「やあぁぁぁぁ!」
シャクティは、ヘリコプター型のベスパの試作機に向けてビームを放つ。
「ちっ……このパイロット、なかなかやる! ドッキングして戦うぞっ!」
ベスパのヘリコプター型の試作機は、フワフワ浮遊していた下半身と合体しモビルスーツ形態になる。
「モビルスーツになったの? けど、可変するのはコッチも同じよ!」
ウェーブ・ライダーもゼータガンダム・リファインとなり、ロング・ビームライフルを構えた。
左腕に装備されたプロペラを上にして浮遊するベスパのモビルスーツは、絶好の的である。
「もらったわっ! これでっ!」
ロング・ビームライフルの射程内にベスパの試作モビルスーツを入れ……シャクティはトリガーを引く!
「ビーム兵器など……効かん!」
ゼータガンダム・リファインの放ったビームは、盾の様に構えたプロペラに吸い込まれ……四散した。
「なに? プレッシャーが……消えない?」
「コッチは、地球制圧用の新型だぞ? 旧式のモビルスーツに負けるかよっ!」
2機のベスパのモビルスーツは、ゼータガンダム・リファインを左右から挟むように陸地に下りる。
「アシリアも探さなきゃいけないが……まずは、この邪魔なモビルスーツを片付けるぞ!」
「仕方ない……とっとと終わらせるっ!」
確実に仕留めた筈のプレッシャーが消えない事に、シャクティは焦りを感じた。
「マイっ! 付いて来るなっ! アシリアと一緒に、高台にいろっ!」
「そんな……お父さんもお母さんも、まだ家にいるんだよ? 助けに行かなきゃ!」
助けに行く……そう言うマイの表情からは、焦りのようなモノは感じない。
「マイ……」
「分かってる! 確かに、何も感じない……皆が死んでしまうかもしれないのに……何も感じない……だから言葉にするの! ニコル、私も連れて行って! この子は、私が命に替えても守るからっ!」
ニコルと一緒に崖を駆け降りるマイは、アシリアを抱えている。
褐色の少女……アシリアは、津波よりシャクティの戦いの方が気になるようで、マイの腕の中で高台を見つめ続けていた。
「アシリア、シャクティさんなら大丈夫だっ! あんなモブ顔のモビルスーツに負ける訳ないぜ! なんせ、オレより凄いニュータイプなんだからな!」
ニコルは、シャクティの勝利を確信していた。
いくらモビルスーツの性能差があっても、パイロットの能力でカバー出来る。
それより……ニコル達が高台から降りた頃には、バルセロナの大地に津波が襲い掛かる直前だった。
「津波が来る! 皆、高台に避難してくれっ!」
ビッグ・キャノンから放たれたビームの着弾の音で異変に気付き、家から出ている人が殆どである。
その為、ニコルの声は多くの人に届いた。
しかし……肝心の高台では、モビルスーツ戦が繰り広げられている。
その為、高台に避難をしようとする人は数人であった。
「くそっ……シャクティさん。もっと離れて戦えないのかよ……このままじゃ、助かる人達も助からなくなっちまう……」
そんなニコルの願いも虚しく、更なるヘリコプターのプロペラ音が、絶望を連れて迫っていた……