「あっ………あたった………」
全く標準がつけられない状態で放たれたメガ・ビームライフルは、その閃光の先で爆発が起きた。
「今の…………マヘリアさんや、レジアさんじゃないよね………?」
機体の確認すら出来ない状況に、ニコルの鼓動は早く大きくなり、額には無数の冷や汗が浮かび始める。
(なんで勝手にビームが放たれたんだ?いや、トリガーに手が触れたのが気付かなかったの…………??)
ニコルは自分の心臓の音を聞きながら、何か取り返しのつかない事をしてしまった感覚に陥っていた。
「おいっ!!ガンスナイパーに乗ってるのニコルだな!!こちらレジアだっ!!応答しろっ!!」
突如コクピットに流れる声に、ニコルは一瞬ドキッとしたが、聞き覚えのある声に少し安堵する。
「レジアさん、良かった無事で。マヘリアさんは??」
「私も平気よ。全く、素人がムチャをして…………」
マヘリアの声を聞き、ニコルはホッとした。
先程の会話で、マヘリアが本当に死んでしまうのではないか…………
そう思っていたニコルは自分が間に合った事、自分の放ったビームが敵に当たり少しは役に立った事に安心しタメ息をついた。
「きゃあああぁぁ!!」
その直後、雷が落ちたかのような悲鳴が聞こえる。
「なんだ??どうしたの?マヘリアさん!!」
ニコルは必至にモニターをマヘリア機に合わせようとするが、映像は相変わらず戦闘の光しか映しださない。
ドクン………………
気持ちが高ぶったニコルは、心臓の音を確実に自分の神経で感じた。
頭が一瞬クリアになり、赤い光りに体が包まれる…………ニコルは、そんな感覚に身を委ねながら目を閉じる。
その瞬間、戦場で起きている全ての情報が、ニコルの意識の外で頭に流れ込んできた。
「そこだっ!!」
ニコルは無意識のうちに目を開け、感覚でビームを撃つ!!
だが、今度のビームは確実に敵を捉えた自信があった。
ビームの閃光は、迫って来るラング隊、トライバードとガンイージの間の絶妙な位置を通過し、マヘリア機を襲ったシャイターンのコクピットに直撃する。
そのシャイターンは、重厚な胸部に大きな穴を開け…………操り人形のような動きをした後に断末魔の咆哮をあげるかのように爆発した。
「ニコルっ!!もう撃つな!!そのうち、オレ達にも当たっちまうぞ!!」
先程のビームが自分達の脇を通っていった事に不安を抱き、レジアは大声でニコルに言う。
「そんな事より、マヘリアさんは!!無事ですよね??」
レジアの危機迫った声を聞き流す程、ニコルはマヘリアの悲鳴が気になっていた。
「そんな事よりって…………オレ達は、照準も合わせられないその機体で撃たれるビームの射線上にいるってのに…………心配しているお前に、殺されかねんよ………」
レジアは小声で毒づいた事で、少し冷静さを取り戻す。
「イージは右足をやられただけだ!!宇宙だから問題ない!!それより、ラング3機がそっちいったぞ!!援護は出来ないから、なんとか逃げろ!!」
大声でニコルに指示をだしたレジアは、自分達の状況を客観的に分析し始めた。
自分達は、シャイターン7機に囲まれている。
機動力は、トライバードが圧倒的だ。
しかし、損傷したマヘリア機を守りながら、厚い装甲を持ち多数装備するビーム砲の弾幕を避けて、シャイターンの包囲網を抜けるのは不可能に近い。
トライバードもガンイージも、火力はそれほど強くなく、一撃でシャイターンを沈黙させるのは難しかった。
つまり囲まれたまま戦ったら、生存は絶望的な状況であった………