「あらあら………また勝手に??調整はしてくれた筈なのに………」
F96アマネセルの機体が赤く光り、サイコフレームが膨張し始める。
「なんだ、アレは………サイコフレーム………なのか??まるで、機体の全てがサイコフレームのようだ………」
マグナ・マーレイにもサイコフレームは搭載されているが、その比ではない。
アーシィが驚くのも無理はなかった。
そして、その機体の加速や機動性を見て、更に驚く事になる。
強化人間でもあるカネーシャ・タイプの搭乗するゾロアット10機程度が、一瞬で破壊されたのだ。
「くそっ!!量で対応出来る程、甘い機体じゃない!!カネーシャ・タイプ、トライバードの対応をしてくれ!!そいつは、私がやる!!」
「行かせるかっ!!アマネセルには、長距離射撃でシュラク隊の援護をしてもらわなきゃいけないんだっ!!」
ゾロアットの爆風に体勢を乱されたトライバード・アサルトだったが、直ぐに立て直すと背を向けたマグナ・マーレイにヴェズバーを放つ。
しかし………そこにもゾロアットの盾が………マグナ・マーレイを庇うように、ヴェズバーの射線上に飛び込んで来る。
「くっ………なんなんだ、このゾロアットのパイロット達は!!命が惜しくないのかっ!!」
カネーシャ・タイプの操るゾロアット部隊の特攻に、レジアは躊躇してしまう。
その結果、マグナ・マーレイに切り離されてしまった。
「あらあら………レジアも人間ね………こっちは時間制限アリのデストロイモードが勝手に発動しちゃって、結構大変なのよね………」
リースティーアが敵と判断した機体をF96アマネセルは次々と撃ち墜としていくが、デストロイモードはパイロットへの負荷を考慮して5分程度しか起動が持続しないようになっている。
モビルスーツが小型化され負荷が軽減されてるとはいえ、その加速Gは殺人的なのに変わりはない。
「このままじゃ、シュラク隊を守れない………デストロイモードが発動してしまっている状態では、リースティーアも厳しいな………オレがシュラク隊の援護に回るしかない」
デストロイモードの起動時間を超えて戦っては、サイコミュの逆流によってリースティーア自身がNT-Dに脳を支配されてしまう。
そうなれば、敵意を感じた者を全滅するまで止まらない殺戮マシーンになる。
それだけは、避けなければならない。
「あらあら………レジアがシュラク隊の援護に行ってくれた??作戦がメチャクチャになっちゃったわね………」
そう言いながら、リースティーアは迫って来るマグナ・マーレイを捉える。
そしてアーシィもまた、F96アマネセルのみを視界に捉えていた。
クローンだろうが強化人間だろうが、意思と心を持っていれば人間と一緒だ。
それを物のように使い捨てにする作戦に憤りを感じ、その作戦の中心に自分がいる事が許せない。
「私がカネーシャ・タイプを守る!!その為に、墜とさせてもらうぞっ!!」
リフレクター・ビットを展開し、F96アマネセルに迫るマグナ・マーレイ。
「あらあら………残念だけど、それじゃ駄目だわ………」
リースティーアの意思に関係なく、リフレクター・ビットがF96アマネセルの支配下に置かれる。
「なっ………ビットがコントロール出来ない??システムの不具合か??」
サイコミュ・ジャック………
ユニコーン・ガンダムが搭載していたNT-Dでは、パイロットがNT-Dに支配された状態でしか使えなかったが、F96に搭載されたソレは、通常発動時でも使用可能となっていた。
ベスパの技術者達は、レジスタンスの資金力では搭載出来ないだろうと踏んでいた力………
マグナ・マーレイの力が、F96アマネセルの力になった。
「あらあら………私達を苦しめたバタフライの最後ね………みんなの敵(かたき)、とらせてもらうわっ!!」
フォルブリエやリファリア………サナリィでマグナ・マーレイと戦って散った戦友をリースティーアは思い出す。
その脳波に、F96アマネセルは反応する。
マグナ・マーレイを取り囲むように浮かぶリフレクター・ビット目掛けて、メガ・ビームライフルを放つ!!
その先には、いつ投げたのだろうか………ビームサーベルが回りながら漂っている。
そのビームサーベルの刃に、メガ・ビームライフルから放たれた閃光が擦れあい、拡散した。
かつてのニュータイプ達が使った技を、NT-Dが使う。
そのビームの力は、絶妙だった。
リフレクター・ビットは高出力ビームを受けて融解するが、反射はする。
ビームサーベルを利用して拡散させたビームは少しだけ威力を落としたが、その閃光の槍はマグナ・マーレイのIフィールドを突き破った………