機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

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マイ救出作戦7

「おい、グリフォン・タイプ、しっかりしろっ!!今、ハッチを開けるからな!!」

 

 スクイード1に帰艦したメッチェは、コクピット・ハッチを開けると直ぐにリグ・グリフのコクピット・ブロックに飛んだ。

 

 損傷したリグ・グリフのコクピット・ブロックに手をかけたメッチェは、思わず大きな声を出していた。

 

 助けに行って、逆に助けられた…………

 

 クローンだから、代わりはいると言って…………

 

 もしグリフォン・タイプが機械的で、感情も無く会話もしないモノであれば、メッチェは何も感じ無かっただろう。

 

 しかし、グリフォン・タイプは会話もし、自らの意志でメッチェを助けた。

 

 そして、爆発に巻き込まれるから離れろとも…………

 

「やはり、君に代わりはいないっ!!早くコイツを開けてくれっ!!」

 

 メッチェは作業しているメカニックに、声を張り上げる。

 

「准尉、何を叫んでいる。グリフォン・タイプの回収、ご苦労だったな。敵に捕獲されるぐらいなら、爆発させて粉微塵にしてしまっても…………と思ったが、持ち帰ってくれておげで、戦闘データが抽出できる」

 

「中佐……………ありがとうございます。お言葉ですが、グリフォン・タイプは意思を持って…………心を持って動いていたように感じました。クローンであっても、人と同じように扱うべきかと……………」

 

 敬礼しながら答えるメッチェに、タシロは怪訝そうに視線を向けた。

 

「准尉、頭でも打ったのか??クローンはクローンでしかない。アーシィ大尉の身体を守る為……………大尉に何かあった時は、大尉の力を残す為に開発しているに過ぎない。所詮は作られたモノだ」

 

 タシロはそう言うと、リグ・グリフのコクピット・ブロックに目を向ける。

 

「中佐、准尉、開きました。しかし、中のクローンは残念ながら…………」

 

 タシロとメッチェは、コクピットから出されたグリフォン・タイプに近付いた。

 

 コクピット・ブロックの周囲を切り裂いた時か、爆発の時か分からないが……………グリフォン・タイプの身体は無数の傷が作られており、中には致命傷に至ったと思われる深い傷もある。

 

「くっ……………グリフォン・タイプ……………すまない…………」

 

「いや、准尉はよくやってくれた。頭部は無事のようだしな…………研究チームは、直ぐにグリフォン・タイプのデータの抽出を急げ!!せっかく准尉が持ち帰ってくれたんだ。無駄にするなよ!!」

 

 メッチェは、思わずタシロを睨みそうになる…………しかし、上官にする態度では無い為、思わず瞳を閉じた。

 

 

「ニコル、コッチに来い!!無事に出会えたみたいだな」

 

「マデアさん??この戦艦デカ過ぎだろ…………迷っちまったぜ!!」

 

 スクイード1の通路でマデアに声を掛けられたニコルは、不安だった気持ちが安堵に変わったが、それを気付かれたくなくて少し軽口を叩く。

 

「ニコル、こちらの方は??」

 

「マデアさんって言って、マイの救出に力を貸してくれた人さ。ザンスカールには2つの軍隊があって、その2つがやり合ってて………で、まぁそんな感じだ!!」

 

 ニコルの説明にマイは首を傾げ、マデアは呆れた顔をした。

 

「どんな感じなんだよ…………マイさん、だったな。オレはマリア・カウンターと呼ばれる、ベスパとは違う組織の軍人だ。ザンスカールの軍人ではあるが、ベスパの不正を正そうとしている部隊だと思ってくれればいい」

 

「マイ・シーナです。助けて頂いて、ありがとうございました。でも、マデアさんとニコルは、どこで知り合ったんですか??」

 

 マデアはニコルと出会った経緯を、簡略化しながらマイに話す。

 

「分かりました。ザンスカールにも、色々な人がいるんですね…………マリア主義を唱える人がギロチンとか不思議に思ってましたけど、色々な考えの人がいるんですね…………」

 

「ザンスカール帝国といっても、一枚岩じゃない。大きな組織になる程、その考えや思想は枝分かれしていく。その中で、女王の考えや思想を守る為の組織がマリア・カウンターなんだ。で、ニコル。情報はとれたか??」

 

 ニコルは頷くと、メモリーチップをポケットから取り出す。

 

「これでいいのか分かんねぇけど…………実験室みたい所の映像と、マイが受けた実験の証言が入れてある。あと、人の死体が放置されている部屋があって…………その死体は、どうやらサイキッカーって人達みたいなんだ」

 

 マイはニコルの話を引き継ぐと、証明するように口を開く。

 

「私が変な機械で実験を受けている時、サイキッカーの犠牲がどうのって声が聞こえていたんです。その時の記憶が曖昧なんですが…………」

 

「マイさん、嫌な事を思い出させてしまって、申し訳ないな………だが、これで奴らの動きを抑制出来る筈だ。この情報は無駄にしない」

 

 マデアが感謝の言葉を述べた直後、通路の先から話し声が聞こえて来た。

 

「女王、ブリッジにいなくては危険です!!まだ戦闘は続いているんですよ!!」

 

「分かっています。でも、この戦艦を指揮する筈のタシロ中佐はどこに行ったのです??」

 

 女王マリアと、ピピニーデンが言い争いをしている声である。

 

「マリア…………いいタイミングだ。ニコル、女王がベスパの士官を逃走経路の逆方向に誘導してくれている。マイさんを連れて、ゼータで逃げろ!!ベスパのモビルスーツに追われる事になるかもしれんが、もしもの時は地球に降りろ!!」

 

 マデアはそう言うと、女王とピピニーデンの声がする方に向かって行く。

 

「地球って…………」

 

 ニコルは無意識に窓に目を向けると、綺麗な蒼が飛び込んで来た。

 

 スクイード1は、地球に背を向けて戦闘しているようである。

 

「綺麗…………でも、地球って大気圏で覆われているんでしょ??大丈夫なのかな??」

 

「分かんねぇケド…………地球ってのは、第2選択だっ!!まずはレジア達に…………皆と合流出来るのが1番だっ!!」

 

 ニコルは、マイの手を引きながら走り始めた。


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