんだ! 白いバタフライはオレがやる!」
「よし……全機、オレのガンイージに続け! ビッグキャノンまで、最短距離で駆け抜けるぞっ!」
レジアのトライバード・アサルトがアーシィの操るマグナ・マーレイに向かって方向転換すると、オリファーのガンイージが前に出る。
「ビッグキャノンさえ破壊出来れば、後は逃げるだけだ! ミリティアン・ヴァヴを……私達の帰る場所を守る為にも、とっととビッグキャノンを破壊するよ!」
ジュンコの言葉に合わせるように、シュラク隊のガンイージのバーニアに火が入った。
「オールレンジ攻撃が出来る機体も出ている筈だ! 全員、生きて戻るぞ!」
レジアの叫び声が、開戦の引き金となる。
トライバード・アサルトのヴェズバーから放たれた閃光が、マグナ・マーレイへ向けて伸びていく。
「何が正しいかは、正直分からない……でも、出来るだけ命を奪わずに戦争を終わらせる! マリア様の力なら、それが出来る! それを邪魔するならっ!」
マグナ・マーレイのコクピットで、アーシィもまた叫んでいた……