「きゃああああっ」
リフレクター・ビットによって反射された光の槍によって、マグナ・マーレイは貫かれた………ように見えた。
確かに、数本のビームはマグナ・マーレイに直撃したが、運良くコクピットへの直撃は無い。
いや………運が良い訳ではない………マグナ・マーレイのコクピットを守るように、数機のゾロアットが光の槍に貫かれていた。
「そ………んな………あなた達………私を庇うなんて………」
乱れて映るモニターにゾロアットの残骸を確認し、アーシィは両手をコンソールに叩きつける。
「あら………バタフライは、まだ生きている??コッチは、稼動時間に制限がある。止めを刺させてもらうわっ!!」
メガ・ビームライフルから普通のビームライフルに持ち替えたF96アマネセルは、ビームを正確にリフレクター・ビットに当てていく。
反射するビームが次々に動けないマグナ・マーレイを襲うが、尽く援護に入ったゾロアットが、その身にビームを受けた。
「あらあら………いくらニュータイプが貴重な存在だからって、ここまでやるの??」
ゾロアットが10数機墜ちたところで、F96アマネセルから赤い光が失われる。
そしてサイコフレームの膨張現象が収束し、F96アマネセルは白いモビルスーツへと戻っていく。
ベスパのモビルスーツ部隊はF96アマネセルを墜とす絶好のチャンスであるが、その余力は無い。
マグナ・マーレイは動く事すらままならない程の損傷を受けており、カネーシャ・タイプのゾロアット部隊も半数以上を失っていた。
「大尉、大丈夫でありますか??」
そこへ、メッチェのゾロアットが援護に駆け付け、ボロボロになったマグナ・マーレイに取り付く。
「准尉か………カイラスギリーの防衛はどうなっている??リガ・ミリティアのモビルスーツ隊の侵入を許してしまっているが………」
「そっちは、リグ・グリフとイエロージャケットの部隊が対応してくれています。大尉は、一度帰艦しますよ!!ここに留まっていても、死ぬだけです!!」
そう言うと、メッチェのゾロアットはマグナ・マーレイを抱える。
「イエロージャケット………地球降下用の精鋭部隊を投入しているのか………しかし、それでは作戦が遅くなってしまう………」
天使の輪計画を進めるには、地球の制圧は必要不可欠だ。
その作戦の要であるイエロージャケットを投入してしまうとは………アーシィは悔しさで唇を噛み締めた。
「援護射撃が止まった??リースティーアに何かあったの??」
ビッグキャノンの懐近くまで入り込んだところでF96アマネセルからの援護射撃がパッタリ止まって、シュラク隊も徐々にゾロアットに取り囲まれ始めている。
マヘリアはF96アマネセルがいるであろう場所をモニターで確認するが、その姿は見えない。
「まったく、偉そうなコト言っててコレだ………新型を貰ってんだ、しっかりやってくれよ………」
「ヘレン、無駄口を叩くな!!みんな必死に戦っているんだ………無傷でここまで来れた事に、意味はある」
ジュンコの操るガンイージはビームライフルを構えると、ゾロアットにビームを放つ!!
的確にコクピットを射抜いた一撃で、ゾロアットは動きを止める。
「やるぅ~、さすが姉さん。私も、負けてらんないわっ!!」
ケイトのガンイージも、正確な射撃でゾロアットを翻弄していく。
「とにかく、陣形を乱すなよ!!援護が無くても、やる事は1つ。馬鹿デカイ砲台から、ビームを撃てなくすれば勝ちだ!!」
「分かってます!!もう少しで届く………地球まで届くビームなんて、絶対に撃たせないっ!!」
オリファーの言葉に、クレナが答える。
物量の多さはウンザリする程だが、それでも充分に戦えている………その事が、次々に襲いかかってくるゾロアット相手でも気持ちが折れずにいれる理由だった。
しかし………ついに、ゾロアットのビームがガンイージを捉える。
クレナ機の右足が、ビームの直撃を受けたのだ。
「ちっ!!」
撃たれた右足が爆発する前に、その足をビームサーベルで切り落としたジュンコのガンイージが蹴り飛ばした。
蹴られて吹き飛んだガンイージの右足は、直ぐに爆発する。
「ジュンコさん、ありがとうございます」
「クレナは隊の後方まで下がれ!!ビームの精度が高い………厄介な奴が来るよっ!!」
シュラク隊とカイラスギリーの間………最後の砦と言わんばかりに、リグ・グリフと数機のゾロアットが立ち塞がっていた………