「やっぱり、来たかー。ハイランドを守ってから、スクイード1に向かう!!」
ニコルは、ウェーブライダー形態のZガンダム・リファインに乗り込む。
「君も、ハイランドを守ってくれるのか??」
「この状況じゃ、仕方ないでしょ!!一宿一飯の恩もあるし、マデアさんみたいには出来ないと思うけど、やってみるよ」
心配で見に来たマサリクの言葉に応えたニコルは、Zガンダム・リファインを起動する。
アメリアでもそうだったが、ハイランドでも人の温かさを感じた。
戦争中でありながら、それでも人の優しさを感じれる事が、ニコルは嬉しく感じる。
ハイランドでは、スクイード1に潜入するタイミングを合わせる為に3日程滞在した。
その間、ハイランドの子供達とも仲良くなり、離れる事に寂しさも感じる。
「こういう中立の場所を占領しに来るって…………ザンスカール帝国って、どうなってんだよ」
ニコルは悪態をつきながら、ウェーブライダーを発進させた。
ザンスカール帝国からハイランドを占領する為に出たモビルスーツは、ラング数機に混じって1機のゾロアットがいる。
その索敵範囲に入る前にハイランドを出たニコルは、ラング隊の側面までウェーブライダーを進ませた。
「こっから横っ腹に攻撃すりゃ、ハイランドから出たって分からないでしょ??食らえっ!!」
ニコルはウェーブライダーを急旋回させると、ラングに向かって突っ込んでいく。
「なっ……………戦闘機??また、いつも邪魔する機体かっ!!」
何度もZガンダム・リファインに邪魔されていたザンスカール帝国の部隊は、しっかりと戦闘の準備もしてきていた。
ラングはビームライフルを構え、ウェーブライダーに向かって発砲してくる。
「今まで乗ってきた機体より、反応が遅い…………接近したから、モビルスーツで対応する!!」
ラング隊に接近した瞬間に、ニコルはZガンダム・リファインをモビルスーツ形態に変形させると、もっとも近くにいたラングにビームサーベルを一閃!!
ラングの頭から腕を切断する。
「それで帰れるでしょ!!次っ!!」
絶妙なバーニアとアポジモーター操作で姿勢制御しながら、Zガンダム・リファインを取り囲もうとするラングにビームを撃つ!!
そのビームの1つ1つが、ラングのビームシールドを掻い潜り、頭や腕や足に当たっていく。
「ちっ!!何だ、あの白い奴は??相手はたったの1機だ!!落ち着いて攻撃しろ!!」
ゾロアットのパイロット、クロノクル・アシャーは、少し焦った声を出す。
クロノクル・アシャーは、ベスパのパイロットであるが、女王マリアの実の弟である。
ザンスカール帝国内で、マリア・カウンターとベスパの対立が強まっていく中で、微妙な立場になっていた。
その為、何としても目に見える功績を上げて、軍内部で認めてもらいたいという気持ちが強い。
「ビームシールドすら装備してない機体に、こうも好きにやられるのか??しかも、コクピットを狙わないとは…………ラング隊、私の機体に動きを合わせろ!!個別に攻撃していては、ピンポイント射撃の的になる!!」
クロノクルの指示に、ラングの動きも組織立ったものに変わっていく。
「ラングの動きが変わった??指示を出している奴がいるのか??あの、天道虫か!!」
ラング隊の前に出たゾロアットを視界に入れたニコルは、クロノクル機に向けてビームを放つ。
「白いモビルスーツ!!ガンダム・タイプとでも言いたいのか…………だが、何でもかんでも、ガンダムにすれば強くなるってもんじゃない!!」
ゾロアットはバインダーからビームシールドを展開し、バーニアを全開にしてZガンダム・リファインに迫った。
「加速性能が全然違う!!こんな機体じゃ、直ぐにやられちまう!!せめて、ウォーバードがあれば…………」
ニコルは自分の言葉を飲み込み、迫ってくるゾロアットと、その後ろのラング隊に意識を集中する。
「いや…………この機体で、マデアさんはハイランドを守り続けてたんだ…………人を殺さないで戦いを終わらせるには、力を身に付けるしかない。ラングと…………その他1機ぐらいっ!!」
ニコルの言葉に、Zガンダム・リファインに組み込まれたバイオセンサーが反応した。
ニコルの操縦をサポートするように、サイコミュが起動する。
「うおおぉぉぉぉぉ!!」
ニコルは叫び……………そしてZガンダム・リファインは、ビームサーベルをゾロアットと自機の間に投げた。
「なんだ??奇妙な動きを…………」
クロノクルは回転しながら漂うビームサーベルの脇を擦り抜け、ラング隊もそれに続こうとする。
その回転するビームサーベルに、Zガンダム・リファインから放たれたビームが当たり………………ビームサーベルに干渉したビームが、まるで花火のように拡散された。
「なんだ……………とっ!!」
そのビームは、ラングと…………そして、クロノクルのゾロアットを強襲する。
マデアの事を考えたニコルが、無意識にマグナ・マーレイの武器である拡散ビームを思い出し、そのアイデアをバイオセンサーがフォローした。
ニコルの意思を宿したビームは、全てコクピットには当たらず、戦闘不能に陥らせる。
しかしクロノクルだけは拡散ビームに反応し、その攻撃を回避した。
「くそっ!!白い奴…………」
クロノクルは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
拡散ビームの影響が消える前にウェーブライダーに変形したZガンダム・リファインは、戦線を離脱していた。
クロノクルはその後を追いたかったが、ラングの中には損傷が酷く、自力で戻れない機体もある。
クロノクルは、ウェーブライダーのバーニアの光を映し出すモニターを叩く。
これが、クロノクルとガンダム・タイプの初顔合わせであった…………