さて、大河が鍛練場を走り回ってる間に次の準備をしとくか。
「純一さん……それってグローブですか?」
「ああ。服屋の親父さんに概要を伝えたら作ってくれてな。しかもオープンフィンガータイプだ」
そう。俺が準備しといたのは組手用のグローブだ。服屋の親父さんにある程度を話したら作ってくれた。因みに本来は軍手でも作って貰おうかと思って頼んだんだけど、その場で思い付いてグローブも頼んどいたのだ。そしたら此方の予想を遥かに上回る物が出来上がった訳だが。
因みに軍手は街の大工に人気の商品となっている。
「コレが有れば組手も少しはマシになるかと思ってな。ま、これからは俺も同時進行で修行をしていくさ」
「純一さんらしいですね」
因みにサイズは大人サイズが二つと子供サイズが二つ。ある意味、組手をするのに最適な数が揃っていた。
俺はグローブを付けると数発のジャブを放つ。うん、良い出来だわ。
「よし……ならば」
俺は息を吸って身体中の気をコントロールする。身体中に張り巡らせた気は俺の身体の身体能力を上げてくれる。
「よし。この状態をキープしつつ組手だな」
俺が考えた自身の修行は先ずは基礎体力と体作り。そして気のコントロールだ。
気を高めた状態で大河と組手や基礎トレーニングを行えば良い修行になる筈。基礎トレーニングは兎も角、気に関しては以前、顔不さんに聞いたものを取り入れているから効果は有る筈。
そして大河の修行目的は更なる体力作りだ。大河の武器は素早さと自由奔放な戦い方だが、それは体力が尽きたら打つ手無しとなってしまう。ならば重りを付け体力作りと無駄の無い動きを叩き込むのが主な目的となる。
「師匠!走り込み終わったッス!」
「お疲れさん。大河、これを手に付けな」
走り込みを終えた大河に俺はグローブを渡す。そしてグローブの意味を簡単に説明した後に少しの休憩を挟んで組手開始だ。
「はっ!」
「せやっ!」
いざ組手を開始したのだが、やはり体が重い。全身に着けた重りがキツいわ。
重りを付けたから大河のスピードも半減されて動きが見える様にはなったが重りを付けてるのは俺も同様だから動きが鈍くなる。だからこそ、この重りに慣れ、修行を終えた頃には俺も大河も強くなってる筈。
「よし、大河!隙あらば俺を倒す位の覚悟で来い!」
「はい、師匠!」
「がふっ!?」
俺の言葉を聞いた大河は俺の脳天に華麗な踵落とし(重りによる威力増)を放ち、それに対処できなかった俺は一撃の下に倒れた。
「ふっ……お前に教える事はもう何もない」
「し、師匠ー!?」
地に伏した俺を大河が揺さぶる。マジで俺が指導する意味無くね?