機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

100 / 237
マリアの弟

 

「やっぱり、来たかー。ハイランドを守ってから、スクイード1に向かう!!」

 

 ニコルは、ウェーブライダー形態のZガンダム・リファインに乗り込む。

 

「君も、ハイランドを守ってくれるのか??」

 

「この状況じゃ、仕方ないでしょ!!一宿一飯の恩もあるし、マデアさんみたいには出来ないと思うけど、やってみるよ」

 

 心配で見に来たマサリクの言葉に応えたニコルは、Zガンダム・リファインを起動する。

 

 アメリアでもそうだったが、ハイランドでも人の温かさを感じた。

 

 戦争中でありながら、それでも人の優しさを感じれる事が、ニコルは嬉しく感じる。

 

 ハイランドでは、スクイード1に潜入するタイミングを合わせる為に3日程滞在した。

 

 その間、ハイランドの子供達とも仲良くなり、離れる事に寂しさも感じる。

 

「こういう中立の場所を占領しに来るって…………ザンスカール帝国って、どうなってんだよ」

 

 ニコルは悪態をつきながら、ウェーブライダーを発進させた。

 

 ザンスカール帝国からハイランドを占領する為に出たモビルスーツは、ラング数機に混じって1機のゾロアットがいる。

 

 その索敵範囲に入る前にハイランドを出たニコルは、ラング隊の側面までウェーブライダーを進ませた。

 

「こっから横っ腹に攻撃すりゃ、ハイランドから出たって分からないでしょ??食らえっ!!」

 

 ニコルはウェーブライダーを急旋回させると、ラングに向かって突っ込んでいく。

 

「なっ……………戦闘機??また、いつも邪魔する機体かっ!!」

 

 何度もZガンダム・リファインに邪魔されていたザンスカール帝国の部隊は、しっかりと戦闘の準備もしてきていた。

 

 ラングはビームライフルを構え、ウェーブライダーに向かって発砲してくる。

 

「今まで乗ってきた機体より、反応が遅い…………接近したから、モビルスーツで対応する!!」

 

 ラング隊に接近した瞬間に、ニコルはZガンダム・リファインをモビルスーツ形態に変形させると、もっとも近くにいたラングにビームサーベルを一閃!!

 

 ラングの頭から腕を切断する。

 

「それで帰れるでしょ!!次っ!!」

 

 絶妙なバーニアとアポジモーター操作で姿勢制御しながら、Zガンダム・リファインを取り囲もうとするラングにビームを撃つ!!

 

 そのビームの1つ1つが、ラングのビームシールドを掻い潜り、頭や腕や足に当たっていく。

 

「ちっ!!何だ、あの白い奴は??相手はたったの1機だ!!落ち着いて攻撃しろ!!」

 

 ゾロアットのパイロット、クロノクル・アシャーは、少し焦った声を出す。

 

 クロノクル・アシャーは、ベスパのパイロットであるが、女王マリアの実の弟である。

 

 ザンスカール帝国内で、マリア・カウンターとベスパの対立が強まっていく中で、微妙な立場になっていた。

 

 その為、何としても目に見える功績を上げて、軍内部で認めてもらいたいという気持ちが強い。

 

「ビームシールドすら装備してない機体に、こうも好きにやられるのか??しかも、コクピットを狙わないとは…………ラング隊、私の機体に動きを合わせろ!!個別に攻撃していては、ピンポイント射撃の的になる!!」

 

 クロノクルの指示に、ラングの動きも組織立ったものに変わっていく。

 

「ラングの動きが変わった??指示を出している奴がいるのか??あの、天道虫か!!」

 

 ラング隊の前に出たゾロアットを視界に入れたニコルは、クロノクル機に向けてビームを放つ。

 

「白いモビルスーツ!!ガンダム・タイプとでも言いたいのか…………だが、何でもかんでも、ガンダムにすれば強くなるってもんじゃない!!」

 

 ゾロアットはバインダーからビームシールドを展開し、バーニアを全開にしてZガンダム・リファインに迫った。

 

「加速性能が全然違う!!こんな機体じゃ、直ぐにやられちまう!!せめて、ウォーバードがあれば…………」

 

 ニコルは自分の言葉を飲み込み、迫ってくるゾロアットと、その後ろのラング隊に意識を集中する。

 

「いや…………この機体で、マデアさんはハイランドを守り続けてたんだ…………人を殺さないで戦いを終わらせるには、力を身に付けるしかない。ラングと…………その他1機ぐらいっ!!」

 

 ニコルの言葉に、Zガンダム・リファインに組み込まれたバイオセンサーが反応した。

 

 ニコルの操縦をサポートするように、サイコミュが起動する。

 

「うおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 ニコルは叫び……………そしてZガンダム・リファインは、ビームサーベルをゾロアットと自機の間に投げた。

 

「なんだ??奇妙な動きを…………」

 

 クロノクルは回転しながら漂うビームサーベルの脇を擦り抜け、ラング隊もそれに続こうとする。

 

 その回転するビームサーベルに、Zガンダム・リファインから放たれたビームが当たり………………ビームサーベルに干渉したビームが、まるで花火のように拡散された。

 

「なんだ……………とっ!!」

 

 そのビームは、ラングと…………そして、クロノクルのゾロアットを強襲する。

 

 マデアの事を考えたニコルが、無意識にマグナ・マーレイの武器である拡散ビームを思い出し、そのアイデアをバイオセンサーがフォローした。

 

 ニコルの意思を宿したビームは、全てコクピットには当たらず、戦闘不能に陥らせる。

 

 しかしクロノクルだけは拡散ビームに反応し、その攻撃を回避した。

 

「くそっ!!白い奴…………」

 

 クロノクルは、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

 拡散ビームの影響が消える前にウェーブライダーに変形したZガンダム・リファインは、戦線を離脱していた。

 

 クロノクルはその後を追いたかったが、ラングの中には損傷が酷く、自力で戻れない機体もある。

 

 クロノクルは、ウェーブライダーのバーニアの光を映し出すモニターを叩く。

 

 これが、クロノクルとガンダム・タイプの初顔合わせであった…………


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。