「あらあら、レジアのトライバードを簡単に突破出来ると思ってるのかしら??そこに留まっていたら、的になるだけよ」
リースティーアの正確な射撃は、確実にゾロアットを捉えていく。
「くそっ!!リフレクター・ビットでっ!!」
アーシィはリフレクター・ビットを展開させて、トライバード・アサルトに挑む。
トライバード・アサルトは、F96アマネセルに近付こうとするゾロアットに牽制をかけながらマグナ・マーレイの相手もしている。
それでも、高機動で動き回るトライバード・アサルトを封じる事が出来ない。
リフレクター・ビットを使った拡散ビームは、密集している場所で使えば味方に当たる危険性があるうえに、Iフィールドを持つトライバード・アサルトには効果的ではなかった。
そして、トライバード・アサルトの持つヴェズバーの一撃は、リフレクター・ビットを貫いてくる可能性がある。
サナリィでの最初の戦闘ではトライバードを圧倒したマグナ・マーレイも、今やその優位性は失われていた。
「大尉、タシロ中佐からの伝言をお伝えします。カネーシャ・タイプの搭乗しているゾロアットを囮に使え。後続のカネーシャ・タイプは、F90もどきに直接ぶつける………との事です」
「タシロ中佐の命令??でも、それでは………」
苦戦するマグナ・マーレイの援護にあたっていたゾロアットからの『お肌の触れ合い回線』でカネーシャ・タイプからの報告を受けたアーシィは、悔しさを滲ませる。
カネーシャ・タイプの命を犠牲にしても、リガ・ミリティアのモビルスーツを止めろという事………自分の力不足をアーシィは強く感じた。
そして、それをカネーシャ・タイプ本人の口から言わせてしまった事が心にのしかかる。
「リガ・ミリティアのモビルスーツ隊は手強いが、無駄に命を散らす必要は無い!!カネーシャ・タイプは、引き続き私の援護を頼む!!」
しかしアーシィの言葉を嘲笑うように、スクイード1から新たに出撃したゾロアット隊は、一直線にF96アマネセルに向かっていく。
「あらあら………まさかの特攻………確かに効果的ではあるけど、人の命を無視した作戦ね」
F96アマネセルのビームは特攻してきたゾロアット隊に向けられた為、アーシィ率いる本体への攻撃が緩くなる。
「くそっ、特攻までさせるのかっ!!貴様らは、人の命を何だと思っているんだっ!!」
F96アマネセルからの援護が少なくなった事でトライバード・アサルトへの負担は多くなったが、それでもヴェズバーを使った牽制により、シュラク隊はゾロアットに囲まれる事もなくカイラスギリーに向かって前進出来ていた。
「このまま進ませるのはマズイ!!私が何とかしなければっ!!」
アーシィはマグナ・マーレイのリフレクター・ビットをトライバード・アサルトに直接当てようとするが、レジアには通用しない。
逆にヴェズバーにより、リフレクター・ビットの数が確実に減らされていく。
「このままでは………やはり、直接叩くしかない!!」
アーシィは覚悟を決めて、ビームサーベルをマグナ・マーレイに持たせると、拡散ビームをリフレクター・ビットで角度を変えて、牽制しながらトライバード・アサルトに迫る。
接近戦が苦手なマグナ・マーレイで、高機動のトライバード・アサルトに挑まなければならない………
それでもカネーシャ・タイプの被害を最小限に抑えて、リガ・ミリティアのモビルスーツ隊を引かせるには、トライバード・アサルトを墜とすしかないとアーシィは思った。
「局面の戦闘は押しているが、絶対的に物量が不足しているんだ。長期戦になれば、こちらが不利………決着を急いでくれるなら、こちらの思惑通りだ!!」
レジアもトライバード・アサルトにビームサーベルを持たせて、迫りくるマグナ・マーレイの迎撃準備に入る。
マグナ・マーレイの放つ拡散ビームは、Iフィールドで機体表面で消失するので気にならない。
しかし、そのビームの射線上にゾロアットが現れた。
「馬鹿な………死ぬぞ!!」
レジアの叫びも虚しく、拡散されたマグナ・マーレイのビームに直撃されて、トライバード・アサルトの目の前で爆発する。
突然目の前で爆発が起こり、体勢の崩れたトライバード・アサルトにマグナ・マーレイが迫った。
そしてF96アマネセルも、次々と襲い来るゾロアットに接近を許している。
そんな中F96アマネセルのNT-Dが、リースティーアの操作を無視して発動し始めていた………