機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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迫り来る悲劇2

「やあぁぁぁぁ!」

 

 シャクティは、ヘリコプター型のベスパの試作機に向けてビームを放つ。

 

「ちっ……このパイロット、なかなかやる! ドッキングして戦うぞっ!」

 

 ベスパのヘリコプター型の試作機は、フワフワ浮遊していた下半身と合体しモビルスーツ形態になる。

 

「モビルスーツになったの? けど、可変するのはコッチも同じよ!」

 

 ウェーブ・ライダーもゼータガンダム・リファインとなり、ロング・ビームライフルを構えた。

 

 左腕に装備されたプロペラを上にして浮遊するベスパのモビルスーツは、絶好の的である。

 

「もらったわっ! これでっ!」

 

 ロング・ビームライフルの射程内にベスパの試作モビルスーツを入れ……シャクティはトリガーを引く!

 

「ビーム兵器など……効かん!」

 

 ゼータガンダム・リファインの放ったビームは、盾の様に構えたプロペラに吸い込まれ……四散した。

 

「なに? プレッシャーが……消えない?」

 

「コッチは、地球制圧用の新型だぞ? 旧式のモビルスーツに負けるかよっ!」

 

 2機のベスパのモビルスーツは、ゼータガンダム・リファインを左右から挟むように陸地に下りる。

 

「アシリアも探さなきゃいけないが……まずは、この邪魔なモビルスーツを片付けるぞ!」

 

「仕方ない……とっとと終わらせるっ!」

 

 確実に仕留めた筈のプレッシャーが消えない事に、シャクティは焦りを感じた。

 

 

「マイっ! 付いて来るなっ! アシリアと一緒に、高台にいろっ!」

 

「そんな……お父さんもお母さんも、まだ家にいるんだよ? 助けに行かなきゃ!」

 

 助けに行く……そう言うマイの表情からは、焦りのようなモノは感じない。

 

「マイ……」

 

「分かってる! 確かに、何も感じない……皆が死んでしまうかもしれないのに……何も感じない……だから言葉にするの! ニコル、私も連れて行って! この子は、私が命に替えても守るからっ!」

 

 ニコルと一緒に崖を駆け降りるマイは、アシリアを抱えている。

 

 褐色の少女……アシリアは、津波よりシャクティの戦いの方が気になるようで、マイの腕の中で高台を見つめ続けていた。

 

「アシリア、シャクティさんなら大丈夫だっ! あんなモブ顔のモビルスーツに負ける訳ないぜ! なんせ、オレより凄いニュータイプなんだからな!」

 

 ニコルは、シャクティの勝利を確信していた。

 

 いくらモビルスーツの性能差があっても、パイロットの能力でカバー出来る。

 

 それより……ニコル達が高台から降りた頃には、バルセロナの大地に津波が襲い掛かる直前だった。

 

「津波が来る! 皆、高台に避難してくれっ!」

 

 ビッグ・キャノンから放たれたビームの着弾の音で異変に気付き、家から出ている人が殆どである。

 

 その為、ニコルの声は多くの人に届いた。

 

 しかし……肝心の高台では、モビルスーツ戦が繰り広げられている。

 

 その為、高台に避難をしようとする人は数人であった。

 

「くそっ……シャクティさん。もっと離れて戦えないのかよ……このままじゃ、助かる人達も助からなくなっちまう……」

 

 そんなニコルの願いも虚しく、更なるヘリコプターのプロペラ音が、絶望を連れて迫っていた……


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