機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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カイラスギリー防衛戦6

「ベスパの精鋭部隊か………あの機体、レジアは圧倒していたが、ガンイージでは厳しいか??」

 

 インコムを持つ機体………リグ・グリフを見ながら、オリファーが唇を噛む。

 

「機体性能が、なんだってのさっ!!パイロットの質は、コチラが上だ。オリファー隊長、連携して墜とすぞっ!!」

 

 オリファー機に隣に自らのガンイージを寄せたジュンコは、リグ・グリフに狙いを定める。

 

「よし………敵の新型は、俺とジュンコで対応する!!みんなは、天道虫を頼む」

 

「新型にビームは危険だ!!インコムに吸い取られて、拡散して反撃される。実弾と接近戦でやるっ!!」

 

 オリファーとジュンコは口々に叫ぶと、リグ・グリフに向かってバーニアを噴かせた。

 

 リグ・グリフのインコムは、ファンネルやビットより動きを読みやすいが、それでもモビルスーツから離れた所から撃たれるビームを回避するのは難しい。

 

 更にリグ・グリフのインコムは、ビームを吸収し拡散して反撃が可能だ。

 

「ジュンコ、モビルスーツ本体にビームは有効の筈だっ!!マルチランチャーは2発しかない。使い時を間違えるなよっ!!」

 

 オリファーのガンイージはインコムから放たれるビームを躱しながら、リグ・グリフを照準に入れる。

 

「新型は隊長と姉さんに任せて、私達は天道虫をやるっ!!」

 

「いつまでも、モビルスーツ相手に手間取ってる訳にはいかねーぞ!!とっとと片付けて、馬鹿でかい砲台をぶっ壊さなきゃなんねーからなっ!!」

 

 マヘリアとヘレンのガンイージを先頭に、シュラク隊の面々はゾロアットの迎撃に向かう。

 

 イエロージャケットのモビルスーツ隊は、精鋭部隊という事もあり手強い。

 

 シュラク隊のガンイージであっても、易々と墜とす事は出来ないでいる。

 

 そうしている間に、リグ・グリフとゾロアットの距離は少しずつ離れ始め、シュラク隊も切り離されていく。

 

 数で劣るリガ・ミリティアのシュラク隊は、数で勝るベスパのモビルスーツに取り囲まれていた。

 

 リグ・グリフと戦っていたオリファー達も、次々に出て来るゾロアットの部隊も相手をしなければいけない状況に追い込まれている。

 

「くそっ!!物量の差が………1機に時間をかけていたら、直ぐに取り囲まれる!!」

 

 リグ・グリフに足止めされている時間が長ければ長い程、その分ゾロアットに囲まれていく。

 

 F96アマネセルからの援護射撃が無く、迷いなくゾロアットは攻撃を仕掛けて来る。

 

「ちっ………オリファー、このままじゃ全滅する。1機でもこの囲みを突破して、ビッグキャノンに一撃を加えなければ………」

 

「分かってる!!ジュンコ、オレが突破口を開く!!混戦を抜けて、一撃をくれてやれっ!!」

 

 オリファーのガンイージがゾロアットをビームライフルの一撃で破壊すると、ビームサーベルに持ち替えてリグ・グリフに迫る。

 

 ジュンコ機の腰のハードポイントには、メガ・ビームバズーカを装備させていた。

 

 メガ・ビームバズーカの高出力ビームを何発か当てれれば、ビッグキャノンを破壊出来なくとも、その機能を停止させる事が出来るかもしれない。

 

 そうすれば、この戦場で散っても意味は残る………

 

「うおおおおぉぉぉ!!」

 

 叫びながらリグ・グリフに突っ込むオリファー機は、接近戦を挑む為に動きが直線的になっていた。

 

 そこに、インコムからのビームが迫る!!

 

 オリファーは気付いていたが、それでも回避はしない。

 

 リグ・グリフに取り付いて爆発してやる………そうすれば、ジュンコ機が混戦を抜けれるぐらいの隙は作れるだろう………

 

 覚悟の特攻をしたオリファーだったが、ガンイージにビームが届く事は無かった。

 

 オリファー機とインコムの間にビームが走り、ガンイージに迫っていたビームを掻き消したのだ。

 

「オリファーさん、動きが単純過ぎる!!アマネセルのNT-Dが発動してしまって、機能不全に陥った。援護射撃が期待出来ない以上、撤退するしかない!!」

 

 リグ・グリフとガンイージの戦いに割って入ったのは、レジアのトライバード・アサルトである。

 

 瞬時にゾロアットを2機破壊すると、インコムのワイヤーを切り払う。

 

「そいつの相手はオレがやる!!オリファーさんは、シュラク隊を纏めて撤退の準備をっ!!」

 

「しかし………今ビッグキャノンを叩かなければ、地球にビームが降り注ぐ事になるぞ!!」

 

 オリファーはレジアの言葉を理解しながらも、前に出ようとしていた。

 

「隊長なら、状況を考えろ!!数発のビームを当てたところで、ビッグキャノンは止めれない。ここでオレ達が全滅したら、誰がアレを止めるんだ??まずは体勢を立て直すんだ!!」

 

 インコムから放たれるビームを躱しながら、トライバード・アサルトはリグ・グリフに迫る。

 

「くそっ………ジュンコ、この戦闘から撤退する!!連携してゾロアット隊を叩き、血路を開くぞっ!!」

 

「仕方ないね………この借りは、直ぐに返しに来るからねっ!!」

 

 ジュンコは叫ぶと、メガ・ビームバズーカのビームをカイラスギリーに向けて放つ!!

 

 ビッグキャノンの砲身にビームは当たったが、距離もあり大したダメージでない事は明らかだった。

 

「損傷している機体もある!!余計な事をしないで、撤退するんだ。殿(しんがり)はオレがやる!!」

 

 ビームサーベル同士の鍔競り合いでリグ・グリフを弾き飛ばしたトライバード・アサルトは、後退していくガンイージ隊の後方に入る。

 

 激しい追撃があると予想していたレジアだったが、ゾロアットが次々と戦闘宙域から離れていく事に違和感を感じた。

 

 そして、気付く………

 

「全機、ビッグキャノンのビームの射線から離れろ!!撃ってくるぞっ!!」

 

 レジアの声に反応して、ガンイージ隊も全開でバーニアを噴かせる。

 

 そして、その時は訪れた。

 

 まるでスローモーションのようにビッグキャノンの砲身にビームが集束していき、そして放たれる。

 

 1本の太い閃光はシュラク隊の脇を通り抜けて、地球へと伸びて行く………

 

 言葉にならない思いを抱えるコクピットの中で、クレナの身体は震える。

 

「こんな………どうして………」

 

 細くなっていくビームの先を見つめ、その瞳から涙が溢れていた………

 


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