「拡散したっ!!だが、その戦い方には慣れた!!」
拡散ビームは広範囲に効果があるが、威力は犠牲になっている。
レジアはマグナ・マーレイの放つ拡散ビーム…………そして、それを反射してオールレンジで襲ってくるビームと戦ってきた。
その経験が、レジアの身体を無意識に反応させる。
レジアの操るトライバード・アサルトは、Iフィールドを展開させながらもビームを回避し、リグ・グリフに迫った。
「新型…………悪いが、墜とさせてもらうぞ!!」
リグ・グリフの喉元にビームサーベルから放たれる粒子が迫った時、思いもよらない方向からビームが飛んで来る。
「なんだ??」
Iフィールドで受けてしまえば、そのままビームサーベルの一突きでリグ・グリフを墜とせていたかもしれない。
しかし突然の攻撃で、反射的にレジアは回避する事を選んでしまった。
その結果、トライバード・アサルトとリグ・グリフとの間に、ビームを打ってきたモビルスーツに割り込まれてしまう。
「グリフォン・タイプ!!無事か??」
突如現れたモビルスーツ……………ゾロアットでトライバード・アサルトに奇襲を仕掛けたのはメッチェだった。
「准尉、私の事は構わずに、他の機体の迎撃に行って下さい」
「何を言う!!このままでは、君は墜とされる!!それに、ガンダム・タイプを倒せれば、戦局は一気に変わる!!」
メッチェのゾロアットはビームライフルからビームを放ち、トライバード・アサルトに向けてバーニアを全開にする。
「天道虫1機か……………援軍にしては、少し弱いな!!」
ゾロアットが放つビームをトライバード・アサルトはビームシールドで簡単に受けると、次々と放たれるビームをヒラリと躱していく。
「くっ…………速いっ!!マデア少佐は、こんな奴に勝ったのか…………」
ゾロアットはアポジモーターを駆使して姿勢制御をしながら、ビーム・ストリングスを放った。
「それも見ている!!いいパイロットのようだが…………マイを助ける為だ!!墜とさせてもらうぞっ!!」
ビーム・ストリングスをビームサーベルで薙ぎ払うと、トライバード・アサルトはゾロアットに迫る。
「准尉、離れて下さい!!」
リグ・グリフは、インコムをトライバード・アサルトに目掛けて放出した。
しかし、インコムの攻撃ではトライバード・アサルトの前進を止める事は不可能である。
「くそっ、グリフォン・タイプは後退しろ!!私が時間を稼ぐ!!」
ビームサーベルを持って前に出るゾロアットを援護するように、リグ・グリフからビームが放たれた。
インコムの攻撃を避ける事に集中していたレジアは、その不意の攻撃に反応が遅れる。
「貰った!!ガンダム・タイプに勝てる!!」
そのビームの動きに合わせて、ゾロアットがビームサーベルを振った。
が……………リグ・グリフの放ったビームはトライバード・アサルトの装甲表面で弾かれ、何事も無かったようにビームサーベルを躱れる。
「くおおぉぉぉっ!!」
コクピットに強烈な衝撃が走り、メッチェは叫んだ。
Iフィールドでビームを弾いたトライバード・アサルトにショルダータックルを受けて、ゾロアットは後方へ吹き飛ばされる。
硬直したゾロアットに、トライバード・アサルトが放ったビームが吸い込まれていく。
「ぐわあぁぁぁ!!」
今度は機体後方からの衝撃に、メッチェは悲鳴を上げる。
リグ・グリフがゾロアットを押し退け、ビームに機体を晒したのだ。
コクピット付近の装甲にビームが直撃し、リグ・グリフの動きが止まる。
「なんで俺を庇った!!」
爆発しそうなリグ・グリフに近づいたメッチェのゾロアットは、その機に体に触れた。
「准尉こそ…………どうして私を助けに来たのですか??私はクローン…………代わりはいくらでもいるのに…………」
「代わりがいる…………だと??クローンだろうが人格を持てば、それは人と変わりない!!君は君だろ!!」
ゾロアットのセンサーから、警告音が鳴る。
メッチェは反射的に、リグ・グリフを掴んだままバーニアを全開で吹かす。
「躱された…………手負いを抱え込んだままで!!」
トライバード・アサルトが放った止めの一撃…………動きの止まった2機を確実に仕留める為に放ったヴェズバーは、ゾロアットによって躱された。
「くっ…………コッチにもモビルスーツを展開してきたか…………潮時だな…………新型を墜とせただけ、良しとするか」
トライバード・アサルトのモニターには、ベスパのモビルスーツ隊が迫って来る事を告げる光点が灯る。
「助かった…………のか??いや、このままではリグ・グリフが爆発してしまう!!グリフォン・タイプがっ…………おい、脱出しろ!!」
「コクピット・ハッチは歪んでいるみたいだし、リグ・グリフには脱出装置は付いていません。私に構わずに、准尉は行って下さい。直ぐに爆発します…………」
メッチェは感情的に叫ぶが、リグ・グリフのコクピットからは冷静で感情の無い言葉が返ってくる。
「メッチェ准尉、リグ・グリフを破壊してから帰艦しろとの命令だ。そいつをリガ・ミリティアに渡す訳にはいかん」
ようやく戦場に追い付いたベスパのモビルスーツから、メッチェ機に通信が入った。
「なんだとっ!!そんな事が出来るかっ!!まだグリフォン・タイプは生きているんだぞっ!!」
メッチェはコクピット・ブロックに沿うようにビームサーベルを刺し込むと、そのままコクピットだけを斬り抜く。
コクピットを取り出した瞬間、ゾロアットはリグ・グリフを蹴り飛ばした。
ガアアァァァァァァン!!
そして、その衝撃でリグ・グリフは爆発する。
抜き取られたコクピットは、その爆発の余波で横に縦に振られた。
「おい、グリフォン・タイプ、生きてるか??」
そのメッチェの問いに、コクピットから返事は無かった…………