機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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F96アマネセル2

「あらあら………オリファー機が突っ込んで来る??F96アマネセルには、NT-Dが搭載されてるって分かってる筈なのにねぇ………」

 

 本来、NT-Dはニュータイプや強化人間の発する感応波を感じる事で自動に発動する。

 

 逆に言えば、ニュータイプか強化人間が相手でないと、NT-Dは発動しない。

 

 しかしF96アマネセルのNT-Dには、リースティーアの感応波にも反応するように調整がなされており、デストロイモードへ任意に移行できるようにプログラムされている。

 

 リースティーア以外のパイロットが搭乗した場合は、相手がニュータイプか強化人間でなければ、F96の通常モードでしか戦えない。

 

 もはやリースティーア専用機と言っても過言ではない程に改修されたリファリアのF90は、もはや新型機のようなものだ。

 

「あらあら………ここまでユニコーン・ガンダムに寄せる事は無かった気がするケド………シールド・ファンネルを使ってみる」

 

 F96アマネセルには、3機のシールド・ファンネルが装備されている。

 

 それぞれにIフィールド発生装置が付いており、更にビーム・ガトリングでオールレンジ攻撃が可能だ。

 

 NT-Dを使用したF96アマネセルは、その機体名に偽り無く、まるで朝焼けのように赤く輝く。

 

「NT-D………早速使ってきたかっ!!ジュンコ、リースティーアの力量を見たいなら手を抜くなよ!!」

 

「当然!!ここで私達に倒されるなら、NT-D………アマネセルは任せられない!!それに、私達の命を預ける訳にはいかなくなるからね!!」

 

 F96アマネセルに迫っていくガンイージ隊の動きは、決して遅くない。

 

 むしろ、どの戦場で戦っても恥ずかしくない程の動きを見せる。

 

「あらあら………流石、死線をくぐり抜けたパイロット達だね。でも、ハイコスト機は伊達じゃないわよ。それに、ガンスナイパーより扱い易いしね」

 

 そのガンイージ隊に、リースティーアの脳波を読み取りながら動くシールド・ファンネルが迫っていく。

 

「って、オリファー隊長!!ヘレン機を引き連れて、トライバードがコッチに向かって来てる!!このままじゃ後ろとられるよ!!」

 

「私とマヘリアさんで迎え打ちます!!皆さんは、アマネセルに集中して下さい!!」

 

 マヘリアとクレナの通信を聞いて一瞬後方を確認したオリファーが、F96アマネセルに向けて全開にしていたガンイージのバーニア出力を弱める。

 

「いや、このままトライバードを吸収して混戦に持ち込むぞ!!不慣れな機体で、混戦状態の味方機に当てないように射撃は出来んだろ??この状態で、うまくトライバードを墜とせれば………」 

 

 オリファーの思惑通り、F96アマネセルの援護に来たトライバードをガンイージ隊は囲い込む。

 

「あらあら………レジア、こちらの思惑通りね………」

 

「ああ………リースティーアさん、後は頼む。その力を見せつけてやれっ!!」

 

 F96アマネセルは、抱えていたメガ・ビームライフルを構える。

 

 そして………射撃方向から射線を読まれないように小刻みに移動しながら、メガ・ビームライフルでビームを放つ!! 

 

 まるでビームが生きているかのように………動き回るトライバードには掠りもせず、ガンイージのみにビームの雨が降り注ぐ。

 

「嘘でしょ??トライバードもいるのに、ガンイージだけにビームを当てるなんて………」

 

 模擬戦用のビームの為モニターにはビームが映るが、実際にはビームは撃たれていない。

 

 その事は頭で理解しているマヘリアだったが、そのビームの正確さに冷や汗が零れた。

 

 更に、マヘリアの見つめるモニターには、撃墜されてマーカーを失うガンイージが出始めた事を告げてくる。

 

「マヘリアさんっ!!このままじゃ、中と外から狙い撃ちされる………とにかく、トライバードから距離をとらないと………」

 

 クレナの悲痛な叫びを聞いても、マヘリアはトライバードとアマネセルの攻撃から逃れられない。

 

 トライバードの近接攻撃を受ければ、F96アマネセルから放たれるビームの餌食になる。

 

 混戦を逃れようと動いても、シールド・ファンネルによって混戦の中に連れ戻された。

 

「うわぁぁぁ!!」 

 

 F96アマネセルのビームを躱した直後のオリファーのガンイージが、トライバードの放ったビームに貫かれる。

 

「くそっ、相手はたったの2機だぞ!!ガンイージは、リガ・ミリティアのエース達に支給された機体だってのにっ!!」

 

 ビームの雨を躱しながら、トライバードとシールド・ファンネルの攻撃を意識しなければならない。

 

 ジュンコは額から流れる汗を拭う事すら出来ず、2機とファンネルの攻撃を避け続ける。

 

 そう………いつしかガンイージ隊は、反撃よりも攻撃を避ける時間が長くなっていた。

 

 そして、気付けばジュンコとクレナとマヘリアのガンイージが背中合わせになっている。

 

「他の機体は………やられてる………くそっ、なんてこったい!!」

 

 その3機の目の前に、F96アマネセルがデストロイモードを解除して迫って来た。

 

「あらあら、ジュンコさん。私の力が見たいのでしょ??」

 

「ちっ、デストロイを使わなくても勝てるって事かいっ!!」

 

 頭に血が上ったジュンコは、ビームを放ちながらF96アマネセルに飛び込む!!

 

「あら、レジアは手を出さなくていいわ………」

 

 F96アマネセルの援護に動こうとしたトライバードをリースティーアは制して、ジュンコのガンイージにビームを集中させる。

 

「コッチは3機いるんだ!!一気に押し込むぞ!!」

 

 ジュンコのガンイージの動きに合わせて、マヘリアとクレナのガンイージも援護射撃を行いながらF96アマネセルに迫る。

 

 F96アマネセルは、そのビームをビームシールドで受けながら射撃を続けるが、ジュンコ機の接近を許してしまう。

 

 リースティーアは、格闘戦が苦手過ぎた。

 

 一度食いつかれてしまうと、反撃する余裕がない。

 

 その為、マヘリア機とクレナ機の接近も許し、ビームサーベルを振りかざしてF96アマネセルに接近戦を仕掛けてくる。

 

「?????」

 

 ビームサーベルでガンイージの攻撃をすれすれで躱したF96アマネセルのコクピットが、赤い光に包まれた。

 

 強制的にデストロイモードに移行したF96アマネセルは、高速でガンイージから距離をとる。

 

 そして、ガンイージの背後からシールド・ファンネルによるビーム・ガトリングの連射が始まった。

 

「なっ………速い!!」

 

「きゃああああ!!」  

 

 マヘリアとクレナの悲鳴を聞いた瞬間、2機のガンイージが撃墜表示に変わる。

 

 ジュンコ機と1対1になると、デストロイモードが強制解除された。

 

「あらあら………今のは一体………何だったのかしら??」

 

「油断させて攻撃か………まぁ、油断したコッチが悪いって事かっ!!」

 

 ジュンコは多少の憤りを感じながら、F96アマネセルに再び飛び込む。

 

「あらあら………まぁ、勘違いするわよねぇ………仕方ないわね」 

 

 バーニアとアポジモーター………ユニバーサル・ブースターポットの最終形態とも言えるブースターは、高速での3次元の動きを可能とする。

 

 デストロイモードでなくても、それは変わらない。

 

 どこから撃ってくるか分からない射撃は、ジュンコに複数のモビルスーツと戦っている感覚を与える程だった。

 

「デストロイを使わなくても、コレかい!!イージ1機じゃ限界か………」

 

 正面から撃たれたと思ったら横………そして背後からと、ピンポイトの射撃が飛んでくる。

 

 ジュンコ機は、成す術なく撃墜された………


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