機動戦士ガンダム ダブルバード   作:くろぷり

1 / 237
プロローグ
序章 ウッソの記憶


古い木製の椅子に座った男は「リガ・ミリティアの軌跡」と表紙に書かれた雑誌のような書物を、これまた年季の入った木製の机に広げて読み始めた。

 

その男………【ウッソ・エヴィン】は、その書物を読みながら、自分の心に引っ掛かる物のヒントを探そうと考えていた。

 

V【ヴィクトリー】ガンダムで戦っていた頃、バルセロナの漁村で出会った漁師の爺さん………確か、ロブ爺さんと言ったか……そのロブ爺さんに息子のニコルと間違われた事。

 

パッと見で似ていて、見間違いと分かれば、それは日常でもありえる。

 

しかしロブ爺さんは、ウッソの事をニコルと呼び続けた。

 

当時少年だったウッソは、ロブ爺さんが老人で少しボケ(認知症)ているのかと思い深くは考えていなかった。

 

何故だろうか……大人になるにつれて、心の引っ掛かりが大きくなっている。

 

日常生活をしっかり営んでいる人が、死に別れた自分の息子と間違えるだろうか………

 

書物を読むにつれ、色々な疑問が脳裏を過ぎっていく。

 

(そういえば、シャクティが何故地球に来たか……それも分からず仕舞いだったな……)

 

ウッソは当時を思い出し、辛い記憶だが、懐かしさを感じていた。

 

シュラク隊のメンバーに可愛がってもらった事、女王マリアとの出会い、V2を初めて操縦した時の感覚、エンジェル・ハイロゥでの激戦………

 

(マヘリアさんやオデロさんには、弟のように可愛がってもらったな………)

 

ウッソは書物を閉じると、少し軋む椅子の背もたれ体を預けて瞳を閉じた。

 

あの時……クロノクルからシャッコーを奪う半年ぐらい前に見た夢……

 

夢なのか現実か分からない……男からバトンを渡される夢……

 

「あれは、現実………じゃないよな………でも………」

 

光の差し込む窓の外に見えるV2ガンダムを見て、ウッソはV2を始めて操縦した時の感触……誰かに後押しされているかのような感覚を思い出していた。

 

「V2………お前は知っているのかな……僕達に希望と光を残してくれた人達の事を……お前を造る為に、母さんに力を貸してくれた人達の事を………」

 

ウッソは呟くと、軋む椅子から立ち上がり、部屋を後にした。

 

ウッソは、朧げながらに気付いていた。

 

2つの翼が1つになった瞬間を……

 

そして、希望の翼を残す為に闘った人達がいた事を………

 

そして、時代はウッソの戦っていた頃の3年前に巻き戻る。

 

宇宙世紀0150年………

 

まだ、V計画の雛型のモビルスーツがようやく完成しようとしていた時代の話である。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。