「良かった………2人とも無事なのね!!何日も連絡無いから、大気圏で燃え尽きたと思ったじゃない!!」
「すまない、ニーナさん。地球には降りれたケド、直ぐに通信したら色々とヤバイだろ??なんたって、不法侵入者なんだから」
ニコルの言葉を聞いて、直ぐに連絡出来ない事を理解したニーナだったが、それでも顔は険しいままだ。
「確かに皆すごく心配していたから、ニーナの怒りは分かるけど…………ニコル達も大変だったんだ…………大目に見てやりなよ。ニコル、コッチも戦死者を出さずに切り抜けたわよ」
艦長のスフィアが管制官であるニーナの頭を撫でながら、ニコルに先日の戦闘の報告をする。
「それに、戦力の補充もあったしな………ニコル、マイを助けてくれてサンキューな。これで、お前達が戻ってくればパーフェクトだ」
レジアの声が通信器から聞こえてきたが、マイは特に反応しない。
「ああ…………まぁ、宇宙に出る方法があればね…………それと、マイの様子も少しおかしいんだ。レジアの声を聞いても反応ないし…………」
「ごめんなさい…………私にも分からないんだけど、感情が欠落している感じがして…………多分、ベスパの戦艦の中で変な装置にかけられた時に無くなったと思うんだけど…………」
ニコルの話を補足するように、マイはスクイード1で起きた一部始終を話す。
辛い経験だった為、話すと思い出してしまう…………それが少し辛かった。
「感情を失わせる装置か…………そんな装置を開発して、ベスパが何を企んでるか知らんが…………あの時、オレの判断の鈍さが…………プロシュエールを倒す覚悟が足りなかった為に、マイに辛い思いをさせてしまったな…………」
レジアは、唇を噛み締める。
「そんな訳だからさ…………とりあえず、地球で少し療養していくよ。今はカーシーにいて、精神的な修行とかも出来そうなんだ。それに、地球にはオレとマイの故郷もあるし…………」
「少し休むのも良いかもしれないわね…………もし私達と合流出来そうなら、カリーン基地に行きなさい。そこで宇宙に行く手筈を整えるわ」
スフィアは2人とも休養が必要だと考えたが、それでもニコルは貴重な戦力である。
その為、宇宙に上がる方法は伝えておきたかったし、カリーン基地なら行きやすいと考えた。
カリーン基地…………ニコルとマイが、地球に住んでいた時に就職した場所である。
「分かった。故郷にも近いし、そっちに戻れそうなら基地に行ってみるよ」
ニコルはそう言うと、通信を終えた。
「ニコル…………やっぱり私おかしいね。レジアの声を久しぶりに聞いたのに…………やっぱり何も感じない。自分が自分じゃないみたい…………恐怖はこんなに感じるのに…………」
小刻みに震えるマイの肩を、ニコルはそっと抱きしめる。
「やっぱり、戦場に出なければよかったな………オレが調子のってモビルスーツなんかに乗らなければ…………」
「ニコルのせいじゃないよ…………でも、また戦場に戻らなきゃいけないって考えると…………怖い…………」
マイの言葉に、ニコルは頷く。
自分が死ぬのも怖い…………でも、大切な人達が傷ついていく姿を見るのも、分かり合えた人達と戦うのも辛い…………
そして、その怖くて辛い事をして、自分達に何が残るのか…………
ニコルは、分からなくなっていた。
「ニコル、マイ…………明日から、私と一緒に修行してみる??私も、戦う理由を見失っていた事があるの。アシリア様を地球に連れて来て、自分の身体もボロボロになって…………私は何をしているのだろうって…………でも、私にはアシリア様を守る事が戦う理由になった。何の為に戦うか…………それを見極めなければ、戦場に戻ってはいけないわ」
シャクティは、2人に優しく声をかける。
そして、ニコルはニュータイプ能力の向上、マイは無くしてしまった感情を取り戻す為に、カーシーでの修行が始まった…………